【スズキ GSX-S1000 試乗記】過激な走りはそのままに、さらに懐を深く

掲載日:2021年12月27日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI GSX-S1000

スズキのフラッグシップスーパーバイクであるGSX-R1000の心臓部を用いたストリートファイター、GSX-S1000。2016年に登場した初代は大ヒットしベストセラーとなった。そして2021年に後継となる新GSX-S1000が生み出された。

ガラリと印象を変えた新型GSX-S1000
電子デバイスを武器にさらなる進化を遂げた

2015年にデビューした初代GSX-S1000は、その流麗なスタイリングとGSX-R1000譲りのハイパワー、扱いやすいライディングポジションなどが世界中のスポーツバイクファンに支持され、瞬く間に大ヒットモデルとなった。それから約6年の時が経ち、今年2代目となる新型GSX-S1000が登場した。柔らかみのあるボディラインが特徴だった先代とは違い、新型はエッジが立たされたシャープなラインとされており、より精悍な印象へと昇華している。すべて刷新された中でも注目なのは、ライドバイワイヤスロットルをはじめとした電子デバイスの採用だろう。今回はその新型GSX-S1000に実際に試乗することで感触を確かめてゆく。

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スズキ GSX-S1000 特徴

贅肉をそぎ落とし搾り上げた
究極のストリートファイター

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2000年代初頭から2010年ごろに掛けて、バイクメーカー各社がこぞって市場に投入した、いわゆるストリートファイターモデル。心臓部にフラッグシップスーパーバイク系エンジンを使用し、バーハンドルのネイキッドスタイルに落とし込むことで、ストリートでの機動性を引き上げた。一時はストリートファイターブーム的な時代もあったが、それはいったん落ち着いたように見えていた2015年、スズキは新たなストリートファイターモデル、GSX-S1000をマーケットに投入した。

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他メーカーの熱が落ち着いていた中ということも要因の一つではあるが、何よりもパワフルで扱いやすく、他と一線を画すスタイリングで一躍スターダムにのし上がった。ちなみにハーフカウルモデルのGSX-S1000Fも同時に発売され、合わせてヒットモデルとなっていた。そして2021年待望の後継モデルが登場した。

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新型GSX-S1000は、まずスタイリングからしてまったくイメージが変化している。ヘキサゴン(六角)LEDヘッドライトにはじまり、メーターから左右にセットされた触角のようなウインカー、エッジの効いたサイドパネルなどで、従来モデルとは異なる印象を抱かせてくれる。エンジンは名機と名高いK5、K6系GSX-R1000のものをリチューニングしており、今回新たに採用された電子制御システムS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)との相乗効果でさらにアグレッシブな走りを幅広いライダーが楽しむことができるセッティングとなっている。

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私自身、先代GSX-S1000のバランスの良さと鍛え抜かれた走りのファンだったこともあり、新型の完成度に発表当初から興味を抱いていた。

スズキ GSX-S1000 試乗インプレッション

スーパーバイク直系のポテンシャルを
ストリートで垣間見ることができる

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初めて実車を目の前にしたとき、同じGSX-S1000という名称でありながらも、まったくの別物ぶりに驚かされた。先代はどちらかと言うと筋肉の塊と言ったようなたくましさを感じさせるスタイリングだったのに対し、良い意味でスマートになった印象を受けた。車両に跨るとライディングポジションこそほとんど変化を感じるものではなかったが、多岐に渡りインフォメーションを表示するフル液晶ディスプレイやそれを中心に左右に配置されたウインカーなどで”新型感”が伝わってきた。

スターターボタンを軽くワンプッシュするだけで始動するスズキイージースタートシステムで、エンジンを目覚めさせる。アイドリングの太く低いサウンドが心地よく感じられる。程よく温まってきたところでギアを一速に入れクラッチを繋ぐと、スロットルを開けずとも優しく車体は前へと進みだした。低回転域から多大なトルクを発生させるセッティングということもあるが、それに加えローRPMアシスト機能を装備している恩恵もある。

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3種類のライディングモードから選ぶことができるスズキドライブモードセレクターは、当初一番シャープなスロットルレスポンスであるA(アクティブ)モードにセットされていた。12月も中盤に入り路面温度もかなり低いため、気を付けながら市街地を抜けてゆく。なおB(ベーシック)モード、C(コンフォート)モードすべて最高出力値は変わらない。クラッチレバー操作を行わずともシフトアップ/ダウンができるシフトアシスト機能は2000回転から使えるので、ライディングをイージーに、そして集中することができる。

