
掲載日:2017年05月29日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
スタイリングはGSX-Rの流れを汲む、正統派スポーツの血統を感じさせるもの。均整がとれていてスマートだし、奇をてらった感じもなく安心感のあるデザインだ。跨ってみると、シートまわりがスリムで足着きもいい。ハンドルはやや低めだが、ライダーに近いので上体の前傾は緩め。シートに厚みがありサスペンションもソフトなので乗り心地も良く快適だ。
高速道路ではやはりフルカウルの効果は大きく、軽く伏せれば走行風をヘルメット越しに受け流すことができる。GSR250の派生モデルだったSやFの大型スクリーンには負けるが、十分なプロテクション効果といえる。ちなみに途中で小雨に降られることもあったが、肩とヒザが少し濡れる程度で済んだ。
エンジンはGSR250ベースではあるが、ちょっと印象が異なる。GSRはたしかに穏やかで扱いやすくスムーズな吹け上がりが魅力だったが、このGSX250Rはもう少し骨太でパルス感があり、加速のノリも良い。エンジン自体にかなり手が入っているし、マフラーの構造が見直させているところは大きい。言わばメーカーチューニングが施されたような感じだ。車重がだいぶ軽くなっていることも効いているはず。GSRと比較試乗したわけではないが、その違いは明らかだと思う。
ロングストロークエンジンのメリットは発進時にも生きている。低中速に厚いハイトルクエンジンゆえに、クラッチのつなぎにも気を遣わずに済むし、ハンドル切れ角の大きさとも相まってUターンなどもしやすい。同クラスのライバルに比べても圧倒的に低い回転数で同等レベルの最大トルクを発生するキャラは、ストップ&ゴーの多い街乗りでの余裕にもつながっている。
ハンドリングは安定志向だ。重心が低く路面に張り付くような安定感があり、ワンクラス上の排気量モデルのようなどっしりとした乗り味だ。その一方で、レーンチェンジや切り返しなどはやや粘りがある感じ。落ち着きのあるハンドリングとも言えるだろう。
何故なら車体の作りがそうなっている。ディメンションを見てもそれは明らかで、同クラスのライバルに比べてもホイールベースやトレール量が長く、直進安定性重視の傾向が見て取れる。そこはおそらく狙って作っているのだろう。サーキットでタイムを削るのが目的ではなく、あくまでも日常域での安心感と扱いやすさを重視した結果ととれる。
あらためて車体をしげしげと見まわしてみると、全体的なシルエットのまとまりの良さに加えて、フルLCDの多機能メーターやペタルタイプの前後ディスク、軽快なホイールデザインなどにも上質感がありディテールの仕上げにも抜かりがない。
その上、燃費が良くてプライスも格段にお得となれば、コスパ的にも申し分ないと思う。性能絶対主義からイチ抜けし、見た目のカッコ良さとトルクに乗った余裕の走りにフォーカスしたスポーティバイク。日常の中でライディングを楽しめるモデルと言える。そう、GSX250Rはライバルとは違う立ち位置で勝負に出てきたのだ。その意味でも注目に値すると思う。
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