掲載日:2025年01月27日 フォトTOPICS
取材・写真・文/河野 正士
世界的なパンデミックによって、EICMA出展を取りやめていたメーカーの多くが復帰。EICMA会場は、久しぶりに欧州メーカーそろい踏みとなった。そこに世界市場で注目を集めるインド&中国メーカーが増え、欧州勢との勢力争いが活発になってきた。そのインド&中国メーカーは、欧州ブランドのR&Dや製造ラインを受け持つなどしてモデル開発や製造に欠かせない存在になってきている。
さらには途絶えていた欧州ブランドを積極的に復活させているのも彼らだ。その新興勢力には欧州のデザインスタジオも協力体制を敷き、いまや国産&欧州勢に負けないほどのエンジンバリエーションとモデルバリエーションを有している。では、そんなEICMA2024の海外メーカーを振り返る。
EICMA2024初日プレスデイの前日に、ミラノ郊外のイベントスペースで発表したのはロイヤルエンフィールド初の電動バイク「FLYING FLEA(フライング・フリー)」。近〜中距離の移動を想定したコンパクトな車体に、モーター&バッテリーというモダンな動力源と、アルミ製ガーダーフォークというクラシカルなディテールを融合させている。このロイヤルエンフィールド初の電動バイク・プロジェクトを率いたのはマリオ・アルヴィージ。かつてドゥカティで、スクランブラーファミリーを生み出した人物だ。マリオ曰く、2025年中の市場投入を目指しているという。
また650ファミリーの2つのモデルも発表された。ひとつは「CONTINENTAL GT650(コンチネンタルGT)」「INT650(アイエヌティ)」と同じ、ダブルクレードルフレームを採用した650プラットフォームに、スクランブラースタイルの「BEAR 650(ベア)」を追加。倒立フォークの採用やリアABSをカットするライディングモードの追加、TFTディスプレイの採用などモダンな装備をくわえた。
もう1台は、「SUPER METEOR650(スーパーメテオ)」「SHOTGUN650(ショットガン)」と同じ、クルーザープラットフォームに「CLASSIC650(クラシック)」を追加。ロイヤルエンフィールドでもっとも売れている「CLASSIC350」と共通の、クラシカルなスタイルを造り上げた。
またEICMA2023で発表した電動のコンセプトバイクをアップデート。「Himalayan Electric2.0(ヒマラヤ・エレクトリック2.0)」を発表した。顔周りやタンクガードのデザインは大きく変更されていないが、フレームを一新。バッテリー周りやモーター周りは、ロイヤルエンフィールドが出資するスペインの電動バイクメーカー/Stark Future(スターク・フューチャー)製となっていた。
すでに市販化され、2024年の英国のスタジアムエンデューロ選手権で優勝を飾り、2025年のスーパーエンデューロ世界選手権などシリアスなオフロードレースにも参戦する車両から、電動バイクの肝となるモーターやバッテリーを流用。おそらくはインバーターやコンピューターなども使用している(もしくはそれをベースにアレンジしている)ことを考えると、完成度は大幅に上がっていると考えられる。ロイヤルエンフィールドからは、「Himalayan Electric2.0」に関する詳細は発表されていない。
EICMA開催前日に、EICMA会場内イベントスペースでプレスカンファレンスを行ったファンティック。中国ブランドや投資ファンドからの資金などが入っていない、純血イタリアンブランドであることを声高に謳い、CEOのマウリツィオ・ロマン氏自身も、イタリアンブランドであることがファンティックの強みのひとつだと明言する。
その最新モデルは、エンジン開発&製作を行うグループ会社/モトーリ・ミナレッリが新たに開発した、ミナレッリ史上初となるDOHCを採用した排気量500ccエンジンを搭載。それがファンティックのスポーツモデル「IMORA」やキャバレロ「500ccシリーズ」に搭載される。ミナレッリのジェネラルマネージャーであるヴィットリオ・フィリッパス氏は、初のDOHCエンジン開発に踏みきったのは、コンパクトかつ広い回転域で効率よくパワーとトルクを生み出すため、と語った。
