掲載日:2019年07月23日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/小松 男 写真/伊勢 悟
KAWASAKI Z250
日本において250ccバイクというのは、とても重要なマーケットとなっている。それは、満十六歳を迎えた後取得することができる普通自動二輪免許区分で乗ることができるうえ、車検制度が適用されず、それでいながら二人乗りや高速道路を使うこともできる最大の排気量となるからだ。昨今では他国が定める区分に沿って作られるグローバルモデルも増えてきているが、日本という土壌において、250ccバイクというのは、とても大きな役割を担っていることに違いはない。そんな250ccバイクは、スポーツモデル、デュアルパーパス、スクーターなど様々なセグメントがあるが、フルカウルを持たないいわゆるネイキッドスポーツというジャンルは根強い人気だ。そこで今回は250ネイキッドスポーツの雄、カワサキ Z250をフューチャーすることにした。
世の中的に大型バイクブームの流れが続き、250ccバイクといえばビッグスクーターが代名詞となっていた2000年代後半、カワサキが市場に送り込んだNinja250Rは一気に250スポーツバイクブームを巻き起こすことになる。80年代のレプリカブームに乗って生み出された高性能エンジンを搭載した数々の250ccスポーツバイクを経験した者にとっては、並列2気筒4ストロークエンジンのスペックは物足りなく感じる物であったが、2ストロークバイクを知らない若年ライダー層が飛びついたことを発端に、一気にマーケットは拡大を見せた。
そのヒットに乗じて国内4メーカーをはじめ世界各国の二輪車ブランドが250スポーツモデルを導入するほどになった。2013年には、よりシャープでスーパースポーツ然としたスタイリングを纏った新型Ninja250が登場する。それと同時に登場したのがNinja250をベースとしながらネイキッドスポーツバイクとしたZ250だ。フルカウルを省き、バーハンドル化されたZ250は、スポーツライディングを楽しめるベーシックモデルとして人気を博すこととなった。
2008年に登場した初代、2013年に登場した二代目と立て続けに大ヒットとなったNinja250に、フルモデルチェンジが施され3代目となったのが2018年のこと。それから約一年遅れる形で、2代目となる現行型Z250がリリースされた。基本的なコンポーネンツは現行型Ninja250と共通としているものの、足まわりを中心にリセッティングされている。
まずスタイリングだが、初代モデルのデザインを踏襲しながらもカワサキが進める"Sugomi"デザインによってさらに精悍でアグレッシブな印象を持つようになった。具体的には新設計LEDヘッドライトからスリムでありつつも大きな盛り上がりを見せる燃料タンクへかけてのラインがより一層強調され、一目でカワサキのスーパーネイキッドだとわかる個性が与えられた。
ただ従来モデルでも、いまだに十分通用する"新しさ"を感じさせるスタイリングなので、最終的には好みによって選べばいいということになるだろう。それよりも今回のモデルチェンジではエンジンやシャシーなどの内部に大きく手が加えれらているので、その部分について調べていきたい。
大型スポーツモデルでは採用されることが多くなったものの、250ccクラスではまだあまり見られないダウンドラフト構造の吸気ラインを取り入れている。これにより、スロットルワークに対する反応が向上したほか、燃焼効率も上がり、最高出力は従来モデル比6馬力アップの37馬力という、想像を超えた数値をたたき出している。
その一方で、フレームもまた新設計とされている。高出力を受け止めるために剛性力の最適化を行ったほか、エンジンブロックをフレームの一部として使うことによって、スリムなシャシーとすることができ、なおかつ従来モデルと比べ車両重量は6kg軽量化され164kgとしている。これらの事実から伝わってくるのは、運動性能が飛躍的に向上したということだ。一気にスパルタンなマシンに昇華したのかを期待しつつ、Z250を走らせ始めた。
出だしのトルクこそシングルエンジンのような軽やかさは無いものの、充分な押し出し感を備えていつつ、高回転域での伸びやかなパワーフィールは特筆すべきものである。ただ見た目から受ける印象のようなアグレッシブで扱えないキャラクターではなく、どのようなシーンでスポーツライドを行っても受け入れてくれるキャパシティが向上したというものに思える。
足まわりの動きからタイヤの接地感、そしてトラクションの掛かり具合いに至るまで余裕があるのだ。これはZ400と車体を共通としているということにも所以している。ポジションに関しても、シートの上で果敢に荷重移動するような乗り方をせず、ドシっと腰を下ろして乗ることができるのでとても安楽。
強烈にスポーティなバイクをイメージして乗ると、やや肩透かしを食らう感は否めないが、街乗りでもツーリングでも、どこでも臨機応変にスポーツランを楽しめる懐の深さを持っているし、その点に関しては従来モデルを踏襲しているといえ、トータルでのパフォーマンスが引き上げられたということなのだ。