『バイク乗りの勘所』

クラッチを切るのは最小限に

掲載日:2013年04月15日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

信号待ちの間は、ギアをローに入れ、クラッチを切り、左足は地面に着き、右足はリアブレーキを踏む。自動車教習所や公安委員会試験場(技能試験)では、それが正しいとされている。これには一理ある。前後ブレーキをかけた状態で確実にマシンを止めつつ、必要とあればすぐに発進できるからだ。一方で、街中で見かけるほとんどのライダーは、ギアをニュートラルにし、クラッチは放し(つなぎ)、左足はステップにかけ、右足を地面に着けている。これにも一理ある。

みんながそうしているのは、クラッチレバーを握り続けなくていいから左手が楽…というのが最大の理由かもしれない。しかし、これはまた、マシンにとっても楽…というか、クラッチにとって負担が少なく、理にかなっているのだ。エンジンは、いったん始動したら、次に止めるまでの間、回りっぱなしである。これに対し、後輪は回ったり止まったり。で、後輪を止めたままエンジンを回しておく(アイドリングさせる)ためには、どこかに “逃げ” (滑り)が必要である。

通常のクラッチとミッションを持ったバイクでは、クラッチを切るかミッションをニュートラルにするか、どちらかで、その “逃げ” を作ることができるが、ミッションの場合は軸の上でギアが滑る構造なのに対し、クラッチの場合は、積み重なった何枚ものフリクションプレートとクラッチプレート(鉄板)の間のわずかな隙間で滑りを生まなければならない。隙間が小さい(切れが悪い)と充分に滑らず引きずりが生じ、発熱やそれによる種々のトラブルの元になりやすい。

さらに言うなら、多くの機種のクラッチハウジングは、単独での連続高速回転に耐えるベアリングを持ってはいない。だから、ニュートラルで(クラッチをつないだまま)高回転まで空ぶかしをするのはよくても、クラッチを切った状態で(ギアを入れたまま)高回転まで回すのは、上に書いた発熱の問題と合わせて、故意にクラッチを傷めるようなものだと心得るべし。以前に書いた 『 Column #049 ノンクラッチ・シフトアップのススメ 』 と合わせ、クラッチを守る乗り方を心がけてほしい。

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