【ヤマハ トレーサー9GT+ 試乗記】独自の進化を続けさらなる極みへ

掲載日:2024年07月23日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA TRACER9 GT+

パワフルかつ扱いやすいエンジン、地面に吸い付くような足まわり、そして数々の電子デバイスなど、ヤマハ トレーサー9GT+は、スポーツツーリングを高次元で楽しむのに最適な一台だ。

電子デバイスを贅沢に装備し、
より快適かつ安全なツーリングをもたらす

クロスプレーン機構を取り入れたヤマハの並列三気筒エンジンを搭載するトレーサー9GT+は、高い運動性能と、快適な乗り味を高い次元で両立させているスーパーツーリングモデルだ。

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旧モデルにあたるトレーサー9GTをベースに、ヤマハ車では初採用となるミリ波レーダーを活用したアダプティブクルーズコントロールやブレーキ力をアシストする新型ユニファイドブレーキシステム、さらに第三世代クイックシフターやナビ機能にも対応するスマートフォン連動可能の7インチ高輝度TFTメーターなどなど、最新の電子デバイスがふんだんに用いられているのだ。

歴代トレーサーモデルは元々素性が良く、タフなスポーツツアラーとして高い人気を誇ってきたが、最新モデルのトレーサー9GT+は、より安全かつ快適なツーリングをもたらしてくれ、それはまさしくグランツーリスモモデルの新時代を感じさせる出来栄えとなっている。

ヤマハ トレーサー9GT+ 特徴

アドベンチャー? クロスオーバー?
いや、これはグランツーリスモである!

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初代トレーサーモデルが登場したのは2015年のこと。先行リリースされていたMT-09の派生モデルとしてMT-09トレーサーという名前でデビューを果たした。ワイドなバーハンドル、ストローク量やダンパー特性などを専用セッティングとした前後サスペンション、燃料タンク容量の増大や防風性能を高めたカウルやスクリーンなど、ややアドベンチャーモデル風の味付けがなされたMT-09トレーサーは、瞬く間にスターダムを駆け上がった。

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2018年にはトレーサー900と名称を変更したほか、より装備を拡充した”GT”グレードが追加される。2021年には新型エンジン、新型フレームとなったトレーサー9GTへと進化(海外市場ではスタンダードなトレーサー9が販売されている国もある)。そして2023年、現行モデルであり今回テストを行うトレーサー9GT+が登場したという流れとなっている。

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アドベンチャーセグメントが地球規模でのブームとなったこともあるが、各メーカーが参入したことで更なる細分化がなされてきた。その中でも大きく二種類に分けられ、特に未舗装路走破性能を高めたオフロード志向を強くしたものと一方はスーパーバイクさながらのオンロード性能を持たせながらもアップライトなポジションや多少の未舗装路なら分け入っていけるクロスオーバーモデルというパターンなのだが、実はトレーサー9GT+はそれらとも少々異なる進化を遂げてきていると私は考えている。

それは名前が示すようにグランツーリスモ(GT)というセグメントを追求しているように思えるのだ。そもそも「大きな旅=グランド・ツーリング」を語源とすることもあり、より速く、より遠くへ、快適に移動するというのがグランツーリスモの使命である。

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それがひと昔前のグランツーリスモでは、もっとオンロードスポーツ的な要素が高かったものだが(例えば高い位置にセットしてあってもセパハンであったり、スクリーンではなくカウルそのものが大きかったりだ)、トレーサー9GT+では、アドベンチャーやクロスオーバーの要素を上手く取り入れつつ、グランツーリスモモデルに昇華しているのである。

ヤマハ トレーサー9GT+ 試乗インプレッション

高速道路、峠道、雨天であっても、
いつも楽しく走れる完全パッケージ

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初代モデルであるMT-09トレーサーが好きで、これまでに歴代トレーサーに触れてきた。そこで感じていたのは、スポーツライディングを楽しむための運動性能はそのままに、ロングツーリングでの快適性を上手く引き上げてきたということだった。特に初代モデルのころはMT-09と近しいキャラクターに思えていたが、最近ではお互いの立ち位置が明確となり、それぞれ素晴らしいモデルとなっている。だから現行モデルでありアダプティブクルーズコントロールをはじめ電子デバイスが満載となったトレーサー9GT+に乗ることをとても楽しみにしていた。

トレーサー9GTからトレーサー9GT+になってもスタイリング的には大きな違いは無いものの、フロントマスクの中央にミリ波レーダーが備わっていたり、イルミネーションライトを装備する新型ハンドルスイッチなどディテールでのフィーチャーポイントがある。