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各部が温まってきたことを見計らい、高速道路へとステージを変える。低速走行では少々気になる時があったフロントフォークのピッチングがスッと消え、タイヤが路面に吸い付くような走りを楽しむことができる。ゆっくり流すようなシーンではイージーだが、ちょっと気合を入れてスポーツをしようとすると、強烈なパンチ力でライダーを振り落とそうとしてくる。スーパーカー的な乗り味であり、これはとても面白い。

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テスト車両と共に過ごした1週間、様々な所に走りに出かけた。そこでは先代モデルで私が感じていた強烈なほどパワフルでありながらも扱いやすいスポーツバイクというキャラクターはそのままに、少々残されていた気難しさが払拭されたという感触を得ることができた。例えば低回転で高いギアに入れるような少々意地悪な走らせ方をした際、従来モデルではギクシャクするような場面があったのだが、新型では何もなかったかのように許容してくれる。超高速域となると、腕に覚えのあるエキスパートライダーでないと存分に楽しむことは難しいのは当たり前ではあるのだが一般道ではNGの話。一方で低速域では誰しも手足のように扱うことができるバランスの良さが、さらに高められているので、こちらの方がポイントが高い。先代GSX-S1000は、そのバランスの良さや俊敏さからジムカーナで使用されるケースも多くみられた。きっと新型もジムカーナで活躍する場面を見られることだろう。

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最高にエキサイティングで楽しい新型GSX-S1000だったのだが、一点だけ気になったことがあった。それは販売価格だ。新型は適正価格、いやむしろお買い得ではあるのだが、先代が驚くほどコストパフォーマンスが高かったことの反動となってしまい「随分値上がりしたなあ……」と思ってしまった。後フォロー的にはなってしまうが、それだけの進化もしっかりと感じられるものに仕上がっていた。

スズキ GSX-S1000 詳細写真

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搭載する998cc水冷4気筒4ストロークDOHCエンジンはK5、K6型のGSX-R1000に使われていたものがベースとなっている。吸排気カムをリセッティングすることでエンジン全回転域に渡るパフォーマンスとコントロール性を両立しつつ最高出力を向上、さらには排出ガスも低減させた。

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フロントサスペンションにはφ43mmフルアジャスタブルタイプKYB製倒立フォークを採用。ストローク量は120mm。持ち前のパフォーマンスを発揮するため、そして自身が乗りやすくするために、適宜調整を試して欲しい。

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従来モデルのフェイスマスクが割とボリューミーな印象だったのに対し、新型GSX-S1000の顔つきはコンパクトなヘキサゴンLEDライトを縦に2灯セットし精悍なものとなった。なお、S1000Fの設定は無く、GSX-S1000GTというモデルが欧州で発表されている。

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フル液晶ディスプレイにはスピード、回転計、トリップメーターなどの一般的なインフォメーションの他、ラップタイムモードや平均/瞬間燃費計、SDMSモードなど、様々な情報が表示される。なおトラクションコントロールレベルとシフトポジションが上下に配置されているのが気になった。

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ライディングモードをはじめ、各種の設定は左側のスイッチボックスで行うことができる。取扱説明書などを確認せずとも、直感的に操作することができた。なおハンドルはテーパータイプで、振動軽減のためフローティングマウントされている。

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ステップ位置は割と高いものの、GSX-R1000と比べれば足の曲がりは緩やかであり窮屈感はない。シフトアシストは、2000回転以上でクラッチレバー操作をせずともシフトアップ/ダウンを行うことができる。

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シートはスポーツモデルとしては厚みがあり、クッション性も良好。それでいながらグリップ力のある表皮を採用しているため、車体をホールドしやすい。長時間乗車となるロングツーリングも苦にはならないだろう。

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エキゾーストシステムは令和2年国内排ガス規制に対応しつつ、コンパクトに纏めることでマスの集中化を図っている。サウンドも入念にチューニングされており、心地よい排気音を楽しめる。タイヤは専用設計となるダンロップ・スポーツマックス ロードスポーツ2を採用する。

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シートカウル内に備えられたテールランプと、ナンバーホルダーステーにセットされたウインカーにより、テールセクションからもコンパクトでスポーティな印象を受ける。

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フューエルタンク容量は19Lとされている。前後長が短く、着座位置とハンドル位置が近いために、車体をコントロールしやすい。ボディカラーは、写真のブルーの他、グレーとブラックの設定が用意された。

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パッセンジャーシート下にはユーティリティスペースが設けられている。ETC車載器+αの荷物を収納できそうだ。車載工具にはリアサスペンションのプリロードアジャスターツールも含まれている。

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リアサスペンションはリンクを介してスイングアームにセットされている。動きも良く、リアタイヤの接地感やトラクション感のインフォメーションも良い。一般道ではプリロードを緩めにセットすると乗りやすい。

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