パンデミック後にEICMA参加を見合わせていたBMWがEICMAに復帰した。そこで発表されたのは「Concept F450GS」。コンセプトと枕詞が付いているが、2025年に市場投入を予定している。排気量450cc並列2気筒エンジンを、専用開発のトレリスフレームと足の長い前後サスペンションに搭載している。車重は175kg、最高出力は48馬力。欧州の限定免許カテゴリーであるA2カテゴリーに属すると発表したことから、市販時にはもう少し大人しめのスタイリングになるのではないかと想像する。BMW関係者から話では、開発はBMW本社チームが手掛け、製造や組立は現在のG310シリーズと同じ、インドのTVSが担当する予定だという。
スーパーバイク世界選手権王者トプラック選手が駆ったファクトリーマシンレプリカの「M RR WSBK CHAMPIONS EDITION 2024」も発表。この車両は限定販売される。
またスポーツネイキッドモデルの「S1000R」の2025年モデルは、これまでの単眼ヘッドライトから、スーパースポーツモデル「S1000RR」とイメージを合わせ、2眼ヘッドライに変更。新しい排気ガス規制EURO5+をクリアしながら最高出力は5PSアップの170PS。DTC(トラクションコントロール)のアップデートにくわえ、MSR(ドラッグトルクコントロール)なども新たに追加。同じく「M1000R」も同様のアップデートを行った。
アプリリア、モトグッツィ、ピアッジオ、ベスパを展開するピアッジオグループも、4ブランドをひとまとめにした巨大なブースでプレスカンファレンスを展開。各ブランドが新型車を発表した。
アプリリアは、2024年モデルとしてラインナップに加わったスポーツモデル「RS457」のプラットフォームを流用したスポーツネイキッドモデル「Tuono457(トゥオーノ)」を発表。排気量457ccの並列2気筒エンジンをアルミフレームに搭載。ライド・バイ・ワイヤーを採用し3つのライディングモードをセットアップ。ABSやトラクションコントロールも搭載する。
またラリーにも積極的に参加している排気量660cc並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーモデル「Tuareg660(トゥアレグ)」は、そこでの好成績を記念した「Tuareg Rally」も発表。オフロードでの走破性を高めるための、オフロードレースでの使用を考慮した内部コンポーネンツやセットアップを施した240mmストロークのKYB製フロントフォークや、オフロード走行に適したエンジンマッピング、アルミ製アンダーガードや新型チェーンガードなど専用パーツも多数装備している。
並列2気筒エンジンを搭載する「RS660」と、V4エンジンを搭載する「RSV4」および「Tuono V4」には、ファクトリールックな専用グラフィックや大型ウイングレット、ローンチコントロールをはじめとする最新の電子制御テクノロジーがパッケージされている。
モトグッツィには、あらたに「V7 Sport」が加わった。伝統的な縦置き90度V型2気筒エンジンはそのままに、トラクションコントロールやクルーズコントロールを標準装備。電子制御スロットルを採用したことにより、複数のライディングモードを装備。倒立フォークやフロントダブルディスクブレーキも装備する。
ベスパのフラッグシップモデルである「GTS 310」も新しくなった。スタイリングや機能に大きな変更はないが、ストロークを7mm伸ばすなど、約70%のエンジンコンポーネンツを一新。排気量を310ccに拡大したほか、最高出力も25PSに高めている。
プレスデイ初日プレスカンファレンスのトリを飾ったドゥカティ。そこで新型V2エンジンを搭載した「Panigale V2(パニガーレ)」と「Street Fighter V2(ストリートファイター)」をアンベールした。エンジンは、ドゥカティが史上最軽量&コンパクトと謳う新型V2エンジンを搭載。バルブスプリングシステムと可変バルブタイミングシステムを採用し、排気量は890cc。前モデルに比べ17kgも軽量化を実現している。
