

掲載日:2017年02月08日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川健太郎 写真・動画/山家健一 衣装協力/HYOD
V9ローマーはV9ボバーとエンジンとシャーシを共有する、まさに双子の兄弟である。でも、見た目の印象はだいぶ違っていて、ストリートカスタム系のやんちゃな匂いがするボバーに比べて、ローマーは端正で品のいい感じが漂っている。どちらが良い悪いではなく、テイストの違い。ユーザーにしてみれば好みの問題だろう。
いざ跨ろうと車体を起こしてみると、その軽さに驚く。大きく重いのがクルーザーの常識と思っていたが、同クラスの排気量モデルと比べても軽さが際立っている。ライディングポジションはゆったりとしたクルーザーらしいものだが、ステップが自然な位置にあるため疲れにくい点が良い。V9ボバーに比べるとハンドルが高くワイドで、より上体が起きたアップライトな姿勢となる。フロントが19インチなので車体姿勢そのものが、ややフロントが高いことも影響しているだろう。ちょこんと乗ったメーターもシンプルで、目の前にカウルもバイザーもないので見晴らしがよく気持ちいい。これぞモーターサイクルといった感じだ。
V7シリーズをベースに改良・熟成が進んだエンジンは、排気量が100cc増えてよりパワフルになっているのはもちろん、回転フィーリングがよりスムーズになっているのが印象的だ。元々持っている中速域での分厚いトルクは健在のまま、吹け上がりに軽やかさが増している。ボバーのときにも感じだが、ほぼ新設計となったエンジンは全体的に洗練されて、古いモト・グッツィの空冷縦置きVツイン特有の重ったるさや振動の大きさはほぼ解消されている。シフト操作も滑らかかつ節度感のあるフィーリングとなりクラッチ操作も軽くなるなど、ギアチェンジや発進なのストレスが軽減された点も見逃せない。アクセルオンで車体が右にかしぎ、テールリフトしてくるモト・グッツィ特有のトルクリアクションもほとんど気にならないレベルとなっている。
ハンドリングはとても素直で安定感があるのはボバーと同じだが、大きく異なるのはフロントの操舵感。ボバーが16インチのファットタイヤで「ゴロッ」と転がるように曲がるのに対し、19インチのローマーは車体のバンクにやや遅れて舵角が入ってくる感じ。タイヤが細いので、倒し込みは軽いがステアリングレスポンスは穏やかなのだ。
どちらかというとボバーのほうがスポーティで、ローマーはよりクルーザーらしい“鷹揚”なハンドリングと言えるだろう。いずれにしても、クルーザーのカテゴリーにあって200kgを切る車重は飛びぬけて軽く、それ故に走りは軽快で、取り回しも非常に楽。ハンドル切れ角も十分あってシートも低く、前述したようにクラッチのつながりも良いので、Uターンも苦にならない。
洗練されたエンジンとハンドリングで気楽にゆったりと、ときにスポーティに気持ちよく走る。都会からカントリーロードまで守備範囲の広いスタイリッシュなクルーザーである。
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