掲載日:2017年08月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
カラーリングも顔つきもRSV4とそっくりで、ちょっと見ただけでは区別が難しい。逆に言えば、トゥオーノはそれほどまでにRSV4直系であることをアピールしていると言える。
エンジンをかけると聞き覚えのあるV4サウンド。RSV4よりひと際図太くややこもった感じだ。軽いクラッチをつなぐと、まず出足がスムーズなことに気づく。これはまさに排気量アップしたエンジンの恩恵だ。水冷65度バンクのV4レイアウトこそRSV4と共通だが、排気量が1,077ccに上乗せされてより低い回転数で大きなトルクを発生するキャラクターが与えられている。加えてミッションも4-6速がハイギアード設定になっているため、ツーリングなどでは回転数を抑えて楽に走れるし、2次減速は逆にショート設定で加速型になっているためスタートダッシュも俊敏というわけだ。
スロットルを開けていったときの弾けるような加速感はV4ならではだが、溢れんばかりの中速トルクの“塊感”はトゥオーノが上回る。エンジンが変わったことで、高回転で伸びてくるRSV4とはキャラクターの作り分けがより明確になったと思う。
電子制御もRSV4と同じ第4世代のAPRCへと進化した。2017年モデルからフル電制化されたスロットルはとてもスムーズで、初期の電制スロットルにありがちだったタイムラグやギクシャク感もなく、右手の動きにじつにリニアに応答する。3種類のエンジンマップに合わせて出力特性とエンジンブレーキ特性が自動的に設定されるが、どのモードでもスムーズさは変わらずにエンジンのレスポンスだけが変化するイメージ。街乗りでは最も穏やかな「スポーツ」モードが気持ちいい。
RSV4と比べると前傾が緩く、比較的上半身が起きているため、見通しが良く腰や首への負担が少ないなど、ストリートでの使い勝手も悪くない。ベースがRSV4なのでハンドル切れ角は十分とは言えないが、低中速トルクがあるためUターンなど小回りもニガテというほどではない。シート高は825mmと、RSV4の840mmに比べるとやや低め。前後サスペンションも初期荷重での沈み込みを多くとったストローク感のあるセッティングため、足着きもだいぶ良いと思う。
ブレンボ製の最新ブレーキシステムと大径化されたブレーキディスクによる制動力は強烈で、フルブレーキングでは前転しそうな勢いだが、そこも電子制御が後輪のリフトを絶妙に抑えてくれるし、コーナリングABSが新たに採用されて路面の悪いカーブなどでは安心感が一段とアップした。もちろん試す気にはなれないが、もしフルバンクで急ブレーキをかけざるを得ない局面では、最後の砦になるはずだ。
また、新型ではクイックシフターがダウン側も対応してくれる。つまり半クラやブリッピングで回転数を合わせていく必要がないため、コーナー手前での操作が格段に楽になり、その分落ち着いて速度コントロールなどに集中できるようになった。
ハンドリングはRSV4譲りで俊敏かつ軽快。ライディングポジションと関係していると思うが、フロント分布荷重が少なめな印象で、RSV4よりもヒラヒラと乗れる。一方で車体も少し大柄となり、ホイールベースも長い感じがあり、ゆったりと乗れる安定感も持ち合わせている。エンジンも中速に厚く、ライダーも楽に乗れるだろう。
クラス最強のパワーに軽い車体、SS同等の足まわりなど、まさにRSV4のイメージとパフォーマンスをネイキッドの車体に詰め込んだモデルだ。サーキット性能を優先しつつもたまにはスポーツツーリングを楽しみたい、街中でもクールなイタリアンデザインとV4サウンドに酔いしれたいという人には、是非おすすめしたい。