ドゥカティはここ数年、DWP(ドゥカティ・ワールド・プレミア)と題して、9月頃から順次翌年のラインナップに加わるニューモデルを発表している。ブースには、アンベールした2台とともに、DWPで発表された「Panigale V4」「Multistrada V4(ムルティストラーダ)」「Multistrada V4 Pikes Peak(パイクスピーク)」などにくわえ、スクランブラー・ファミリーからは「Scrambler Ducati 10° Anniversario Rizoma Edition(スクランブラー・ドゥカティ10周年記念リゾマ・エディション)」「Scrambler Icon Dark(スクランブラー・アイコン・ダーク)」「Scrambler Full Throttle(スクランブラー・フルスロットル)」も展示された。
また2024年にイタリアのモトクロス選手権に初参戦およびシリーズタイトルを獲得したモトクロッサー「Desmo450MX」も展示。EICMA直前には、2025年シーズンにモトクロス世界選手権MXGPクラス(450ccクラス)に参戦を発表。イタリアの国内選手権には「Desmo250MX」をデビューさせ、開発を進めることも発表された。「Desmo450MX」は一部ディーラーで2025年初頭からオーダーが可能となり、6月からのデリバリーを予定しているという。
トライアンフはプレスカンファレンスを行わず、EICMAまでに発表した2025年モデルを展示した。9月には「SPEED TWIN1200」、10月には「TRIDENT660」「SPEED TWIN900」「Tiger Sport800」、EICMA直前にモダンクラシック・ファミリーの限定モデル「ICON EDITION」を発表していた。
またトライアンフのモトクロッサー「TF250X」に加え、その開発を行ってきたモトクロス界のレジェンドライダー、リッキー・カーマイケルのシグネチャーモデル「TF450RC」も発表した。2025年シーズンのAMAスーパークロス選手権では、TF250Xを駆るジョーダン・スミスが第1戦アナハイム/3位、第2戦サンディエゴ/2位と連続表彰台を獲得。そしてスーパーエンデューロ世界選手権では、同じくTF250Xを駆るジョニー・ウォーカーが2位1回/3位2回の、開幕から3戦連続表彰台を獲得している。
KTMグループも、パンデミック以降初となるオーストリア本社が出ばってのEICMA参加となった。KTMでは、アドベンチャーモデル「1390 SUPER ADVENTURE S EVO」は、エンジンの排気量を拡大するとともにKTM初のオートマティック・トランスミッションやWP製の新世代電子制御サスペンションシステムを搭載。さらにはミリ波レーダーを駆使したBOSCH製の最新ARAS(二輪車向け先進運転支援システム)を採用して、安全性と快適性を大幅に向上させている。
そのSUPER ADVENTUREと同じエンジンや電子制御サスペンションシステムを搭載しながら、スタンダードなミッションを持ち、KTMスポーツバイクの代名詞であるDUKEの名を引き継ぐモデルらしく、バイクを操る魅力に溢れたスポーツツーリングモデル「1390 SUPER DUKE GT」も発表した。
スポーツネイキッドのDUKEシリーズのなかにおいて、並列2気筒エンジン搭載の最高峰が、この「990DUKE R」。低く構えたハンドル周りおよびヘッドライト周りのスタイリングに合わせて、横長のTFTモニターをハンドルマウント上にセット。最新のWP製APEXサスペンションをセットして、走りにも磨きが掛けられている。
ながらくスーパースポーツカテゴリーのマシンを発表していなかったKTMが、新たに開発したのが「990RC R」。2024年春にその存在が発表され、当時は2025年初の販売を予定していると発表されていた。そのタイムスケジュールに合わせ、EICMA2024で公道走行が可能な市販予定モデルである「990RC R」を発表、そして展示した。
KTMを飛躍させた390カテゴリーにニューモデルが加わった。それが「390 ADVENTURE R」だ。新型フレーム&スイングアームの採用のほか、ヘッドライト周りのデザイン変更にくわえ、ラリータワーやTFTディスプレイを新たに搭載している。
