【ロイヤルエンフィールド スクラム411 試乗記】歴史と伝統を持つブランドが放つ、初めてのストリートスクランブラー

掲載日:2022年12月15日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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Royal Enfield Scram411

イギリス発祥で現在はインドに生産拠点を置くオートバイブランド、ロイヤルエンフィールド。そして2022年秋に日本市場に導入されたのが同社初のスクランブラーモデル「Scram411(スクラム411)」だ。はたしてどんな魅力と実力を持ったマシンなのか、実際に試乗して確かめてみた。

ロイヤルエンフィールド スクラム411 特徴

兄弟車「ヒマラヤ」がベース
フロント19インチ化でより軽快に

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ロイヤルエンフィールドはイギリス発祥の2輪メーカーで創業は1901年。現在は拠点をインドに置き、商用車大手であるアイシャーグループの一員となり、グローバルモデルを手がける企業へと成長している。日本国内においてはまだ知名度はそれほど高くないものの、近年はディーラーも増え、車両のラインナップも充実。250cc~750ccという中間排気量クラスのロードモデルを中心に、勢いを感じさせるブランドとなっている。

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そんなロイヤルエンフィールドが2022年秋に販売を開始したのが、今回試乗したスクラム411だ。これは市街地での軽快な走りとラフロードでの高い走破性を持つスポーティでマルチな高性能ストリートスクランブラーで、同社としては新しい「アドベンチャー・クロスオーバー」というカテゴリーのモデルだ。

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ベースとなっているのは、一足先に日本で発売され話題となったアドベンチャーモデル「Himalayan(ヒマラヤ)」で、搭載する空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブのLS-410エンジンは、最高出力17.9kW(24.3PS)/6,500rpm、最大トルク32Nm/4,250rpmというスペックも含めて同じで、フレームも共通となっている。大きく違うのはホイールサイズだ。リアに関しては同じ17インチで共通だが、フロントはオフロード走行を重視したヒマラヤが21インチなのに対し、スクラム411は19インチを採用し、よりストリートライディングを意識したものとなっている。あわせてヒマラヤにあったフューエルタンクのガードや大きなウインドスクリーン、リアキャリアなどのアドベンチャーモデルらしい装備を取り去って、よりシンプルな車体構成としている。その結果、重量はヒマラヤより5kg軽い194kgとなり、シート高も5mm低い795mmとすることで、街中での扱いやすさを向上させている。

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ロイヤルエンフィールド スクラム411 試乗インプレッション

昔ながらのバイクを思い起こさせる
「自分で操る楽しさ」を持つマシン

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スクラム411の実車は、目の前にするとけっこうコンパクトで扱いやすい印象だ。しかし、スタンドを払い、ハンドルを持って押し歩き、取り回してみると、フレームやスイングアームがスチール製なこともあり、ずっしりとした重さを感じる。エンジンをかけると、ビッグシングルらしい鼓動感をともなった、重厚で厚みのある排気音が響き渡る。若干メカノイズが混じり、始動間もなくエンジンが冷えているときは不等爆発っぽくなることもあり、まるでビンテージバイクのような味わいだ。

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走り出すと、厚めの低中速トルクのおかげか、心地よい鼓動感とともに力強くマシンが押し出されていく。40~60km/hぐらいで一般道を流して走ると「自分は今、バイクに乗っているぞ!」という感覚がどっと押し寄せてきて、最高に気持ちがいい。自分が操っている、と強く感じさせてくれるマシンに乗ることは、褒め上手な人の話を聞いているようで、心地よく、楽しいものだ。ただ、少々クセがあると感じた点もある。ライディングポジションは自然でリラックスできるものだが、乗車感覚は独特だ。少し試乗した編集担当者は「前後が重い」と表現したが、フタコブラクダのコブの真ん中に乗っているかのごとく、谷間に座っているような感覚がある。それが直接関係あるかは不明だが、混雑路などで低速で走る際、決して安定感がないわけではないが、ハンドルが敏感に左右に振れ過ぎてニュルニュルとした挙動になることがあった。また、フロント19インチというタイヤサイズのためか、細かい道での曲がり角などは立ちが強く、思った通りにスムーズに曲がるにはちょっとした慣れが必要だと感じた。

