掲載日:2020年06月25日 フォトTOPICS
写真・文/小松 男 ※この記事はGarageLife75号(ネコ・パブリッシング発行)にて掲載したものを再編集しています。
アーチビルディング 高木邸
少し建築物に詳しい方ならば、アーチビルディングという工法をどこかで耳にしたことがあると言う人も多いと思う。アーチ状のパネルを組み合わせて作り上げるシェル型の建築物であり、アメリカで誕生し、住宅や倉庫、店舗などとして使うことはもとより、組み立てた後もばらして再度設置できるため、戦地での軍の格納庫などとしても使われる場合がある。
特徴はなんと言ってもそのスタイルだろう。アーチビルディングは一般的にみられる建物とは一線を画するため、とにかく目立つ。人とは違うものを求める人やアメリカンスタイルを好む人ならその世界観に魅了されることだろう。もちろん建築物としてのポイントも数多くある。例えばアーチパネルそのものがフレームとなっているため大空間をつくりあげることが可能だ。多少建築業界をかじっていれば、自身でも建てられる程、施工も簡単。アーチ形状のため強度も高く、降雪地帯などでも使われているなど、様々なメリットがある。だんだんと興味を持たれてきたのではないだろうか。ここではワンダービルディングジャパンが手掛けるアーチパネルを使って、自身でアーチガレージを建ててしまった高木さんのガレージを紹介していこう。
アーチビルディングはなんと言っても特徴的な見た目がポイントだ。もちろん幅、高さ、奥行、すべて自由にオーダーすることができる。家や店舗として使う人も多い。
高木さんがアーチビルディングのことを知ったのは4年ほど前のことだ。元々外構や型枠などを手掛ける職人でもある高木さんは、当時父親が住むための新しい住居の建築を考えており、せっかく建てるならば変わった建物を作りたいと考えていたと話す。雑誌で知ったアーチビルディングに強烈なインパクトを受けて、建てるならコレだ! と直感。しかも取り扱いは同県下にある「ワンダービルディングジャパン」だと知り、早速問い合わせたのだった。
「とにかくどういったものなのか知りたくて話を聞きにワンダービルディングに行きました。色々とお互いのことを話しているうちに、建築関係の仕事をしているなら、その時着手していたアーチ物件の外構をやってほしいと頼まれて、そこからさらにお付き合いが深くなっていったのです。もちろん自分のガレージのためのアーチも注文しました」と話す高木さん。
ガレージの中にはハーレーとビューエルが収まっている。鉄骨の階段も設計から高木さん自らが行ったそう。床の仕上げや壁の色遣いなど、要所要所に見どころがあるガレージだ。
その後部材が到着し、高木さんは自らの手で施工を進めて行くこととなった。「ほぼすべて一人で建てました。もちろん難しいところもありましたが、それよりも他の日常の仕事をしながら並行して着手していたのでかなり時間が掛かってしまいました。アーチが完成してもずっとトンネル状態でしたよ」と笑いながら話してくれた。
アーチの中は1階の半分のスペースをガレージ兼事務所に、もう一方は完全に仕切り別口も設けて父親の住居としている。2階は広々とした趣味空間が広がっている。ガレージにはハーレーとビューエルの2台が収まっており、アメリカンなガレージスタイルにピッタリのセレクトだ。ガレージが完成するまでに多数買い集めて置いたというスピーカーがあちらこちらに積み重なっているのもクラブ的な雰囲気で気持ちを盛り上げてくれる。もちろん取材は完成後に行っているため、途中の苦労は話でしか聞くことはできないが、そもそものコンセプトだったという「アイアンとウッド」の持つ無垢の質感を上手く取り入れており、独特な空間へと仕立て上げられている。
アーチ状の構造が良く分かるロフト空間。コンクリートフロアをベースとしているため、こちらもかなり強固だ。インテリアに関してもマテリアルにこだわっていることが伝わってくる。
「基本となる図面は書き起こして始めたのですが、どんなガレージになるかは想い描ききれていませんでした。だからフラッシュアイデアであれをこうしようとか、現場合わせだった部分も多数あります。でも徐々に形ができていくにしたがって、イメージがどんどん膨らんできたのです。色々と試しながら作り上げたので自分の勉強にもなりました」と高木さん。
キットガレージとして考えた場合、アーチビルディングは割とコストを抑えられる部類であるし、見た目的にも特徴があり楽しい。大型のものはDIYで作り上げるのは難しいが、3×6mほどのサイズであれば、自分でもチャレンジしてみようかという気になってくる。拡張性なども備えており、将来的なことを考えた際にも長くガレージといい付き合いができるだろう。
12mスパンまではフレーム無しで飛ばすことができる。もちろんそれ以上の幅となってもフレームの設置などで対応可能だ。このスタイルのまま自由に設計できるのもメリットである。
ガレージの顔となっているアイアンの扉。まずはドアだけ設計したそうだが、カコミ枠も揃えたくなりすべて作り上げた。アイアン特有の重厚な質感がアーチビルディングに良く似合っている。
一階の中央にコンクリートで仕切りを作り、父親が使う住空間と分けている。すべてにおいて頑丈に造られており、何をやってもビクともしなそうな雰囲気だ。もちろん棚もお手製だ。
高木さんが気に入っているポイントのひとつとして挙げてくれたタイルとローズウッドのコンビとしたガレージフロア。丁寧に仕上げられており、いいアクセントになっている。
ガレージ内の採光も考えて、ロフトのフロアは一部にグレーチングを採用している。基礎となるベースがしっかりしていることもあり、重量物をのせても問題がなさそうだ。
これも高木さんがこだわったトラスフレーム。図面を描き起こし、鉄工所の知り合いに頼んで作り上げた。設置されたスポットライトやモニタースピーカーが良く似合っている。
基本的にアーチビルディングはむき出しの鉄板のため、そのままでは夏は暑く冬は寒い。そこで内側には発泡ウレタンを使用して断熱効果を得ている。小型のストーブ一台で十分温かかった。
高木さんはシルバーアクセサリーなども手掛けており、ガレージに使われるスカルオブジェも自身で作り上げた物だ。造形用のモルタルや、粘土を使っているそうだが、ガレージに合っている。
アイアンフェンスやゲートもワンオフで作ったもの。周囲のブレーンや自分で手掛けることでコストを抑えるのもガレージ造りを楽しむうえでのポイントとなってくる。
ロフトのフロアにはボルドーパインを採用。一度ペイントしたものを表面加工し、さらに再度ペイントをするという手の込んだ工程で作られており、独特な風合いを持っている。
左_階段下には作業台を設置している。今はやっとガレージが完成したところだが、ゆくゆくはオフィスとしても利用していくことを想定している。右上/音楽スタジオなどで使われている吸音材を壁面に貼り付けている。コンクリートを使い頑丈に造られていることもあるが、相当な数のスピーカーで音を出しても、隣の部屋への音漏れはほぼない。右下_ロフトには巨大なスクリーンを設置しており、映画鑑賞や音楽を聴いたりと、自身のガレージライフを楽しんでいる。このガレージは高木さんのアジトとして進化してゆきそうだ。
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