『ウェア屋さんのひとりごと』

冷えたタイヤにはご用心!

掲載日:2012年01月05日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

5月19日から連載を始めて以来、どうにかこうにか今週で30回目を迎えることとなりました。よくまあ今までクビにならず、こうして続けさせていただけたものです。これも我慢強く読んでいただいた皆さんのおかげだと思います。さて、冬装備に関しては前回までで一通りお話しさせていただきましたので、今回は冬場のライディングで大切な “タイヤのウォーミングアップ” について少し脱線? してみましょうか。

サーキットでコースインを待つレーシングマシンのタイヤに、何やらカバーの様なモノが巻かれているのをご存じでしょうか? これはタイヤウォーマーと言い、内蔵されているヒーターによってタイヤの性能を発揮しやすい温度に高めておき、コースイン時から高いレベルで走行できる様にしているのです。また、レーシングタイヤは非常に高いグリップ力を発揮する反面、一定の温度に達していないと本来の性能を発揮することが出来ず、逆に危険であることから現在では必要不可欠なアイテムとなっています。一般道を走行される皆さんが使用されている、いわゆるスポーツタイプやツーリングタイプと呼ばれているタイヤでは、そこまで神経質になる必要はありませんが、路面の温度が極端に下がる冬場では多少なりともウォーミングアップを行い、ある程度のグリップ力が発揮出来る状態で走行しないと危険な目に遭ったり、最悪は家を出てから最初の交差点で転倒といった事になりかねません。

それではこのウォーミングアップは、いったいどの様に行えば良いのでしょう? 4輪のレースでは、スタート直前のウォームアップ走行で、左右に蛇行している様子をご覧になられた方も多いと思います。では2輪も…と思ったら、それはあまり有効な方法とは言えません。4輪の場合はハンドルを切った反対側(アウト側)のタイヤに荷重が掛かり、接地面が潰されることで、タイヤ全体が揉まれながら温度が上昇していきますが、2輪だと直線で軽く蛇行する程度では十分な荷重が掛からず、何かの拍子に転倒するリスクこそあれ(実際にそんな人を見たことはありませんが)ウォーミングアップとしてあまり効果的ではありませんね。

安全で効果的な方法としてはまず、「タイヤが冷えているから丁寧に」という認識を持ち、普通に乗り始めます。一般道なので信号等で減速、加速を行いますがその際、減速時は少し前寄りに荷重を掛けつつ長め(緩め)にブレーキを掛けながら停止。加速時は後輪への荷重を意識しながら普通に加速、といったことを何度か繰り返すことで前後のタイヤが揉まれ、ある程度の温度(人肌前後)まで上昇します。まあ、普通に走るだけなので、ガチガチに暖める必要はありませんよね。

ただ、タイヤが温まったからと言って油断は禁物。外気温が低ければ路面温度も低く、時には凍結と言う事態も考えられます。用心し過ぎて緊張するのもダメですが、気温が10℃台前半ぐらいまでに下がったら、グリップの低下を少し意識しながら丁寧な操作を意識することで、冬場もライディングを安全に楽しんでいただけるものと思います。

それではみなさん、今年もよろしくお願いします!

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