掲載日:2018年04月06日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/Husqvarna Japan 取材・文/伊丹 孝裕 写真/Husqvarna Japan
またがると見た目のスパルタンさとは裏腹に前傾姿勢の度合いは常識的だ。ワインディングを丸一日走り回っても疲労は少なく、取り回しやUターンも楽に行えた。830mmのシート高だけは万人向けとは言えないものの、この数値は国産スーパースポーツとほぼ同等でもある。ゆえに170cm程度の身長があれば両足のツマ先は接地し、なによりスリムなため極低速域でもプレッシャーはまったくない。
それをサポートしてくれてるのが穏やかな出力特性だ。エンジンを始動させると周囲に響く、パンチの効いた弾けるような排気音に気難しさを感じつつもクラッチ操作はイージーそのもの。バランサーが組み込まれた4バルブOHC単気筒はアイドリング付近から充分なフレキシビリティを発揮し、ストップ&ゴーもストレスなくこなすことができる。実用上、数少ないリクエストがクラッチレバーの長さにあった。ストリートバイクにしては短いレバーが装備されているため、4本掛けや3本掛けでレバーを操作するライダーには違和感が残るところ。オフロードモデルにはよく見られる設定で、このあたりにメーカーの出自や得意分野を感じさせる。
その他はストリートバイクとしてもオンロードバイクとしても極めて上質だ。エンジンはφ105mmに達するビッグボアをまったく感じさせることなく爽快に回り、9,000rpm超で作動するレブリミッターまでスムーズに到達。特に120km/h~130km/h近辺で巡航した時の心地よさはいい意味でビッグシングルらしくない。そこにあるのは全身を震わせるような「ガツンガツン」とした振動ではなく、優しく体を包んでくれるような「コロコロ」とした鼓動だ。それは2気筒にも4気筒にもなく、他の単気筒にもない、ヴィットピレン701だけのまろやかな世界である。
また、ハンドリングにもそのイメージを覆す軽い裏切りがあった。軽量なスポーツシングルと聞けば否が応にも俊敏な動きを連想するが、このモデルはいたずらにそれを追求していない。コーナーへ向かって車体をターンインさせる時のレスポンスは早すぎず遅すぎず、手応えもまた軽すぎも重すぎもしない絶妙なもの。スーパースポーツのように積極的に体重を移動したり、バンク角を意識しなくともナチュラルに旋回していく、流れるようなコーナリングシークエンスが与えられていた。
その一方で、単気筒の醍醐味がしっかり残されているのがコーナー立ち上がりだ。スロットルを開ければ「タタタンッ」という小気味いいトラクションが明確に感じられ、ギアのアップにもダウンにも対応してくれるオートシフターを駆使することでいつでも望んだ通りの鋭い加速を得ることができる。
シンプルにして最新のコンポーネントを持つヴィットピレン701には、ライディングプレジャーのほとんどすべてが詰まっている。今や希少とも言えるビッグシングルをオンロードで楽しめることの意義は大きく、日本へ上陸を果たすこの夏を楽しみに待ちたい。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!