【ヤマハ XSR700 試乗記】チマチマした日本の峠道が、最高に楽しめるミドルパラレルツイン

掲載日:2022年09月21日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/富樫 秀明

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YAMAHA XSR700

細部の熟成を図りつつも
基本的にはキープコンセプト

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近年のネオクラシックブームに対応するモデルとして、ヤマハは2016年にXSR900とXSR700(ただし日本市場にXSR700が導入されたのは2017年から)、2019年にXSR155、2021年にXSR125の発売を開始した。同社の分類では“スポーツヘリテージ”となるこの4機種は、いずれもスポーツネイキッドのMTシリーズをベースとしているものの、生い立ちと変遷は各車各様である。

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まずクラシックな外観に加えて、ワイドなアップハンドル+高めのシートを採用したことは、各車の初代に共通する要素だ。ただし、MTシリーズと同様の資質を維持するXSR700/155/125に対して、XSR900はMT-09とは異なるキャラクターを構築していた。具体的な話をするなら、ヤンチャでアグレッシブな初期のMT-09と比較すると、XSR900はフレンドリーな特性だったのだ。

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そしてXSR900と700は2022年型で仕様変更を受けたのだが、ここでも方向性は各車各様である。XSR900が第3世代のMT-09の改革を継承する形で、新作フレーム+エンジンや多種多様な電子制御などを導入し、往年のカフェレーサーを彷彿とさせる斬新なルックスを採用したのとは異なり、XSR700は細部の熟成を図りつつも、基本的にはキープコンセプト。ちなみに2台の2022年型の価格は、XSR900が従来型+14万8500円の121万円で、XSR700は従来型+1万8700円の93万5000円である。

ヤマハ XSR700 特徴

主要部品はMT-07と共通だが
ライポジと車格はやや大柄

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ヤマハのプレスリリースに記された、2022年型XSR700の特徴は以下の5点。①エンジンの平成32年排出ガス規制適合、②快適性とスポーツ性能を兼ね備えた新タイヤの採用とフロントブレーキディスクの大径化、③灯火類のLED化、④反転LCDメーター採用、⑤往年のヤマハスポーツバイクを想起させるグラフィック&カラーの採用。劇的に進化したXSR900と比較すると、何となく寂しい内容だが、現行MT-07の主要部品が初代から変わってない(ルックスやライポジは大きく変わったが)ことを考えれば、XSR700の変更点が少ないのは当然だろう。

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なおエンジン+シャシーを共有するXSR700とMT-07のスペックを見比べて、わかりやすい差異を感じるのは車格である。2022年型の全幅/全高/軸間距離/シート高は、MT-07:780/1105/1400/805mm、XSR700:820/1130/1405/835mmで、従来型と同様にXSR700のほうがやや大柄なのだ。とはいえ、2021年型で第3世代に移行したMT-07は、第2世代以前と比較すると燃料タンクカバー周辺がボリューミーになっているので、車格に関する2台の距離は少し縮まった気がしないでもない。

ヤマハ XSR700 試乗インプレッション

乗り手を優しく導いてくれる
相変わらずのコーナリング性能

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あぁ、優しい乗り味がそのままでよかった……。今回の試乗で2022年型XSR700を初めて体験した僕は、しみじみそう思った。その理由を説明する前に、従来のMT-07とXSR700に対する個人的な印象を記しておこう。

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そもそもの話をするなら、2014年に登場したMT-07の初代に僕は感銘を受けたのである。日本のチマチマした峠道がここまで楽しめるモデルは、近年では相当に珍しいんじゃないかと。そしてその印象は2017年に乗ったネオクラシックのXSR700も同様で(ただし、ライポジがゆったりしているXSR700は、乗り味がおおらかな印象だった)、当時の僕は先立つモノもないのに、自分の使い方にはどちらが合っているかを真剣に考えていた。

