掲載日:2024年09月12日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
HYOSUNG GV250S-EVO Supreme
HYOSUNG(ヒョースン)モーターサイクルは1978年に韓国で創業され、何度か経営基盤の変化を経てグローバルなバイクメーカーへと成長した。2016年には中国の大手2輪メーカーであるQingqi(チンチー) Motorcycleとの合弁会社を設立、生産拠点を中国済南市へと移し、開発と生産能力を向上させている。日本においては2002年からヒョースンモーター・ジャパンによる輸入販売が開始され、当初はネイキッドスポーツやスクーターなど多くの車種を販売展開していたが、現在では小型~普通2輪クラスのクルーザーモデルに特化して販売を行っている。
そんなヒョースンが新たに2024年秋から日本市場に投入するのが、GV250S-EVO Supreme(シュプリーム=最高)だ。このマシンは同時発売となるGV250Sボバーをベースに、倒立式フロントフォークや灯火類のフルLED化、フル液晶のメーターパネルなどを採用した上位モデルという位置づけとなっている。
エンジンは挟み角60°の248.4cc水冷VツインSOHC8バルブで、最高出力は18.8kw(25.6PS)、最大トルクは20N・m(2.04kgf・m)を発生する。ちなみにこのエンジン、少し前に発売されたGV250DRAスポーツクルーザーに搭載された空油冷DOHC8バルブ75°のVツインとは別物で、従来からラインナップされていたGV300Sボバーのエンジンをストロークダウンしたものだ。実はフレームも基本的にGV300Sボバーと共通であり、タイヤサイズや燃料タンク容量なども同一となっている。
もちろん相違点もある。ハンドルバーはGV300Sボバーがフラットに近い形状だったのに対して、GV250S-EVOシュプリームはミニエイプ的な、高さのあるものになっている。ステップの位置も300に比べて250は10cmほど前に出されており、どっしりと座るポジションに近い。また、250ではシート前端が延長され、300にあったタンクとシートの隙間がなくなっている。全体的に、ボバースタイル色の強かった300に比べ、250はよりオーソドックスなスタイルで、クルーザーというより昔ながらの“アメリカン”と呼びたくなるようなデザインといえる。しかし単なる懐古趣味にとどまらず、LED灯火やフロントの倒立サスなどの現代的なアイテムも備えており、懐かしさと新しさを絶妙に取り入れた、バランスのいい存在感を放っている。
実車を目の前にすると、ロー&ロングな車体は250ccとは思えない迫力がある。しかし実際にまたがると、710mmという低いシート高とスリムな車体もあって、見かけよりはかなりコンパクトな印象だ。シートに座ると高めのハンドル位置もあって殿様乗りでもない、かと言ってもちろん前傾でもない、リラックスできる自然なポジションだ。個人的にはもう少し手前にグリップが来てくれるとよりしっくり来るのだが、そのあたりはハンドルライザーを入れるなどすれば問題ないだろう。車格としてはホンダのレブル250と同等か少し小さいぐらいで、車両重量もほぼ同じなので、小柄な女性などでも不安なく乗れるフレンドリーさがある。
エンジンをかけると、アイドリング時の排気音は軽めでストトトト……とリズミカルに音を刻む。以前試乗したGV300Sボバーがハーレー的な不規則リズムを響かせていたのに対して、かなり静かで優等生的なサウンドとなっている。
走り出すと、低速ではしっとりとしたハンドリングで安定感がある。Vツイン独得のパルス感はあまり強くはないが、スムーズに回るエンジンは振動も少なく扱いやすいため、混雑する街中で乗っていても疲れにくい。郊外に出て、存分にスロットルを開けられるようになると、気持ちよく軽快な走りが楽しめる。右手のグリップをひねればひねる分だけ、それに比例してダイレクトにグイッとパワーが上がっていく感覚は、Vツインというよりモーターのようなフィーリングで、伝統的なアメリカンタイプの見かけからは想像できないほどスポーティで力強い乗り味だ。
コーナーリングは苦手なのかと思いきや、フロントの倒立サスがもたらす剛性感の高さと、硬めながらしっかりとねばるリアサス、それにレブル250よりも65mm短い1425mmというホイールベースのおかげで、ワインディングでもヒョイヒョイと軽快にコーナーをクリアすることができる。バンク角も意外と深く、すぐにステップが擦ってしまうこともないので、走らせて楽しい仕上がりになっている。
もちろん250ccクラスなので、勾配のきつい登りでは物足りないこともあるし、高速道路では大型マシンのような追い越し加速を見せてくれるわけでもない。しかし、普通のペースで街中を流したり、ツーリングでクルージングする分には必要にして十分。通勤や通学に使ってもストレスが少なく、ロングツーリングも気負わずに連れ出せるという、フレキシブルでオールマイティなマシンだと感じた。何より、このクラスでは貴重なVツインエンジンを積み、車検のない軽2輪クルーザーとしての存在感は、他に代えがたい魅力がある。他人とかぶらない個性的なマシンに乗りたい人におすすめなのはもちろん、カスタムベースとしても面白そうなGV250S-EVOシュプリームは、さまざまな楽しみ方のできる懐の深い1台と言えるだろう。
スタンダードモデルのGV250Sボバーはメーカーがレトロヘッドランプと呼ぶハロゲン球だが、上位モデルとなるGV250S-EVOシュプリームはすべての灯火類にLEDを採用している。
ティアドロップ形のフル液晶メーターはシュプリームの専用装備。アナログ風に表示されるタコメーターがユニークだ。
左側ハンドルスイッチはウインカーとホーン、ヘッドライト上下切り替えのほか、ハザードとパッシングを備える。
右側のハンドルスイッチはキルスイッチ兼用のスターターボタンのみとシンプル。グリップは樽型を採用している。
メーターの右下側にはUSBタイプのアクセサリーソケットを備えている。
水冷2気筒SOHC8バルブ60°V型のエンジンは、GV300Sと同じボア径で、ストロークを変更して248.4ccとしている。中央にオーバル型のエアクリーナーボックスを装備。
ラジエターはフレームの前部に収まり、スリムな車体デザインを邪魔しないつくりだ。エキパイのガードとともに独得の造形美を見せる。
シリンダー左側のケースにはホーンが配されており、側面にはGVの由来である「GrandVoyage」の文字が刻まれている。
シートはタンデム部分が小さいガンファイタータイプで、ダイヤカットが施されたスタイリッシュなものとなっている。
ステップはGV300に比べて10cmほど前寄りにセットされている。カバー類も文字が刻まれた凝ったものとなっている。
41mm径の倒立式フロントフォークはシュプリームの専用装備だ。ブレーキは270mm径のディスクに4POTキャリパーを備えている。タイヤサイズは120/80-16だ。
リアのタイヤサイズは150/80-15で、TIMSUN製を履く。ブレーキのディスク径は250mm。前後ともにABSを備えている。
リアサスはツインショックタイプで、プリロードを5段階に調整可能だ。
リア周りはショートフェンダーに小さめのテールランプ、細長いウインカーの組み合わせでシャープな印象となっている。灯火類はLEDを採用。
ライダーの身長は170cmで足は短め。GV250S-EVOシュプリームのシート高は710mmで、両足、片足ともにべったりと地面につくため不安は全くない。
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