
掲載日:2017年04月27日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐賀山敏行 写真/井上 演
VFR800Xのシート高は、815mmと835mmの2段階に調整することができる。足つきに不安があっても低い方にセットすれば、ストローク量の大きい前後サスペンションも相まって不安は軽減される。ちなみにリアサスペンションの硬さも簡単に調整できるので、どうしても不安があるなら、柔らかくすればさらに沈み込みは大きくなる。
ハンドルバーは高めで幅広、ステップ位置は低めに設定されている。上半身はほぼ直立するが、スクリーンを高く設定することができるので、高速道路でも風圧が不快に感じることはなさそうだ。長距離ライディングへの期待が膨らむ。
まずは高速道路。エンジンはトルクフルで低速からストレスなく加速する。V型4気筒エンジンは直列4気筒ほどスムーズに回転が上昇していくものではなく、かといってVツインや単気筒ほどの振動はない。まさに「心地よい」といった表現がぴったりの鼓動感だ。適度にエンジンの存在を感じながら、高速道路を快適にクルージングできる。予想通りスクリーンの効果も絶大で、法定速度限界まで走っても上半身にはほとんど風が当たらない。ETCが標準装備されているのも高ポイントだ。
ひとつ気になる点があるとすれば、シートがやや硬かった。1時間以上連続して走り続けるとお尻が痛くなってしまった。それを合図に休憩してもよいのだが、ツアラーである以上は、もうちょっと長めに走りたいところである。
ワインディングは申し分なし! スポーツツアラーのVFR800Fと多くの部品を共有するだけあって、高速コーナーからヘアピンまで、安定して走ることができた。上半身が立っている分、安心感やコントロール性の高さはVFR800F以上といえる。日本のような狭い道が多いところでは、最高のパフォーマンスを発揮してくれる。
トルクフルなエンジンもワインディング向きで、しっかり減速したあとの加速はもたつきがなく、キビキビとした走りが楽しめる。狙い通りのラインをしっかりトレースすることもできるので、自分の腕が数ランク上がったような錯覚を覚えるほど! 800ccクラスの「重さ」を感じることはなかった。
意外と楽しく走ることができたのが市街地だ。前方が絞り込まれたシートを低い位置にしておけば、それほど足つきは悪くなく、ストレスのないライディングポジションも相まって、ストップ&ゴーで苦痛は感じない。むしろ信号待ちからの加速が楽しい。メーターの視認性や配置もよく、グリップヒーターのレベルや燃費、時計など、多くの必要な情報が瞬時に認識できる。細かい点だが、メーターの情報が読みづらいと、意外と大きなストレスになるので、これは嬉しい。
実際に使用する場合はパニアケースなどを装着するユーザーが多いだろうが、それでも荷掛けフックはもう少し実用性を重視してほしかった。とくに街乗りでは大きなパニアケースは外しておきたいという人も多いだろう。そういうときに実用性の高い荷掛けフックがあれば、利便性はさらに上がると思うのだが……。
今回は高速道路からワインディング、そして市街地と、ツーリングから日常使いで使用するシーンを走ってみた。どのシーンでもVFR800Xは扱いやすく、アドベンチャーモデルに求められる「オールラウンダー」としてのレベルは十分。どこでもその性能をフルに発揮させることができた。
試乗したのは初春で、真冬ほどではないが、なんとなく寒さの残る季節。そんなときは5段階もレベル調整ができるグリップヒーターが重宝した。ウインカーオートキャンセラーも普段使いはもちろんのこと、長時間ライディングで少し疲れているときなどに重宝する機能といえる。
春から夏、そして真冬まで、ワインディングでも市街地でも、いつでもどこでもバイクを楽しみたい……VFR800Xは、そんなライダーを十分に満足させてくれる1台だ。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!