【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間

掲載日:2020年10月06日 フォトTOPICS    

写真・文/小松 男
※この記事はガレージライフ82号(ネコ・パブリッシング発行)にて掲載したものを再編集しています。

この度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。バイクブロスマガジンズでは「新型コロナに負けるな!」というコンセプトにより、パソコンやスマホを使い自宅で楽しめる記事として、バイクのガレージライフを楽しむオーナーインタビューをご紹介。憧れのガレージライフに夢を馳せていただければと思います。
【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間のメイン画像

栗原典善さん/カーデザイナー

ジョルジェット・ジウジアーロが設立したイタルデザインに在籍経験を持ち、欧州や日本のクルマやバイク関係のデザインをはじめ、様々なプロダクトデザインを手掛けてきた栗原典善さん。9年前に作り上げたガレージは、キャンピングカーや趣味のモーターサイクル、自身が手掛けたQ CARなどに囲まれた創作空間となっている。

キャンパーを格納するために設計された巨大ガレージ、
その上にはカナダから直輸入されたログハウス

本項はガレージ実例記事とは異なり、ガレージオーナーに焦点を当てて紹介するページだ。今回伺ったガレージのオーナーは、これまで世界的に活躍してきたカーデザイナー、栗原典善さんである。

まずは栗原さんの経歴から書き綴らせていただこう。1953年に埼玉県で生まれる。桑沢デザイン研究所卒業後、75年に本田技研研究所へ入社。バイクのデザインプロジェクトに参画することになる。その後79年にはイタリアに渡り、ペルージャ大学に留学したのち、世界的に有名なカーデザイナー宮川秀之氏とジウジアーロ氏が設立した『イタルデザイン(コーポレートスタジオ)』に在籍することになり、BMW、フィアット、フォルクスワーゲン、アウディなどの欧州メーカーと国内メーカーのカ—デザイン及び、バイク、カメラ、時計などのプロジェクトに加わる。82年からはヨーロッパフォードに移籍し、幅広いカ—デザインを手がけ、85年に帰国、デザインクラブインターナショナルを箱根に設立。それは世界中のカーブランドの開発デザインプロジェクトを数多く請け負うこととなり、日本を代表するデザイン開発会社となる。

2001年には新たなデザイン会社NORI,incを設立、2013年にCar Design Academyの監修役に就任し、現在も世界中の若者にカーデザインスキルを教えている。なお、ネコ・パブリッシングが刊行するクルマ雑誌、『ティーポ』において、30年以上もの間連載ページを持たれている。デザインに携わったプロダクト名を聞くと、アレもコレも知っているというモノが多く、あらためてその影響力を知らされることになるのだが、そのように世界を股にかけて活躍してきた栗原さんはどのようなガレージライフを送っているのだろうか。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像02

建屋の正面に向かい、一番左側のガレージは、現在ワークスペースとされている。バス、トイレ、キッチンも備わっており、ガレージフロアだけでも生活することができる。

「以前は小田原にある会社の隣に住まいを建てて住んでいました。その家にもガレージはあったのですが、10年ほど前に購入したバーストナー(フィアットベースのキャンピングカー)を入れることができず、それを入れられるような大きなガレージを持ちたいと考えたのがきっかけとなり、現在のガレージハウスを建てた土地を探したのです」と栗原さんは話す。

実は私、栗原さんとは15年のお付き合いをさせていただいており、今回のガレージにも竣工当時からたびたび訪れたことがあった。三基の大きなドアが備わったガレージは、以前は正面に向かい右から大きなバーストナー用、中央はとっておきのクルマ用、一番右が複数台所有されるバイク用だった。しかし現在は、一番左のガレージはデザインを行うワークスペース兼リビング的な使い方がされ、バイクが中央へ移動されている。

「クルマも好きなのですが、私の遊びのルーツ的にはバイクが高い比重を占めます。いまもすべて車検を通し、いつでも乗れるような状態にしています。特にこの近所はクルマ、バイク好きが集まるエリアで、ちょっと走るだけでもとても気分が良い場所なのです」と栗原さん。

RC造のガレージの上層階には、カナダから直輸入したという立派なログハウスとなっているのだが、ガレージフロアにもバス、トイレ、キッチンといった水回り、そしてこれからの寒い季節には欠かせない薪ストーブが設置されており、生活できる環境が十分に備わっている。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像09

