【MVアグスタ F3 800 試乗記】3気筒800ccならではの楽しさ! 見かけによらず扱いやすいスーパースポーツだ

掲載日:2020年06月08日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/MVアグスタジャパン 衣装協力/KUSHITANI 取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/星野 耕作 

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MV AGUSTA F3 800

MVアグスタから2020年型の「F3 800」が発売された。見た目は変わっていないが電子制御の進化により、さらに扱いやすくなったという。3気筒800ccという独自の哲学を持ったスーパースポーツの魅力を探ってみた。

動画 『やさしいバイク解説:MVアグスタ F3 800』はコチラ

MVアグスタ F3 800 特徴

ストリートでスポーツできるF3として誕生

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MVアグスタF3は3気筒エンジンを搭載する新たなシリーズとして2013年に登場。4気筒エンジンを搭載した従来のF4がフラッグシップ的な立ち位置とすると、F3はミドルレンジを担うモデルとして3気筒675cc版が最初にデビュー。続く2015年にストロークを延長して798ccに拡大したF3 800がラインナップに加わった。WSSなどのレースレギュレーションに適合したF3 675に対し、F3 800は純粋にストリートでライディングを楽しむためのモデルとして位置付けられている。

「1,000ccクラスの高揚感と600ccクラスの軽快感。2気筒のトルクと4気筒の加速力」が魅力で、148psのパワーと173kgの軽量な車体、先進の電子デバイスの組み合わせにより、クラスの垣根を越えたエキサイティングなライディングが楽しめる。

2020モデルは電制を中心にアップグレード

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エンジンは水冷並列3気筒DOHC4バルブ798ccで、これをスチールトレリス構造とアルミプレートを組み合わせたMVアグスタ独自のコンポジットフレームに搭載。慣性力の影響を低減しコーナリング性能を高める逆回転クランクの他、ライドバイワイヤによる4種類(スポーツ/ノーマル/レイン/カスタム)のライディングモード、8段階設定のトラクションコントロールを搭載する。

2015年モデルでABSシステムの改良やLEDテールライトを採用。2017年にはエンジン内部パーツを全面的に見直し信頼性を向上。ユーロ4適合とともにアップ&ダウン対応のクイックシフターを新たに装備した。また、エンジンハンガー改良による縦剛性の強化やマフラーの改良による出力特性とサウンドの向上、前後ホイールとロワーカウル形状の変更など大幅なリファインを受けている。

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そして、最新の2020モデルは各部をブラッシュアップし、騒音を軽減しながらもMV AGUSTAらしいサウンドを強調。アップ&ダウン対応のクイックシフターもEAS2.1タイプにアップグレードされるなど着実な進化を遂げた。

MVアグスタ F3 800 試乗インプレッション

逆回転クランクの長所はそのままに乗りやすく

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見た目的には従来と変わらない2020年モデルだが、主に電子制御系が改良され、より繊細にコントロールされているようだ。具体的にはアップ&ダウン対応のクイックシフターが最新システムになりシフトフィールがよりスムーズになっている。

F3の一番の特徴と言えばエンジンだ。3気筒でしかも逆回転クランクを採用している。高速で回転する重量物であるクランクは、通常だと加速中にフロントアップする方向に慣性力が働くが、F3の場合はそれを抑えて効果的にリアタイヤにトラクションがかかるように設計されているとか。また、スロットルを戻したときにエンブレがあまりかからないのも特徴で、2スト的な乗り味に近いと言われている。ただ、今回それはあまり感じられなかった。以前、F3 675のデビュー当時に試乗したときはエンブレが明らかに弱く、まさに2スト的な乗り味であり、それが良くも悪くもあったのだが、最新の800cc版では普通の4気筒のようなフィーリングに近かった。もしかしたら、年々少しずつ熟成されて良い塩梅に落ち着いてきたのかもしれない。

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最初に出た675に比べ、800ではストロークが長くなったことでトルクが厚くなり、特に低中速域が扱いやすくなっている。たしかに675のほうがレーサー的なピーキーな乗り味で、高回転まで回して楽しめる部分はあるが、ストリートでの使い勝手を考えると排気量に勝る800のほうが余裕もあって楽しめるかも。

意外にも骨太な回転フィール

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2気筒と4気筒のいいとこどり、とよく言われる3気筒だが、F3はまさに2気筒の鼓動感と4気筒の上昇感を兼ね備えている。低中速にパンチがあって、高回転は4気筒並みに伸びていく。800ccという排気量も絶妙だ。いわゆるアッパーミドルクラスになるが、たとえば追い越しや登りなどで600ccだともう少し欲しいときでもプラスαの余裕があるし、逆に1,000ccだと扱い切れないところを800ccだと手の内感がある。気筒数と排気量が織りなす妙である。意外だったのは回転フィールで、F3の3気筒はモーターのようではなく、わりとゴリゴリしていて骨太な感じ。ややノイジーではあるが、良く言えば路面をつかむ感じ。トラクションに優れると言ってもいいだろう。良い悪いではなく、そういうキャラなのだ。

