『バイク乗りの勘所』

バイクは倍苦。でも気楽

掲載日:2012年09月03日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

ツーリング中にこの原稿を書いている。ウチを出たのは先週の金曜日。その日に 400km 走って長野県須坂の山奥に泊まり、翌日は 300km 走って福島県猪苗代へ。そこでイベントに参加したあと、郡山で1泊。続いて約 300km 走って埼玉県蓮田へ。その翌日は、蓮田を出発した後、東名用賀(東京インター)を起点に伊豆スカイラインを往復し、夜は用賀から御殿場へ。そして昨日は御殿場から都内へ…。ウチを出てからの走行距離は、すでに 1,800km を超えた。

用賀~小田原往復と、御殿場→大井松田の片道を除き、全行程が一般国道(一部県道)だ。この時期の一般道は、とにかく暑い。山に入ると多少マシだが、なかなか抜くチャンスがなく、延々と前のクルマに従って走るのもまた、けっこうな苦痛である。それでも私が下道好きなのは、気楽だから。きれいな景色を見つけては停車し、面白そうな店を見つけては覗く。走りは単調なくせに緊張感を保たなければならない高速道路とは、気持ちの余裕が全然違う。

道中で知り合ったライダー数名、声をかけたライダー十数名、挨拶を交わしたライダー数知れず、張り合った相手も4~5人いる。下はおそらく二十歳前後の、新潟~福島県境あたりの峠道で転倒し、呆然としていた若手ライダーから、上は、その転倒現場で知り合った74歳の W800 乗りの紳士まで、年齢層にも幅がある。74歳のおじさんには「アンタもまだ20年以上乗んなきゃならないんだから、ケガなどしないように」と、ありがたいお言葉をいただいた。

つけ加えると、今回のツーリングには地図を持たずに来た。だから、途中で誰かに道を尋ねた回数も半端じゃない。信号待ちで並んだ隣のクルマのドライバーやバイクのライダー、道端の土産物屋のおばちゃん、道を聞くためにわざわざ喫茶店を探して入ったこともある。これがまた、楽しい。地図をはじめとする情報ツールというのは、便利なようでいて、実は人間の行動を縛り、知らず知らずのうちに問題解決能力を奪っているのではないだろうか。

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