掲載日:2020年08月19日 フォトTOPICS
写真・文/小松 男 ※この記事はガレージライフアメリカン05号(ネコ・パブリッシング発行)にて掲載したものを再編集しています。
東京都 K邸
アメリカンなガレージライフを楽しむには様々なスタイルがあるが、アメリカと言えばやはり“広大な土地”をイメージする人も多いと思う。エリアによる地価の差や、気候などによって、一概にそうとも言えないことはあるにしても、アメリカを思い描いた際にやはり広いスペースへの憧れを抱いてしまうのは必然的と言えるだろう。今回取材したガレージは、そのガレージライフそのものに広大なアメリカを思い浮かべるようなゆとりがあり、それをまるまる自分たちのスタイルとして楽しんでいる好例だった。
「ここからは米軍基地が近いこともあってオヤジの代から、いやもっと上の代からアメリカの文化に親しんできたんですよ」。と話してくれたのはガレージのオーナーであるKさん。その体格の良さからは豪快な性格が伺え、聞くところによると、昔はローライダーのカークラブでプレジデント(ボス)を務めていたこともあると言うのだから、それだけを聞くと怖そうなイメージを持ってしまうのだが、実際のところはとても気さくで優しい方だ。そのKさんがガレージを建てるまでの経緯を話してくれた。
もともとこの地で生まれ育ったKさんは、結婚してから祖父の家で同居暮らしをしてきたと言う。数年の後にその土地を受け継ぎ、同じ場所に家を建て直すことを決意した。
「もちろん新しく建てる家のことも大切なのですが、自分の場合は何よりもガレージを作りたかったのです。そのことを山梨県の諏訪に住む昔からの友人と話していたところ、その友人宅の近くにキットガレージを手掛ける『グリーンベル』という会社があると聞き、キットガレージがどんなものなのか見に行ったのです。」
グリーンベルで見たガレージが、自分が想像していたものと合致したKさんは、すぐに購入を決めた。実際のところ私のようにガレージの専門誌を作っていると、ここまではよく耳にする話だ。しかしKさんの場合は続きがある。
「このガレージは基礎から全部DIYで建てたのですよ。まずは土間コンクリートを打つところからはじめて、建前の時には5、6人の仲間に手伝ってもらいました。普段の仕事の合間を縫ってはガレージを建てるということが数か月続きましたね。基本的には家の庭も手掛けてくれた庭師の友人と2人で、あとは人手が必要な時や、手伝ってくれるという仲間が集まった時に一気に進める感じです。一応職人の棟梁を立てて、指示をしてもらいましたが、その人も在来工法の日本家屋しかやったことがなかったので、2×4のこのガレージの作り方には驚いていましたね」とKさん。
キットガレージとは言え、DIYで建てるのは相当な労力を要することは想像に難くない。実際屋根を上げるときにはかなり大変だったそうだ。しかし苦労はあっても気合でなんとか乗り切ったとKさんは話す。その甲斐あって、素晴らしいガレージが完成し、何よりもこのガレージを使い、いわゆるブロックパーティを頻繁に行うようになった。
「今日集まっている地元の友人らだけでも、月一は集まってバーベキューパーティーなどをやっていますし、その他のメンバーでも何かしら集まってイベントをやっていますよ。今となっては、ガレージは生活に不可欠なものとなりました。」とKさん。
現在ガレージ内に収まるのは、カスタマイズされたハーレーダビッドソンFLSTCと数台のバイクと自転車だが、ガレージの壁に飾られたインパラのローライダーに乗っていたころの写真に収まる若かりし日のKさんの姿を見ると、もしかすると、このガレージにフルサイズのアメ車が入る日はそう遠くないことなのかもしれないと思う。
■GARAGE DATA
所在地●東京都
竣工●平成25年5月
外装仕上げ●ウッド
内装仕上げ●ウッド構造
ガレージ面積●約50㎡
ガレージ建築費用●約250万円
愛車●2006年式 ハーレーダビッドソン FLSTC