AUTO MAGIC / Z1 カスタム写真
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カワサキ Z1

掲載日:2010年11月15日 プロが造るカスタム    

流用のメリットに着目しZカスタムジャンルを確立させる

本来好きなバイクを好きなスタイルに仕立てていくのがカスタムだから、ある意味では制限はないのだけれど、カスタムというジャンルが確立したところで、さまざまな要件や流儀、スタイルというものが出来てくる。ベースバイクや手法だったり、パーツにも、人気のあるなしや、王道やマニアックなどの区分がされていくわけだ。

 

今で言うカスタムブームの初期、1980年代の終盤から2010年の今に至るまでカスタムジャンルの中核であり続けたカワサキZ(1972年発表)にしても、その最初期から今のような大勢を占めていたわけではなかった。その頃で既に登場から20年近くが経っていたし、'80年代はバイクの進化が激しく行われた時代でもあったから、スタイルも、中古車として見た場合にも、単に古いバイクであるという認識の方が多かった。事実、人気が高まってきたのはその後しばらくしてからだし、ノーマル状態を維持しようにも今のようなリプロパーツ等はほとんどない状態が少なくとも'90年代半ばまでは続くのだから、Zを取り巻く環境というのは、かなり厳しかったのだ。

 

カスタムパーツにも同じことが言えて、“Zに太いタイヤが履きたい”と考えたとしても、まずそれに合うホイールを探し、ホイールが変わればそれに見合うスイングアームやフロントフォークやブレーキまわりが必要となるわけで、そのための寸法取りから始めないといけないなどということも普通だった。当初はそれでも、という向きが地道にそうした作業を進めてきたのだが、これらが雑誌などを通じて多くのライダーの目に触れるようになると、“あれはカッコイイ”“作って乗ってみたい”等の次の要求を引き出してくる。

 

ベースのZは元の数が多かったことや、アメリカやヨーロッパにも多くの車両が輸出され、その後眠っていたこともあって、そうした中古車両が改めて日本に輸入されてくるようになった。そして足まわりの変更には、当時のリッタークラスバイクを主にした純正パーツの流用、いわゆる“純正流用”という手法が受け入れられていった。ホイール/サス/ブレーキをまとめて使える上に統一感が得られること、リッタークラスのものなら強度等にも大きな不安を招きにくいこと、そして純正ゆえの入手しやすさ。もちろん車両への合わせ込みには大がかりな加工も必要なのだが、それ以前に比べれば容易な点も受け入れられ、カスタムはブーム化していく。

 

そんな中で1992年末に発売されたホンダの現代ネイキッドが、CB1000スーパーフォア=初代BIG-1だった。後に1300へ拡大、2010年もラインナップされる息の長いシリーズとなるこのマシンだが、初めて見たとき、車両トータルではなく、使用されている個々のパーツのほうに興味を持った人も少なくなかったようだ。ビッグ1の名の通り、大きく堂々とした車格を持たせるために選ばれた3.50-18/5.50-18サイズのホイール(タイヤは120/70-18・170/60-18インチ)と、φ43mmという太いインナーチューブを持つフロントフォーク。ゼファー1100が先行してはいたがビッグネイキッドというジャンルは確立されておらず、先述の純正流用もその主流は、じつのところ、軽量コンパクトなスーパースポーツやレーサーレプリカの足まわりだった。しかしこれらは設定荷重や、サイズ的に合わないなどの問題が発生しやすく、そのため、スプリングレートやダンピングのリセッティング、フォーク長の変更といった各種の作業が必要となっていたのだった。とくにフロントフォークの延長はかなりの手間がかかってしまうため、元々の長さのまま組み込むと車体姿勢が極端な前下がりとなり、操安性が悪化してしまう。そのため、ある程度は妥協するべし、といった風潮が純正改にあったのも事実だ。その点、CB1000SFは車重や車格的にも往年の空冷マシンに近く、その足まわりは空冷カスタム用の純正流用パーツとしての最適な要素が数多く含まれていると歓迎された。

 

オートマジックによるこのZ1は、1993年の作。CB1000SFの足まわりを、その発売直後にそのまま移植しているのが特徴だ。前後18インチホイールは大柄なイメージのZ1とバランス良くマッチングしている。もちろんハンドリングも、短いフォークと17インチホイールをそのまま組んだときに起こりやすい、不快な切れ込みなどがなく、極めてナチュラルに仕上がっているという。それはまさに狙い通りであり、同時に純正流用のメリットであるパーツ代が手頃なのも魅力となっていた。オートマジックはこの純正流用の手法を早くから手がけていたし、Zも早くから海外の車両を多く輸入して販売、さらにはその後タイヤのワイド化に欠かせなくなるフロントオフセットスプロケットなど、必要なカスタムパーツを揃えてきた。そう考えるとこの車両は、Zというベース車と純正流用という手法、その先駆けにして、定番化を進めた1台であると言っていいだろう。

オートマジック Z1の詳細写真は次のページにて

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