掲載日:2025年04月29日 フォトTOPICS
取材協力/川崎重工 写真・文/淺倉 恵介
この4月13日に開幕し、連日ニュースを賑わせているEXPO 2025 大阪・関西万博。世界中から、様々な国や企業・団体が出展。メインテーマに「いのち輝く未来社会のデザイン」とあるように、人類が地球環境の一部であることを再認識し、持続可能な未来を構築するためのヒントとなる展示がされています。その中で、我々ライダーとして注目すべきなのが、カワサキが展示する次世代モビリティの「CORLEO」です。
「CORLEO」とは、ラテン語で”獅子(ライオン)の心臓”を表す言葉。四足歩行で人が跨った状態で走る動物で、最初に思い浮かぶのは馬という人が多いだろうが、膝関節の向きや立ち姿は、確かに猫科の大型動物を思わせるものだ。
CORLEOは、未来のパーソナルオフロードヴィークルとして考えられたもので、不整地での安定走行を重視して、多脚歩行を採用した乗車型のモビリティ。乗り手のスキルに関わらず、安全にオフロード走行を楽しめることをコンセプトの一つとしているとのこと。現時点で、人を乗せて走ることは出来ませんが、ただ空想を形にしただけのモデルというわけではありません。開発にあたっては、川崎重工業のグループ各社からスタッフが参画。”人が跨って操る”という点で、バイクとの共通項が多いことから、バイク開発のノウハウも多く注ぎ込まれているとのことです。
川崎重工業のCORLEO関連の特設サイトでは、走行シーンを表現したCGムービーを公開中。大自然を縦横無尽に駆け回るCORLEOの姿に、ワクワクさせられる。
また、見逃せないポイントがパワーユニット。多脚歩行という構造から、電動であることは間違いなさそうですが、その電力を生み出すのが水素エンジン。既に四輪車用に実用化されている水素を燃料とする燃料電池ではなく、水素を燃やして動力を得るエンジン。しかもこのエンジン、2ストローク・ターボを考えているとのこと。排気ガスの浄化が難しいことで姿を消した2ストロークエンジンですが、燃料が水素であれば燃焼時に排出するのは理論上水蒸気のみとクリーン。混合気をターボで圧送することで、排出ガス成分の問題点である2ストロークエンジンオイルを用いる必要もなくなるのです。
CORLEOのメカニズムを表した透視図。車体前方、動物でいえば胸の辺りにエンジンらしきメカが存在。よくみれば、排気系からターボユニットへの配管も設けられているのが判る。エンジン後方の箱状のパーツはバッテリーで、後部には水素タンクが配置されていると思われる。(提供:川崎重工)
川崎重工業では、水素エンジンを使用した発電システムを「O’CUVOID」と名付け、実用化に向けて開発がスタートしているとのことです。CORLEOのパワーユニットもO’CUVOIDの一例として考えられているようです。ですが、ライダーとして気になるのは、2ストローク・ターボという技術。船舶用ディーゼルエンジンなどで実用化もされていますし、技術的にはバイク用のガソリンエンジンにも流用可能なはずです。昨年、カワサキが2ストロークエンジンに関する新しい特許を出願したと報じられました。さらに、今年初めアメリカの現地法人であるU.S.カワサキが、2ストローク復活を匂わすようなティザームービーを公開しています。確定情報はないものの、こうもパズルのピースが揃ってくると、一連のストーリーの結末が見えてくるようにも思えます。遠くない未来、2ストロークエンジンの官能的なフィールを、再び味わえる日が来るのかもしれません。これは期待せざるを得ません。
左の人物は、大阪・関西万博の開幕に先んじて催されたCORLEOのお披露目会で、プレゼンテーションを担当した川崎重工業株式会社 執行役員の鳥居 敬氏。右はCORLEOのイメージモデルを務めるトレイルランナーの第一人者である上田瑠偉氏。
大阪・関西万博を訪れる予定の人は多いはず。ライダー視点からCORLEOとカワサキの展示を見てみると、より深く楽しめるのではないでしょうか? ともあれ、大阪・関西万博でカワサキが指し示すのは、クリーンで安全なモビリティの未来。この先、いつまでもバイクを楽しめるように、ライダーの一人一人が考える必要があります。CORLEOは、そのきっかけをくれる存在なのです。
設計時に、バイクの構造から大きな影響を受けているというCORLEO。そのひとつがスイングアームをもつ車体。車体の中央部にピボットを設けて、車体各部の可動域を大きくとれるように考えられている。(提供:川崎重工)
展示されているCORLEOのプロトタイプも、車体の関節部分が稼働する。二枚の写真を見比べると、ピボットを中心としたスイングアーム構造の動き方がわかる。展示中は、随時車体姿勢変化のデモンストレーションを行っている。
CORLEOは、スロットルやレバーといった可動式の操作系を持たず、加減速や方向転換は全てライダーの荷重コントロールで行う。その点は乗馬に近い。設計段階では実際に乗馬競技者の協力を仰ぎ、ライディングポジションの確認を行なったという。
バイクのそれを思わせるタンデムグリップを装備。レクリエーショナルビークルとしての用途が考えられているため、二人乗り可能な車体が絶対条件であったそうだ。
CORLEOのデザインを担当したのは、カワサキの元部長である福本圭志氏。ZXシリーズをはじめ、数々の名車を手がけたレジェンドデザイナーらしく、カワサキのバイクらしさを感じさせるエッセンスが各部に散りばめられている。
カワサキのブースに展示させている、もう一つの未来のモビリティ「ALICE SYSTEM」。自動運転型の公共交通システムで、アプリを使用し目的地とルートを設定すると、使用するモビリティ全てが手配され、乗り換えのストレスが無いように考えられている。パワーユニットは、CORLEOと同様にO'CUVOIDの採用が予定されている。
こちらもカワサキブースに展示されている、商船三井の「WIND HUNTER」。風の力で推進する帆船で、水中に設けたタービンを回転させることで水素を生産する。究極のゼロエミッションシップとして考えられている。
カワサキのブースが設けられているのは「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオン内。国内12の企業・団体が共同で運営、カワサキは「交通・モビリティ」分野の担当として参加している。
EXPO 2025 大阪・関西万博の会期は10月13日まで。入場するには、事前にチケットの購入と来場日時の予約が必要。イベントやパビリオンは事前予約が基本で、カワサキブースが設けられている「フューチャーライフ万博・未来の都市」パビリオンも、入館に予約が必要となっている。
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