【ニンジャH2 SX SE】スーパーチャージャーを手なづける。これはもはや進化型H2だ

掲載日:2018年05月31日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一  動画/倉田昌幸  衣装協力/HYOD

カワサキ ニンジャ H2 SX SE 試乗インプレッション

重量級最速マシンの王道
これはもはや進化型H2だ

ニンジャH2 SX SE(以下SE)を見ていると、だいぶ落ち着いた雰囲気になったと思う。見るからに凶暴そうで、バットマンの乗り物のようだったH2に比べると、ジェントルにさえ見えてくる。もちろん、エネルギー感ほとばしる大柄でマッシブなフォルムや迫力のあるフェイスからは只者ではないオーラが伝わってはくるが、SEはフルカウルの2人乗り仕様となり、サイレンサーも常識的なサイズに小型化されるなど、全体的に洗練されて正統的な感じになったのだ。別の言い方をすればスポーツツアラーとしての機能美を追求したデザインと言っていいだろう。

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの試乗インプレッション

ライポジは大柄ではあるが、H2に比べると程よく上体が起きて、シートも広いうえに厚みも増すなどより快適になっている。ステップ位置はやや高めな印象だ。フルカウルに高さのある大型スクリーンが装備されたことで、それほど伏せなくても走行風をプロテクトしてくれる設計だ。

H2との大きな違いはエンジンだ。バランス型スーパーチャージドエンジンと呼ばれているが、要は改良された新型エンジンと言ってもいい。圧縮比を上げて燃焼効率を高めつつ、一方で加給圧を下げることで日常域での扱いやすさを出している。フルブーストのH2が見せる炸裂するような加速感も捨てがたいが、それも毎回だと疲れてしまう。その点、SEはブーストの切り替わりがマイルドで、しかもスロットル操作に対してタイムラグがない。自然吸気と変わらない自然なフィーリングなのだ。

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの試乗インプレッション

特にパワーモードを出力50%の「LO」にセットしておくと、街乗りでもまったく普通に乗れる穏やかさで、スロットル開閉に対するギクシャクもほとんどない。前後サスペンションも減衰力は効いているが、しっとりスムーズな動きで乗り心地も良い。それを「FULL」にすると、アクセルのレスポンスも俊敏になり加速も断然鋭くなる。特に6000rpm辺りからの加速はジェット戦闘機がアフターバーナーを焚いて超音速に突入していくような凄まじさだ。

TFTディスプレイにはブースト計も装備されているので、どこでどれだけ過給しているのか一目瞭然なのだが、なかなかチラ見できる余裕もない。サウンドも独特で、スーパーチャージャー作動時に高鳴る「ヒューン」という吸気音と直4エンジンの重低音、そして、スロットルを閉じたときにブローオフバルブが一時的に過給圧を抜く「ピュルルル」という音が奏でる三重奏の不思議なハーモニーに酔いしれる。

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの試乗インプレッション

ハンドリングは超高速ツアラーらしい安定感に満ちている。SEの260㎏の車重はH2に対して20㎏以上も重く、その分どっしりとした乗り味であることは疑いようもないが、それが高速クルーズでの安心感や快適性にもプラスになっていることも事実。ロングスイングアーム化によるホイールベース延長効果も奏功しているのだろう。加速・減速時の車体姿勢の変化も穏やかだ。今回ワインディングは走っていないため、コーナリング性能云々は語れないが、高速道路のレーンチェンジなどでの切れ味は予想以上で、マスが集中した凝縮感のあるハンドリングは感じ取れた。きっとスケールの大きなワインディングなどでは豪快な走りを披露してくれるはずだ。ただ、一方で取りまわしなどはさすがに重さを感じるし、街中を軽快に乗り回す感じではないが、それはマシンの性格上当たり前のことと割り切りたい。

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの試乗インプレッション

電子制御の進化にも驚かされた。最新のボッシュ製IMU(慣性計測装置)に統制された高精度なトラコンやコーナリングABSは、それが介入していることがほとんど分からないほど自然で、インジケーターの光の点滅だけが「あなたの運転をサポート中ですよ!」と知らせてくれる。200ps+スーパーチャージャーのパフォーマンスを陰で支える、縁の下の力持ちといったところだろう。

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの試乗インプレッション

クルーズコントロールもスイッチが大きくて操作しやすいし、SEだけの装備であるアップ&ダウンシフターもペダル操作に曖昧さがなく軽くスムーズに入ってくれる。同じく特別装備のコーナリングライトもトンネル内でレーンチェンジする程度でもちゃんと作動することが確認できた。TFTメーターやシート、外装類などのディテールの仕上がりも高級感があり、純正オプションのパニアケースとの一体感のあるフォルムも専用設計ならではだ。ちなみにパニアは装着していることをつい忘れるほど自然なハンドリングだったことも付け加えておきたい。

誤解を恐れずに言わせていただければ、ニンジャH2 SX SEは日常での扱いやすさや長距離ツーリングでの快適性を含むトータル性能を底上げした進化型H2なのだ。重量級最速マシンのカテゴリーで長年王道を走り続けてきたカワサキが丹精込めて作り上げた、まさに頂上モデルの気迫が伝わってくる出来栄えである。

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの試乗インプレッション

カワサキ ニンジャ H2 SX SEの詳細写真は次ページにて

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