『バイク乗りの勘所』

結露を考えて走り、停める

掲載日:2011年06月13日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

日中は暑くても、朝夕はまだ肌寒い日のある今日このごろ。梅雨のせいで湿度が高く、低湿な室内の空気になじんだ体で外に出ると、露出した皮膚の表面にベタベタ水分がまとわりつく。こいつは汗より気持ちが悪い。空気中の水分(水蒸気)が、気温よりも温度が低い物体に触れて冷やされ、水蒸気が凝結して水(液体)になったのが、あの“ベタベタ”の正体である。夏前や秋口の夕方などに、バイクのシートに、うっすら汗をかいたように水気がついている…なんてのも同じ。

シートやタンクなどに付着した水分は簡単に拭き取ることができるし、拭き取らなくても、走りだせば再び気化してくれることも多い。拭きも走りもせずに置きっぱなしにしていても、外気の温度が上がったり湿度が下がったりすれば、やがてなくなる。ところが、いったん結露してしまうと、なかなか水分が逃げてくれない箇所もある。燃料タンク、クランクケース、排気管の内部などだ。なかでも、とくに問題なのはクランクケースの内部である。

クランクケース内には、ピストン~シリンダー間の隙間から漏れる排ガスや未燃焼ガスなどからなる大量の水蒸気を含むブローバイガスが充満している。クランクケースの温度が充分に高ければ、水蒸気のまま外部(エアクリーナーボックス)に出ていくが、クランクケースの温度が低い場合は内部で結露する。エンジンを停止して水蒸気の供給が止まった後も、余熱が充分なければ結露は続く。低温運転と低温停止を繰り返すと、クランクケース内の水はどんどん増えていく。

数kmのトロトロ運転をし、温度の低いところ停める…。これを続けていると、気化して放出することができず、溜まった水とオイルをオイルポンプなどがかき混ぜて、マヨネーズ状に練り上げてしまう。乳化というヤツだ。こうなると潤滑状態はヒドく悪化し、カジリや焼きつきの原因になる。そうらならないためには、ときには充分な距離をしっかり走って温度を上げ、冷えすぎない環境で保管するのが望ましい。空気のあるところ水蒸気、つまり、水があるということをお忘れなく。

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