掲載日:2012年07月20日 フォトTOPICS
取材・写真・文/小林 ゆき 取材協力/マン島TTレース公式サイト
しゃがんで写真を撮っているのがジョン・マクギネス選手。自分が乗ってきたほとんどのマシンの写真をiPhoneに入れてあるそうです。
今年で4回目となるマン島 TT レースの TT Zero クラス。エミッションフリー(排気ガスゼロ)のレギュレーションですが、事実上、電動バイクのレースとなっています。1年目の2009年、アメリカの『モトシズ』という電動バイクのレーシングチームが優勝を期待されていたものの “電欠” でリタイヤ。しかし、一昨年はアメリカ人のマーク・ミラーがモトシズで優勝。昨年はモトシズのワンツー・フィニッシュで、優勝がイギリス人のマイケル・ラッター、2位にはマーク・ミラーが入るという快挙を成し遂げました。
このようにモトシズの快挙が続く中、TT Zero は電動バイクのレースとして世界の注目を集める一方で、開発費用も参戦費用も莫大なお金がかかるせいもあり、あまり参加台数が増えませんでした。そこへ、昨年は日本から『プロッツァ』が、そして今年は『Team無限』が参戦することになり、TT Zero クラスに新風を送り込みました。
『Team無限』の神電(Shinden)は、新開発のカーボンフレームを採用していることや、マン島 TT で現役ライダーとして最多優勝を数えるジョン・マクギネス選手を起用したことから、レースウィーク前から大いに注目を集めました。
今回はベールに包まれた神電のディティールを、お見せできるところまでなるべく詳しく紹介していくことにします。
01一見、普通のバイクですが、あるはずのブレーキペダルがありません。マフラーもありません。
02左側を見ても、一見普通のバイクですが、あるはずのシフトペダルがありません。神電はミッションがなく、オートマチック式でスロットルを操作します。
03元々はカーボンフレーム&カーボンスイングアーム、それ以外のパーツも多くはカーボン製ですので、このように車体は真っ黒でした。
04ダミータンク部分のエッジのアップです。カーボン繊維の織りと、見事なアールの付き具合が確認できるかと思います。
05フロントカウルに貼られたジョン・マクギネス選手の名前とU.K.の国旗。マクギネス選手はイギリスのモアカム出身です。
06神電は水冷式の電動モーターユニットを採用していますから、水冷のレシプロエンジン同様、ラジエターがあります。ラジエターカバーのエッチングにご注目。
07イグニッションスイッチはメーターの下側にあり、本来イグニッションスイッチだった場所は別のスイッチに換装されています。
08左側のレバーはクラッチレバーではなく、リアブレーキレバーとなっています。謎のボタンも装備されていますね。
09電動バイクでもメーターはモーターの回転数を表示します。他にもいろいろと謎の数字が。
10サスペンションは前後ともショウワ製。ブレーキキャリパー&マスターシリンダーはニッシン製。ディスクローターはユタカ技研を使用しています。
11スイングアームもカーボン製です。タイヤサイズはフロントが120/70ZR17M(58W)、リアには200/55ZR17M(78W)を採用。
12駆動方式はご覧のようにチェーンドライブです。排気音がないため、走行音を間近で聞いていると、意外にチェーンの駆動音や風切り音が大きいことがわかります。
13タイヤは、温まるのが早い溝付きタイヤと、レーシングスリックの2種類をテストしてきました。
14決勝ではライダーの意向で、フロントが溝付き、リアがスリックというチョイスになりました。
15マン島は日中の最高気温がせいぜい20度程度と、あまり高い気温ではないため、このようにタイヤウォーマーだけでなくホイール全体を包むカバーも併用して万全を期しました。ちなみにカバーは現地調達の手作りです。
16リアシートの上にあるのは、レシプロエンジンでいうところの「キルスイッチ」。電気は見えないし音がしないので、レギュレーションでこのように目立つ色と大きさで装備していなければならないと定められています。
17レギュレーションでトップ3はオンボードカメラの設置に応じなければならいことになっていて、フロントカウル内にはハイビジョン動画の撮影が可能なGoProが設置され、その映像は全英ネットのITV4で放映されました。
18ヘルメットも神電デザインのものが製作されました。マクギネス選手の個人スポンサーであるモンスターエナジー、HMプラント、レッドトルペードのロゴも。
19ヘルメットの後頭部には、マクギネス選手がレース前に必ずおまじないとしてキスをするというお守りのキャラクターのイラストが描かれています。
20レザースーツもまた無限神電デザインの新品。鮮やかな新緑に覆われたマン島TTコースに、白地のツナギとマシンのカラーリングがよく映えていました。
21レースを走り終わったフロントカウルは、ご覧のように虫の痕跡が。TTでは昔から伝統的に、走り終えてマシンをコレクションとして保存する場合、この虫の痕は拭かずに残しておく、というのがお約束になっています。
222012年仕様の無限神電はご覧のような仕様でしたが、無限のエンジニアによれば、次なる挑戦に向けて新たなアイディアを具現化していきたいとのこと。次のモデルはどのような仕様になるのか、楽しみです。
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