掲載日:2022年11月22日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/伊井 覚
KAWASAKI KLX230SM
オフロードモデルのKLX230Sに17インチホイール、オンロードタイヤを装着し、サスペンションセッティングを変更したモデルがKLX230SMだ。かつてのDトラッカーがそうだったように、オンロードバイクとオフロードバイクの中間的な立ち位置にあり、オン/オフどちらも遊べるバイクという点で、とてもターゲットの広いモデルだ。Dトラッカー全盛期に比べてモタードブームは下火になっているとはいえ、代わりにオフロードに密かなブームが始まっており、汎用性の高いKLX230SMには大きな注目が集まっていることだろう。ここではKLX230Sとの違いにも着目してインプレッションをお届けしたい。
まず一番最初に注目したいのは、ライトカウルだ。KLX230Sのライトカウルは、ともすれば少々無骨な印象を与えてしまいがちなデザインで、重量も課題とされていた。対して今回登場したKLX230SMのライトカウルはスマートかつ軽量。モタードらしい少し短めのフロントフェンダーと合わせて、全体のスタイルを引き締めている。
そしてKLX230譲りのフラットなシートも見た目のスマートさに大きく貢献している。それでいてシート高は845mmで、かつてのDトラッカーよりも15mm低くなっているのだから驚きだ。次に目が行くのはフロントサスペンションだ。KLX230Sでは正立フォークだったが、SMでは倒立フォークを採用していて、ただホイールを変えてオンロードタイヤを履かせただけのモデルではないことが伺える。
カラーは現在のところ、このエボニーのみ。カウルだけでなくフレームやエンジンもブラックに塗装されており、ゴールドリムを採用し、アクセントとしている。なお、車両価格は57万2000円で、KLX230Sよりも7万円ほど高くなっているが、納得の仕上がりと言えるだろう。
では肝心の乗り心地はどうか。エンジンはKLX230Sと違いは感じなかった。同じ232ccの空冷4ストローク単気筒で、ボア×ストローク、最高出力や最大トルクも同様。軽やかに心地よく回る。高速道路に乗ると90km巡航までは気持ちよく加速してくれて巡航できるが、100kmになると少しエンジンが頑張りすぎてる感じがして、振動が気になり始める。とはいえこのバイクのメインは街乗りやワインディングの面白さなので、これでいい。高速道路はあくまで移動手段だと割り切るべきだろう。
次にサスペンション。SHOWA製の倒立フォークを採用しているだけあってフロント周りはかなりしっかりしている。フロントフォークのホイールトラベルは204mmで、オフロードモデルながら158mmのKLX230Sに比べるとかなり延長されているが、沈みすぎたり動きすぎたりする感覚はなく、実に適度。少々オーバースペックとすら思える300mmの大径フロントブレーキディスクを採用していて、ブレーキの制動力がかなり高いのだが、試しにフロントブレーキだけ使って急制動してみても、フロントフォークがしっかり受け止めてくれた。
加えて、これはKLX230Sも同様なのだが、恐ろしく細身なのだ。おかげでシート高の数値よりも足つきが良く感じるし、緩いコーナーが連続するようなシーンではステップ荷重でヒラヒラとマシンを寝かせて走れるのが気持ちいい。オフロードモデルと変わらない136kgという重量も影響しているのだろう。
さらに、しっかりバイクを寝かせてイン側の足を前に出し外足荷重でモタードっぽく曲がっていきたい少しアールのキツいコーナーでは、マシンのセンターだけでなくシュラウド部分まで恐ろしく細いので足が出しやすいことが大きなメリットに感じた。空冷エンジンのため、ラジエーターが不要なのも要因の一つだろう。
純正タイヤはIRCのRX-01を採用。なお、リアタイヤのホイールサイズがかなり特殊で120/70-17。このサイズに合うタイヤの選択肢はかなり狭い。もし高性能なラジアルタイヤを履きたい場合は、ダンロップのSPORTMAX Q5やα14のフロントタイヤに同サイズがあるので、それを使うのが良いだろう。Dトラッカーももちろん良いマシンだったが、それよりもさらにライトな印象を受けるマシンに仕上がっていた。
LEDヘッドライトを採用し、ヘッドライトカウルは前後長を短く、スマートな仕上がりに。ハンドル周りの軽量化にも大きく貢献している。オフロードモデルへも採用される可能性が高いと見ている。
エンジンは空冷4ストローク単気筒の232cc。ボア×ストロークは67.0mm×66.0mmのほぼスクエア。最高出力は14kW(19PS)/7,600rpm、最大トルクは19Nm/6,100rpm。低中回転域から豊かなトルクを生み出してくれる。
メーターは軽量コンパクトで速度、時刻、燃料、走行距離などを表示。情報量よりも実用性重視と言っていいだろう。撮影に使用したレンタル車両には後付けETCが装着されていたが、標準はETCなし。
ハンドルバーは一般的なφ22.2mmのバーハンドルで、ミラー、スイッチ類も実にシンプル。オプションでファットタイプのハンドルバーやバーパッドも用意されている。
燃料タンクは7.4L。ラジエーターがないことも影響し、シュラウドまでスリムな設計で、足を前方に出す際にも自由度が高い。
シート高は845mm。オフロードモデルのKLX230が発表された当初から、足つきよりも走る楽しさを優先させているというコンセプトは受け継がれている。それでもシャーシが非常にスリムなため、足つき性は数値以上に良い。
フロントホイールは110/70-17、純正タイヤはIRCのRX-01。フロントブレーキディスクは300mmの大径ディスクを備えていて、安心感は抜群。
リヤホイールは120/70-17。250ccでも140幅のリアタイヤが多い昨今ではタイヤの選択肢が狭まるが、フロントタイヤをリヤに履かせることで解決できそうだ。
レンタル車にはオプションのリヤキャリアとETCが装着されていたが、標準装備ではない。スタイルを崩さずに積載性能を確保できるため、オススメのオプションの一つ。
ステップにはラバーが標準装備されていて、ブーツのソールを痛めないようになっている。なお、取り外すことでグリップを増すことも可能。
フロントサスペンションはSHOWAの倒立フォークを採用し、インナーチューブ径は37mmでホイールトラベルは204mm。KLX230Sとの一番の違いは、ここだろう。
リアショックはニューユニトラックサスペンション。ホイールトラベルは168mmで、プリロード調整が可能。荷物を積載したり、タンデムする時は硬くしたり、調整してみるといいだろう。
サイレンサーは実に優等生。カスタムして軽量かつ厚みのある低速サウンドのものに変えても面白そうだ。個人的にはタンデムステップももう少しスタイル重視のものに変更するか、タンデムしないのならば撤去もアリだ。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!