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ところが、2021年に登場した第3世代のMT-07に、僕は疑問を抱いたのだ。サーキットのような良路なら初代より速く走れるけれど(残念ながら、僕は第2世代のMT-07は未体験)、見通しと舗装状況が悪い3ケタ国道や舗装林道などを走っていると、フロントフォークの動きにどうにも違和感があって、初代のような気持ちのいいコーナリングが味わえない。だからプレスリリースに記されていなくても、2022年型XSR700も同様の印象だったらどうしようと、勝手に心配していたのだが……。

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嬉しいことに、XSR700のキャラクターは不変だったのである。いや、タイヤがピレリ・ファントムからミシュラン・ロード5に変更されたおかげで、乗り心地と接地感は向上しているのだけれど、ライダーを優しく導いてくれるかのようなフロントの舵角のつき方や、バンク中の車体の落ち着きは初代と同様。そしてフロントフォークがナチュラルな動きをしてくれるからか、悪路ではコーナリングのリズムが取りやすく、アクセルを開けやすくも感じる。いずれにしても2022年型XSR700に乗った僕は、不思議な安心感に浸ることになった。

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あら、何だか第3世代のMT-07に異論を述べるような展開になってしまったが、業界内でそういう意見の人はごくわずかしかいないので、ヤマハの選択した方向性は間違いではないのだろう。とはいえ、今後の僕がかつてのように、MT-07とXSR700のどちらが自分の使い方に合っているかを考えることは無くなりそうである。

ヤマハ XSR700 詳細写真

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従来型では昔ながらのハロゲンバルブ/白熱球だった灯火類は、すべてLEDに変更された。上下ブラケットの間に位置するフロントフォークカバーとヘッドライトステーも新作だ。

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アルミ製ハンドルはテーパータイプ。従来型ではハンドルクランプ上に設置されていたメーターは、かなり前方に移設。ブレーキ/クラッチレバーはクリア仕上げ→ブラック塗装に変更。

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中央にギアポジション/速度/燃料残量、外周にバーグラフ式タコメーターと各種警告灯を配置する丸形メーターは、従来型の基本構成を踏襲するものの、表示はポジ→ネガに刷新。

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ガソリンタンクカバーは3分割式で、左右パネルはアルミ製。試乗車は1980年代初頭のRZ250/350を思わせるカラーリングを採用している。

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シートはかなり肉厚で、座り心地はなかなか良好。表皮はオーソドックスなレザーとバックスキンタイプの2種類を使い分け、両者の接面にはアクセントとしてダブルステッチを採用。

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ヘッドライトやメーターと韻を踏むかのように、テールランプは丸形を選択している。なおシートレール後端のループ部は、カスタムの自由度を考慮したボルトオン式。

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クロスプレーンコンセプトに基づいて生まれた270度クランクの688ccパラレルツインは、従来型の構成を踏襲している。73psのパワーは従来型と同様だが、最高出力発生回転数は9000→8750rpmに引き下げられた。

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従来型のエキパイの集合部がクランクケース下部だったのに対して、新型はクランクケース前部。スイングアームピボット下部には、消音用の巨大な膨張室が備わる。

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フロントブレーキディスクは外径を282→290mmに拡大すると同時に、形状をウェーブ→ラウンドタイプに変更。従来型と同じフロントキャリパーは、ADVICSの対向式4ピストン。

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スチール製スイングアームは左右非対称で、ホイールサイズはF:3.50×17/R:5.50×17。従来型ではピレリ・ファントムだったタイヤは、現行MT-07と共通のミシュラン・パイロットロード5に変更された。

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リンク式リアサスペンションは、ショックユニットをかなり前傾させて配置。なお前後ショックユニットのセッティングは従来型と同様で、現行MT-07よりは柔らかめ。

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リアブレーキディスクも形状をウェーブ→ラウンドタイプに改めているが、245mmの外径は不変。キャリパーは従来型と同じく、ニッシン製片押し式1ピストン。

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