掲載日:2021年12月27日 フォトTOPICS
取材協力/ヤマハ発動機株式会社 取材・文/小松 男 写真/伊勢 悟
世界最高峰のバイクロードレースmotoGPにおいて、ファビオ・クアルタラロが駆るヤマハ・YZR-M1がチャンピオンに輝いた2021年。ヤマハから年末に大きなニュースが届いた。日本での登場が噂されていた『YZF-R7』の販売が正式に発表されたのだ。ヤマハのスーパーバイクで頂点に立つYZF-R1に続くミドルクラスモデルとして、これまではYZF-R6があったのだが、現在公道仕様モデルは国内販売がされていない状況となっていた。その空白を埋めるかのように開発、登場したYZF-R7。2021年12月9日と10日に渡り国内デリバリーに先立って、メディア向けの発表試乗会が開催された。
YZF-R7はすでに海外で販売が開始されており、その大きな注目点として考えていたのは並列2気筒エンジンが採用されていることだった。長兄であるR1や、WSS(世界スーパースポーツ選手権)のホモロゲであるR6は4気筒エンジンが搭載されているのだが、なぜ2気筒エンジンを選んだのか、はたしてそれはどのような感触に纏められているのだろうか。多くの興味を持ちながらイベントへと向かったのだった。
装具に着替えて、いよいよコースイン。およそ半年ほど前にも、同サーキットで開催されたMTシリーズの試乗会に参加させてもらっていた。その中には今回のYZF-R7とフレームやエンジンを共通としているMT07があり、MTシリーズの中で一番楽しいと感じていたのでR7も多いに期待をしていた。なので、少々MT07との比較も交えながらR7の感触を紹介したいと思う。
数周の完熟走行をした後、徐々にペースを上げてゆく。まず感じたのはフロントフォークの動きの良さだ。初動は優しくスッと入り、奥で粘る。R7はバーハンドル仕様のMT07と違い、低くセットされたセパレートハンドルやフロントフォーク取り付け位置の変更などのためにリアが上がっており、上体の体重がハンドルに乗ってしまいがちなのだが、それでもこの良く動くフロントサスペンションのおかげでとても曲がりやすい。
さらにはリンクを介してセットされているリアサスペンションの取り付け位置や動きも良く、リアタイヤの路面接地状況がよく伝わってくる。実はR7はIMUなどの電子デバイスを採用しておらず、スロットルもアナログ式を採用している。なので慣性モーメントをセンシングし姿勢制御を行うコーナーリングABSやトラクションコントロールを備えていない。だからこそ前後タイヤの接地感であったり、トラクションのインフォメーションが大切になってくるのだが、それに関してR7はとても完成度が高い。軽量な車体と相まってヒラヒラと走らせることができる。
並列2気筒レイアウトのヤマハCP2-700エンジンは、MT07やXSRにも採用されているのだが、また違った感触となっている。低回転で粘りがあり、高回転域まで回しても楽しいというセッティングだ。
R1やR6のようなレーシングマシンを想像していると、少々それらとのキャラクター的ズレを感じられるが、それこそが今回のYZF-R7の狙いなのである。1秒のタイムを縮めることよりも、とにかく乗って、走らせて楽しい。そう思えるスーパースポーツ、通勤通学、ワインディング、ロングツーリング、そしてサーキット、と幅広いシチュエーションで、スポーツライドを満喫できるパッケージとなっていた。