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誤解のないように言っておきたいのだが、これは決してネガティブな意味ではない。最近の国産車に代表される現代のマシンが素直で優秀過ぎるだけなのだ。スクラム411はABSとインジェクションこそ装備しているが、ライディングを助ける電子デバイスは搭載しておらず、バイクとしてはかなりプリミティブな存在だ。それだけに、うまく乗るにはちょっとしたコツも必要だし、少々クセの強いマシンに分類されるかもしれない。ただ、それゆえにマシンに慣れて自在に乗りこなせるようになったときの喜びは大きく、愛情も深くなるはずだ。

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昔のバイクがそうだったように、マシンと対話しながら徐々に互いの信頼を深め、仲良くなっていく。そんな関係を築ける稀有な存在かもしれない。そして一旦慣れればオフロードに連れ出してもかなり遊べるし、ツーリングの相棒としてもいかんなく実力を発揮してくれるだろう。なかなか懐の深い、長く付き合える相棒になり得ると思う。

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軽くもなく、高性能というわけでもない。おまけに411ccという排気量のため、大型免許が必要だ。しかし、乗っているうちに自然と笑顔になり「バイクに乗るってこういうことだよな!」「乗ってるだけで楽しい!」と原点を思い出させてくれる。電子制御盛り盛りのバイクに「乗せられる」のが嫌な人、他人とは違う個性的なバイクに乗りたい人、青春時代に乗ったシンプルなバイクをもう一度味わいたい中高年ライダー、独特のデザインにピンと来た若者などなど、スクラム411は多くの人の心に響く1台と言えそうだ。

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ロイヤルエンフィールド スクラム411 詳細写真

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ヘッドライトは昔ながらのハロゲン。赤っぽい光りが逆に存在感を増し、エモい面もある。ウインカーもバルブタイプだ。

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メーターは丸い一眼タイプでシンプル。アナログの速度表示の中心に、燃料計やギアポジション、時計などが表示できる液晶部を配している。

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左側のハンドルスイッチは標準的なもの。前側にはパッシングスイッチを備える。グリップエンドは長めだ。

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ハンドル右側にはスターター/キルスイッチとホーンボタンのほか、ハザードスイッチが配される。

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右ハンドルスイッチボックスの前側には、トリップメーターの切り替えやリセット、時計の設定を行う「i」ボタンがある。

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空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ411ccのエンジンは24.3PSを発生。ラフロードの走行も考慮しているためか、アルミ製のアンダーガードも装備している。

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フレーム左側には縦型のオイルクーラーを装備している。

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シートは一体型だが段が付けられ、お尻をしっかりとホールドしてくれる。ヒマラヤはキャリアが標準装着だったが、スクラム411はグラブバーとなっている。

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シートはサイドにキーを挿して回せば簡単に外せる仕組み。バッテリーやヒューズに簡単にアクセスでき、書類入れや車載工具も備える。

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シート下に収納されている車載工具。なかなかの充実ぶりだ。

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ステップやシフトレバーはかなりしっかりとした作りで、ラバーも装着されている。

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タンデムステップにもラバーが装着されている。本体のほかホルダー部も剛性感が高い。

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リアサスはボトムリンク式のモノショックタイプを採用。プリロード調整機構も備えている。

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ブレーキはバイブレ製、フロントのディスク径は300mmでABSを備える。タイヤサイズは100/90-19、銘柄はCEATのGripp XLを履く。

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リアブレーキのディスク径は240mmで、タイヤサイズは120/90-17。フロント同様ABSを備える。マフラーは歯切れのいい、鼓動感のある排気音を奏でる。

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シンプルなデザインのテール/ブレーキランプはLEDを採用。ウインカーはバルブタイプだ。

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テスターは身長170cmで足は短め。スクラム411のシート高は795mm、片足だと母指球までしっかり接地。両足ではつま先が接地する。

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