ハスクバーナは、先に発表した新型「Svartpilen 801(スヴァルトピレン)」とプラットフォームを共有するロードスターモデル「Vitpilen801(ヴィットピレン)」を発表した。排気量790ccの並列2気筒エンジンを有するこのモデルは、2024年春にフルモデルチェンジを受けた401シリーズ同様、Svartpilenと同じくVitpilenにもアップハンドルを採用。幅広で低く構えたハンドル位置とサスペンションセッティングの変更で、ロードスターらしいキビキビとした走りを実現している。
その「Svartpilen 801」をベースに、KTMやハスクバーナのすべてのデザインを手掛けるオーストリアのデザインカンパニーKISKA(キスカ)が手掛けたカスタムバイク。足周りのパフォーマンスを向上させるとともに、より軽快で空力を意識した外装類の変更で、さらにモダンなスタイルに仕上がっている。
イタリアのスクーターブランド/イタルジェットは、大排気量スポーツモデル「Dragstar700(ドラッグスター)」を発表した。イタルジェットのスクーター群は、スイングアームとハブステアを組み合わせたフロントサスペンションシステムと、アルミキャスティングパーツとトレリス構造のスチールパイプを組み合わせたハイブリッドフレームがその特徴だ。「Dragstar700」はそのアイコンを継承して、排気量698ccの並列2気筒水冷DOHC4バルブ6速ミッション付きエンジンをハイブリッドフレームにセット。リアタイヤをドライブチェーンで駆動する。フロントにはマルゾッキ製倒立フォークにブレンボ製4ポットキャリパーをダブルでセット。リアにはオーリンズ製ショックユニットをセットし、前後15インチホイールを装着する。車両価格は€14,90 0〜、700台限定で販売されると発表した。
KTMグループとジョイントベンチャーを起ち上げ、エンジン開発を行っているCF MOTO。KTM やハスクバーナがラインナップする並列2気筒エンジンは、そのジョイントベンチャーが開発を行い、CF MOTOが製造している。KTMやハスクバーナ同様、オーストリアのデザイン会社KISKAとグローバルパートナーシップを結んでいるが、CF MOTO R&D ヨーロッパにはModena40というデザインスタジオを持っていて、多くのCF MOTO車両およびCF MOTOの電動バイクブランドZEEHO(ジーホ)のデザインも行っている。
EICMA2023で排気量675cc並列3気筒のコンセプトエンジンを発表したCF MOTOは、EICMA2024でそのエンジンを搭載した市販モデル、スポーツネイキッドモデル「675NK」とスーパースポーツモデル「675SR-R」を発表。
また「V.04」と名付けられた排気量1000ccの挟角90度V型4気筒のコンセプトエンジンを発表。最高出力212PS(156kW)@14,500rpm、最大トルク114Nm@12,500rpm、乾燥重量61.5kgで逆回転クランクを採用している。昨年の例を考えると、このコンセプトエンジンを搭載した市販車がEICMA2025で発表される可能性は非常に高いと言える。
スーパースポーツ300世界選手権での勝利やダカールでの活躍によって、ここ数年で急速にスポーツブランドとしての認知と実力を備えてきたKOVE(コーヴェ)。EICMA会場での注目度も高い。ブースには、ダカール参戦用ラリーバイクのベースモデルと言える「450Rally」と、ラリータワーなどを装着した本格的なラリーモデル「450Rally EX」は大きな注目を集めていた。
またKOVEはダカールにくわえて年末から年始に掛けて、かつてのパリ〜ダカールのコースを辿るように開催されるラリー/アフリカECOレースにも参戦していて、そこに参戦したラリーバイクのベースとなる「800X Rally」やプラットフォームを共有するアドベンチャーバイク「800X」も展示。
排気量442.9cc並列4気筒DOHCエンジンを搭載したスーパースポーツモデル「450RR」と、プラットフォームを共有するネイキッドスポーツモデル「450R」も展示した。
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