見かけによらずハンドリングはしっとり系

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ライディングポジションはセパハンでレーサーレプリカ的だが、見た目ほど前傾度もきつくなく、830mmのシート高も3気筒ならではの車体のスリムさにより足着きも良好。加えて乾燥重量170kg台の軽さにも助けられ、取り回しも400cc並みに楽だ。1,380mmという超ショートホイールベースもしかり。スリム&コンパクトでマスが集中した、スーパースポーツとしてのひとつの理想形と言っていい。エンジン自体も4気筒に比べるとコンパクトで軽いなど、3気筒ならではのメリットが集約されているのもF3の魅力だ。

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一方で、見た目からしてハンドリングは凄く俊敏なのかと思いきや、けっこうまったりした部分もあって、街中で乗っていても気分がいい。低速でフラっと倒れすぎたり、ヒヤッとするような“イヤな軽さ”ではなく、意外にしっとりしているのだ。特にフロントの接地感が豊富で、マシンに急かされることなく自分が狙ったとおりのラインが描ける。そのちょっとした間(ま)が嬉しい。このフォルムとデザインにして、そうきたか!「ストリートで楽しめるスーパースポーツ」というコンセプトどおりの乗り味に仕上がっていると思う。

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もちろん、ポテンシャルとしては最高出力も150ps近くあるし、アクセルを全開にすればそれについてくる車体と足まわりもあって、サーキットを走れば楽しいこと請け合いだが、街乗りやツーリングでも十分楽しめるマシンである。

MVアグスタ F3 800 詳細写真

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F3 675の水冷並列3気筒DOHC 4バルブエンジンのストローク量を45.9mmから54.3mmに延長して排気量を798ccへ拡大。最高出力108kW(148ps)/13,000rpm、最大トルク88Nm(8.97kgm)/10,600rpmを発揮。カセット式6速ミッションとスリッパークラッチを装備する。

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ブレンボ製4ピストン・ラジアルマウントモノブロックキャリパー&320mmダブルディスクを採用。ボッシュ製ABSとともにハードブレーキング時にリアの持ち上がりを抑制するRLMを装備するなど安全性も確保。

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形状は異なるもののF4同様のアルミ製片持ち式スイングアームを採用。スチールトレリスフレームとアルミプレートをエンジンと締結した車体構造もF4譲り。

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リアブレーキにはブレンボ製2ピストンキャリパー&220mmディスクを採用。センターロック式のレーシーなリアホイールは2017モデルから新デザインに刷新されている。

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リアサスペンションはSACHS製のサブタンク付きフルアジャスタブルシングルショックを採用。ノーマルセッティングでも作動感はしなやかだ。

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F4と瓜二つのフロントマスク。全体的にスリムだが、菱形のヘッドライト形状やその下に設けられたエアダクト、バックミラーにビルトインされたウインカーなども共通イメージ。

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マルゾッキ製φ43mmフルアジャスタブル倒立フォークを採用。フォークトップにプリロードとダンパー調整機構(右が伸び側、左が圧側)を備えるため、クイックなセッティングが可能だ。

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スリムでシャープなラインが印象的なシートまわり。特に前部はとてもスリムなので足を真下に下ろせて足着きも良好だ。タンデム用のリアシートもちゃんとある。車体色と同じで一体感を演出。

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高級感漂うアルミ製ステップ&ホルダー。ローレットか刻まれたバーやアルミ製のヒールプレートがレーシーだ。繊細なデザインだが剛性感もしっかりある。アップ&ダウン対応のクイックシフターを標準装備。

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コンパクトなデジタル液晶ディスプレイ。右上にギアポジション、その下にライディングモードやトラクションコントロールレベルを表示する。新車で保護フィルムが貼ってあるためやや不明瞭だが、実際の画面はもちろんクリアだ。

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【MVアグスタ F3 800 試乗記】 3気筒800ccならではの楽しさ! 見かけによらず扱いやすいスーパースポーツだ21画像

シンプルなグリップまわり。スタータースイッチは走行中にはエンジンマップ切り換え用として機能する。

【MVアグスタ F3 800 試乗記】 3気筒800ccならではの楽しさ! 見かけによらず扱いやすいスーパースポーツだ22画像の試乗インプレッション

3気筒をアピールする本国オリジナルの3本出しマフラーがクール。4輪のF1のようなサウンドが気持ちいい!

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