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エンジンを始動するとクロスプレーントリプルエンジン特有のサウンドが響き渡る。操作感の軽いクラッチレバーを操作して走り出す。押し引きの取り回しではやや重いかと感じていた車体が嘘のように軽い動きを見せる。傍から見ると大柄に見えるが、実際に走らせてみるとコンパクトで扱いやすいライディングポジションとなっていることが分かる。第三世代となったクイックシフターによるギアチェンジもスムーズ。これはとても快適な乗り物だ。

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トラックなどが多い幹線道路を抜けて高速道路を使う。フロントスクリーンの形状が良く防風性能も高い、その上手動で上下移動が可能なので、高い位置にセットすれば不快な走行風をほどんど防ぐことができる。トレーサー9GT+がヤマハ車初採用となったアダプティブクルーズコントロールを使ってみる。走行車線で前を走るクルマを追従するのは本当に楽ちんであり一度使うと手放せなくなる装備。全回転域でパワフルな出力特性なので軽いスロットルワークだけで追い越しも容易。

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ワインディングロードに持ち込むとこれがまた良かった。前後サスペンションのストローク量が大きく良く動いてくれる。かといってボヨンボヨンするのではなく、速度域に従ってコシの強さを変えてくる。高速コーナーでは粘るような引き締まった走りを、低速コーナーでは一気にフルバンクまで持っていけるような軽い動きを楽しめるのである。シートの形状やクッション性も良く、長時間乗車でもお尻が痛くなるようなことがない。

1週間に渡るテストライディング中には地域によっては警報が発令されていたような土砂降りの雨の中を100キロ近く走るようなこともあったが、ライディングモードをレインにセットしておけば何ら不安無く走り抜けることができた。

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もはや褒めるところだらけとなってしまったほどの完成度にむしろこの先どのように進化させるのだろうかと、いらぬ不安感を覚えてしまうトレーサー9GT+は現代におけるグランツーリスモモデルの真骨頂と呼べるような一台に仕上がっていた。強いて言えばパニアケースが標準装備であるとなお嬉しい。

ヤマハ トレーサー9GT+ 詳細写真

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888ccDOCH並列3気筒エンジンを搭載。ボアストロークを78×62mmとしたショートストロークタイプで、11.5:1と高圧縮比。最高出力は120馬力、最大トルクは93Nmとする。全回転域で扱いやすいエンジンだ。

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鋳造でありながら鍛造ホイールに匹敵する強度と靭性のバランスを実現するヤマハ独自開発のスピンフォージドホイールを採用。ミリ波レーダーやIMUと連携し、ブレーキ量のアシストやサスペンションの減衰力も自動調整される。

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縦横ねじれ剛性のバランスを最適化した軽量フレームと、それに合わせて設計開発されたロングスイングアームを組み合わせる。タイヤは前後ともブリヂストンと共同開発した専用タイヤ。

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MT-09、XSR900系と同じく、むき出しになった内臓のようなデザインのサイレンサーを採用。スタイリング的なポイントとなっていることはもとより、車体下部で纏めることでマスの集中化に貢献している。

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スクリーンは大型で防風性能に優れている上に工具不要で上下に移動させることができる。トレーサー9GT+ではフロントマスクの中央に新たにミリ波レーダーが備わっている。

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新たに採用された7インチTFTメーターは、スマートフォンとも連動することができ、専用の二輪ナビアプリ(有償)を使用すればナビゲーション画面をメーターに表示させることも可能だ。

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イルミネーションライトを装備する新型スイッチボックス。多数のボタンが備わっているが、アダプティブクルーズコントロールのセットをはじめ直感的に操作することができた。

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右側のスイッチボックスはシンプルで、セルスタート及びキルスイッチ、ハザードスイッチ、ライディングモード切り替えなどで構成される。ハンドガードは標準装備となっている。

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ヌバックレザー風の表皮材を使用したシート。クッション材の見直しにより、長時間乗車でもより一層疲れにくくなっている。シート高は820/835mmで調整することができる。

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第三世代となるクイックシフターが採用されている。シフトアップ/ダウン両方向でクラッチレバー操作を必要とせず、シフトチェンジのタッチも良い。ステップのセット位置はややスポーティな印象。

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電子制御サスペンションをリンクを介してスイングアームにセットしている。プリロード調整は手動式。リアタイヤの接地感がライダーに伝わりやすく、ウエット路面などでも安心して走ることができた。

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グラブバー兼リアキャリアはタンデムシートとフラットな面となっており荷物の積載がしやすい。独自の防振技術を応用し、サイドケースの振動を減衰するダンパー内蔵取付け用ステーも装備している。

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タンデムシート下には標準装備となっているETC車載器が収められているほか、+αのユーティリティスペースが確保されている。車載工具も多少だが備わっている。

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燃料タンク容量は18Lと十分。有機的な形状で、内ももとのフィット感も良かった。カラーバリエーションは、写真のシルバーのほかにグレーが用意されている。

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