RC造のガレージ上にログハウスが建つ栗原邸。その前には、数年前の豪雪で潰れてしまった市販カーポートの代わりに建てられた、超極太ログカーポートが置かれる。

「時代の移り変わりによってカ—デザインの世界もかなり変化しました。私は現在カ—デザインの最前線を突き進むということはしておりませんが、若手デザイナーの育成は続けてゆきます。さらには自分の好きなバイク遊び、もちろんデザイン活動をこのガレージで楽しんでいるのです」と栗原さんは話してくれた。

創作活動を行いながら自然と調和して生きてゆく、栗原さんのガレージからは、理想的なスローライフを送られていることが伝わってきた。

プロダクトデザインの最前線で長年活躍し、
現在は若手デザイナーの育成も行っている

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像01

日本を代表するカ—デザイナーである栗原典善さん。傍らのクルマは、栗原さんが手掛けたEV、Qカ—であり、2台所有し現在も日常のアシとして活躍している。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像03

ガレージを建てるきっかけのひとつでもあったと言うフィアットベースのキャンピングカー、バーストナーが収まるガレージ。現在も時々このクルマで旅に出ることがある。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像04

ガレージには、以前作ったスケールモデルがディスプレイされている。これまでに描いてきた、たくさんのデザインスケッチも保管されており、栗原さんの活躍が伝わる。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像05

ガレージ内はDIYで設置したという薪ストーブが備わっている。これひとつで、冬季のガレージも暖かく過ごせる。取材後には、このストーブを使ってピザを作っていただいた。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像06

奥様の由美さんと、愛犬のサラちゃん、チャッピーくん。このガレージハウスでの生活をはじめて9年、自然の中で暮らすということに、すっかり慣れたそうだ。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像07

以前アレッサンドロ・ナニーニと、ジョルジョ・ピアンタが来日した際、ティーポ誌からのオーダーで行ったというインタビュー記事。ちなみにティーポでの連載は88年から始まり、現在も続いている。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像08

本田技研在籍時代に手掛けたXL125のメーター。スクエアとカーブラインを取り入れつつ、アシンメトリーなデザインは、今見ても新鮮だ。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像10

DIYによって敷地内にウッドデッキが追加されたほか、写真のアイアンゲートが追加されるなど、竣工から10年近くが経過し、様々な部分がブラッシュアップされてきた。

【新型コロナに負けるな!ガレージライフ】クルマ、バイク関係をはじめ、数々のデザインを手掛けた日本を代表するデザイナーが創り上げた創作空間の画像11

これまで購入してきたヘルメットが置かれたパートには、以前描いたデザインスケッチも保管されているほか、栗原さんがデザインを手がけた、ジウジアーロデザインのサングラスや、最近復刻もされたセイコー製の腕時計などもガレージの一角に並べられている。

■OWNER'S CHECK
●一番気にいっているところは?
バイクをはじめ、好きな乗り物に囲まれながら仕事が出来ること。そしてバス、トイレなどの水まわり設備も整っていること。
●ちょっと失敗したところは?
特になし。
●次の夢はなんですか?
クルマやバイク好きが気軽に集まれるような場所にしたい。
●読者へのアドバイスを!
出し入れがしやすいように、間口は大きめに設定しておいた方が良いでしょう。オーバーヘッドドアもお薦めです。

■PLANNING DATA
所在地●神奈川県
ガレージ面積●110m²
外壁仕上げ●RC、ログ材
内装仕上げ●RC、ログ材
竣工●2010年
格納車種●1998年式BMW・K1200RS、2003年式BMW・R1150GS、2005年式BMW・R1200RT、1997年式KAWASAKI・SHELPAなど

設計・施工
株式会社JIN/カナディアンプライド
長野県北佐久郡軽井沢町長倉2430-2
Phone/0267-31-6869
http://canadianprideltd.com/
ライター プロフィール
小松 男
BMWバイクス/DUCATIバイクス/Gooバイクなどの雑誌編集長を務めた後、フリーランスエディターへ転身。国内外ブランドを問わず、大型クルーザーからEVスクーターまで、2輪の乗り物ならば何でも乗りたがる性分の元祖雑食系。広く深くがモットーで、他人からは助平な性格と言われることもしばしば。出不精かつ出たがりという二面性を持つ。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索