『バイク乗りの勘所』

隙間の話

掲載日:2013年10月07日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

穴に軸を通すためには、軸のまわりに隙間が必要だ。抽象的な話ではわかりにくいので、ボルトまわりに限定すると、ボルト穴の内径はボルトの外径より大きくなければならない。もっとわかりやすい話をすると、ナンバープレートに開いたボルト穴。あれの穴径は7mm近くあり、通すボルトの外径は6mm。要するにゴソゴソまたはガタガタなのだ。それでも問題にならないのは、ボルトを締めつけることでナンバープレートが固定され、動かなくなるからだ。

さらに言うと、締まっていないボルトには、横方向(軸のまわりの隙間)だけでなく、縦方向にもガタがある。オネジとメネジの山(斜面)の間の隙間のせいだ。これは、例えば、ワイヤー式クラッチのレバー位置を調整するとき、アジャスターで適正位置にしたあとでロックナットを締めつけると、少々ワイヤーが張り気味(レバーの遊びが減り気味)になることからもわかる。ロックナットの締めつけによって、アジャスターが引き出されるのが原因である。

こうした隙間を小さくするのが高精度化だと思っている人がいるが、それは間違いだ。高精度化というのは、仕上がり寸法を設計値に近づけることで、隙間を小さく設計するのが高精度化ではない。それに、どんなに小さくしても、ゼロにはできない。だから、大きさはともかく、穴と軸の間に必ず存在する隙間を、どう扱うかが整備上のテクニックのひとつといえる。穴の中心と軸の中心を一致させ、隙間を全周均等にするのがいいとは限らないので要注意だ。

しかも、上に書いたナンバープレートのように、ボルトの締めつけによって固定され、動かなくなる…というのが、すべてのパーツに当てはまるわけではない。ボルトが締まっていても、大きな外力を受けてズレることがある。フロントフォークの “ねじれ” やドリブンスプロケットの偏心、フレーム上のエンジン搭載位置のズレなどもその一例。こうしたズレや “ねじれ” が起きた場合は、ただボルトを緩め、正しく締め直すだけでも、大幅に改善する例が多い。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索