ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.37】木川 奈美さん

掲載日:2026年06月12日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/森下 光紹

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Vol.37 木川 奈美(きがわ なみ)

バイクに乗る魅力の本質を探ると行き着くこと
スタイルとは、自己演出だけではなく、生き方そのものなのだろう

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チョッパー乗りは、痩せ我慢が美学である。と、筆者は思う。元々の語源は「チョップドバイク」最初のムーブメントは1960年代のアメリカで、大企業が製造した既製品のバイクから贅肉を削ぎ落としたスタイルをクールな存在と位置付け、多くの若者が自由の象徴として作り上げたスタイルだ。

当時のアメリカはベトナムへの侵攻が長引いて国内の経済状態も不安定となり、人命軽視への反発や情勢への反体勢という意味合いが大きかった。当時からチョッパー乗りがラブ&ピースというスローガンを大切にしているのも、ルーツを考えると納得がいく。

時代は変化する。チョッパームーブメントは、最初の強烈なイメージからもっとファッショナブルなスタイルへと広がりを見せて、現代ではバイクのライディングシルエットのひとつとして位置付けられているようにも感じる。しかし、根底は変わらないとも思うのだ。

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木川奈美さんが乗っているのは、ヤマハのSR400をベースとしたチョッパーカスタムである。バイク乗りになる以前の彼女はピアノが趣味の女の子。ご両親が音楽好きということもあって、かなり本格的に音楽には取り組んだ。ということはかなりインドアな趣味を謳歌する人かと思うとそうではなくて、木登りが大の得意だったり、少林寺拳法も学んでいたりと、少女期からアクティブな一面があるという。

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「クルマはジープが大好きでした。自分が小柄なせいか、でっかいものに憧れるのかもしれませんね」

彼女は大人になり、出会った人はバイク乗りだった。しかも普通のライダーではなくて、古いハーレーが何より好きな筋金入り。自営業で身を立てているナイスガイながら、実に穏やかに言葉を発する男性だった。そして「バイクに乗ってみようかな」と、この時彼女の中で何かが弾けたのかもしれない。

最初はホンダのリトルカブ。しかし小柄な奈美さんはすぐにステップアップを考えて、カワサキのエストレヤに乗り出した。

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「本当はこの時からヤマハのSRが格好良いなぁと思っていたんですけど、キックでしか始動できないから躊躇してしまったんですね。でもやっぱり諦められない。そんな時に出会ったのが今乗っているSRだったんですけど、このバイクはカスタムショップが創ったコンプリートモデルだったんです」

お店に展示されていたバイク。店主は彼女に「キックでエンジンをかけられたら売ってあげますよ」と言った。そこで思い切ってトライしてみると、かなり苦労はしたものの、彼女はエンジン始動に成功したのである。というわけで、そのカスタムSRは彼女の元へとやってきた。しばらくはそのままのスタイルで乗っていたが、奈美さんは自分好みのシルエットにするために、さらなるカスタムを実施する。コンプリート車のままでは、自分の相棒というイメージにはならなかったのだろう。

現在のスタイルは、フロントフォークを延長し、ホイールも18インチから細身の21インチへと変更し、チョッパースタイルを強調。ガソリンタンクのイメージも、少しダークな雰囲気へと塗装をやり直した。

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「わたし、バイク乗りのイメージって、出会う前はもっと野蛮な感じなのかなと思っていたんですけど、何だかみんなフレンドリーで楽しい人ばかりなんですよね。しかも、実はオタク体質というか可愛いし、心根が優しい人が多くて驚きました。まぁ乗るバイクの車種によって違うのかもしれないですけど、ビンテージ好きとかチョッパー好きの人と話すのは、何だか心地良いですね」

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今回話しを聞いたのは、名古屋の西部にあるビンテージヘルメットの専門店「NOBUDZ」のショールーム。このお店も夫婦二人でハーレーのビンテージカスタム乗りだが、奈美さん御夫婦は良く足を運ぶショップである。取材当日は梅雨の晴れ間になり、近くを流れる新川や庄内川の堤防道路を気持ち良く夫婦で流してもらった。

普段は時間のある時に、やはり夫婦で南知多方面に出かけることが多いという。そこは名古屋から南に下る知多半島。都会をどんどん置き去りにして令和から昭和へと逆戻りするような景色が気持ち良くて、筆者も数多く足を運ぶ場所でもある。

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ご主人はなんと1930年代に生産されたハーレーのビンテージモデルをベースとしたカスタムバイクが愛車という人。80年以上前のモデルを調子良く走らせる彼のことは、いずれまたこのコーナーで取材するつもりである。

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冒頭に、チョッパー乗りは痩せ我慢が美学と書いた。本当の自由を主張するために贅肉を削ぎ落としたシルエットゆえの苦労は、顔に出さないのがチョッパー乗りだ。僕は北海道などで長旅中に出会うチョッパー乗りとすれ違う時に、彼らの満面の笑顔が印象に残ることが多い。まるで、「世界で一番楽しいのはこの俺だ」と言わんばかりの笑顔なのだ。そんなイメージは、奈美さんにもやっぱり感じた。

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生粋のチョッパーは、フロントフェンダーも付けないから、雨でも降れば全身びしょ濡れ。そして彼らは雨具を着込むことをカッコ良しとは思わない。そんな状況では、無理でも笑顔で切り抜ける。それがチョッパー乗りの心意気だ。まぁ奈美さんに、そんな無理をしてもらいたくはないけれども、実はバイク乗りの本質は、誰でも似ているのかもしれないと僕は思う。夏は熱くて冬は寒い。年間で本当に快適な日は、ほんの数日しかないのかもしれないのに、一生やめられないのがバイク乗りの姿である。

奈美さんはインスタグラムでも自分のライフスタイルを発進していて、「@73_chivichan」で検索できる。小柄な女性でもスタイリッシュで楽しいバイクライフをと、彼女は自分自身を個性的に表現しているのだ。

ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

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