『バイク乗りの勘所』

レースが教えてくれたこと(その2)

掲載日:2014年10月20日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

前回から続く“レースが教えてくれたこと”というのは、私自身がメカニックとしてロードレースの現場にいて、まわりの先輩や同僚に教えてもらったことや、成功や失敗を重ねながら自ら学んだことの中で、今なお、趣味のバイクいじりだけでなく日常生活においても役立っている一種の処世術のようなもの…と考えていただければわかりやすい。限られた時間の中で“レースに勝つ”という成果を得るための、仕事の進め方に関する話がメインである。

レースの年間カレンダーは、遅くともシーズン開幕前に発表され、エントリーが受理されると間もなく、個々のラウンドのタイムスケジュールが通知される。タイムスケジュールが届いた時点で、サーキットへの往復や現地での宿泊といった旅程を決め、出発前にすべきマシンの整備は出発前に完了させる。“行ってからやろう”は、ダメである。冷却水とガソリンを入れ、タイヤの空気圧調整をすればすぐに走れる状態でサーキット入りするのが原則だ。

“行ってからやろう”がダメなのは、現地でするよりも本拠地(ガレージ)でするほうが効率的であり、より短い時間で、より確実な作業ができるからだ。加えて、現地では、思ったより作業スペースが狭い、汚い、暗いなどといった不測の事態が待ち受けているかもしれず、急なタイムスケジュール変更などもあるかもしれない。移動中にトランスポーターが故障して、サーキットに着いたら走行開始直前…という可能性も、わずかとはいえ、なくはない。

フリー走行~予選~ウォームアップ走行~決勝…という走行セッション間の整備も、すべて、できる限り前倒しが原則だ。午前の走行と午後の走行の間に、整備に使える時間が4時間あったとして、その半分の2時間を超えそうな作業は計画せず、前半の2時間で終えるつもりで作業を進める。何らかの原因でトラブルがあったとき、2倍の時間があれば、同じことをもう一度やり直せるからだ。最悪の事態を想定し、それを念頭に作業するのが成功への鍵だ。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索