
掲載日:2014年12月08日 タメになるショートコラム集 › バイク乗りの勘所
Text/Nobuya YOSHIMURA
今回は、前4回の“レースが教えてくれたこと”の番外編みたいなものである。レースメカを辞めたあと約10年間、レースを取材する側に回った私が、プレスルームのモニターやコースサイドで世界GPのトップライダーの走りを見、ときには彼らの話を聞いて、レーシングマシンを自在に操るために、どういう乗り方をしているのかを、元メカニックの視点でまとめたものだ。タイトルの“リアクション”は“リアクッション”ではない。お間違えなきよう。
トップライダーの中でも、とくに1990~92年の3年連続で500ccのワールドチャンピオンを獲得したウェイン・レイニーの走りやコメントの影響が大きい。特に印象的だったのは、ムダのなさとスムーズさだ。当時のビデオなどを見ると、暴れ回るマシンを力づくで抑えているシーンもある。しかしそれは、マシンが意に反する動きをしたときだけで、そうでない場合は、むしろ力を抜き、最小限のアクションでマシンをコントロールしていることがわかる。
なぜそんなことができるのか。それは、自分の操作によって生じるマシンの反応(リアクション)を、次の操作にうまく利用しているからである。例えば切り返し。右旋回から左旋回に移るとき、縮んでいた前後ショックは、いったん伸びてから縮む。その伸縮のリズムに合わせて体重移動をすればムダなくスムーズに切り返せるのに対し、ショックの動きを無視して切り返そうとすると、大きな力が要るだけでなく、マシンの挙動を不安定にしてしまう。
コーナー入り口もまた然り。ただやみくもに体重移動をしているのではなく、直前に他の操作をし、そのリアクションによってマシンが旋回を開始しやすい状態を作っている。駆動力を有→無または強→弱、あるいは制動力を有→無または強→弱方向に変化させ、前輪のセルフアライニングトルクが弱まる一瞬を狙って旋回に入っている。派手なアクションに目を奪われず、細かな操作を観察すれば、実に理にかなったライディングだということがわかる。
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