

掲載日:2016年10月12日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐賀山敏行 写真/井上 演
シルバーベース440の始動は一般的なバイク同様、セルスイッチを押すだけだが、サイドスタンドを下ろした状態ではギアがニュートラルに入っていても、エンジンはかからないようになっている。そのため、バイクを停めた状態で暖機運転はできない。環境と安全性に配慮したシステムとなっているのだ。ただ、始動はしなくてもセルモーターは回ってしまうので、バッテリー上がりには注意である。
跨ってみると、アップハンドルと前寄りのステップ位置からなるライディングポジションは、上半身が程よく起き上がり、街中から長距離までストレスなく走れそうだ。気になるとすればフューエルタンクの形状で、ニーグリップしようとすると太ももがちょうどタンクの角に当たってしまう。ただしこれは体型や体格にもよるもので、身長174cmのライダーが乗車した際には違和感はなかったとのこと。気になる人は試乗時にチェックをお忘れなく。
前後サスペンションは程よくストロークし、さらにシートも柔らかい。足つき性は良好で、背の低いライダーや女性でも安心できると思う。はじめての大型バイクとして最適な1台と言ってもいい。
シルバーベース440専用の装備やディテールを見てみると、シンプルな正立フロントフォークに19インチのスポークホイールを装備し、メッキフェンダーやフォークブーツも相まって、クラシカルな雰囲気を演出している。リアサスペンションやスイングアームもシンプルな構成だ。
さらに、シルバーベース440で見逃せないのが、フューエルタンクのカラーリングだ。これはかつてのSWMモデルからインスパイアされたもので、ストリートモデルとはいえ、しっかりと同社の情熱が受け継がれていることを表している。
シンプルかつクラシカルな雰囲気を醸し出しつつ、特徴的なフューエルタンクや右側2本出しアップマフラー、フラット形状のダブルシートなどは、かつて日本で一大ムーブメントを巻き起こした「ストリートバイクカスタム」を思い起こすもの。気軽に乗れるスタイリングに、445ccのエンジンがどのような走りをもたらしてくれるのか?
いざ走りはじめると、4ストローク空冷単気筒エンジンは適度な鼓動感があり、アクセル操作に対しても素直にパワーが出てくる。操作感がダイレクトで心地よいのだ。445ccのエンジンから発せられるパワーは必要にして十分。普段はトコトコと鼓動を楽しみつつ、追い越し加速などでアクセルを大きめ開ければ、思い通りの加速を発揮してくれる。400ccよりちょっと大きいだけの排気量なのだが、この「ちょっと」が効いているのだ。
また、排気量は大型クラスだが車体は400クラスとほぼ同じ。当然車体も軽く(乾燥重量148kg)、アップライトなライディングポジションや良好な足つき性も相まって、ストップアンドゴーの多い街中でもストレスなく走らせることができる。
今回はフラットダートも走ってみた。当然、オフロード専用のトレールモデルに比べれば車重も重く、サスペンションも専用ではないため、自由自在に走らせるとは言い難い。しかしツーリングの一環として走るには十分なパフォーマンスを発揮してくれた。シルバーベース440なら、旅の途中でちょっと気になるダートに入る…なんてことが気兼ねなくできるだろう。
適度な車格とパワーによって、のんびりと走るツーリングから毎日の通勤にまで、シーンを選ばずに気軽に走ることができるのがシルバーベース440最大の魅力だと言える。イタリアンバイクは「面白いけれどクセが強い」なんてイメージを持つ人も少なくないと思うが、シルバーベース440はまったく違う。気負うことなく「足」として使うことができる。そう書くと面白味がないと思われるかもしれないが、それもまた違う。445ccの絶妙な排気量から発する鼓動とパワーが、ライダーにストレスを与えることなく、単気筒ならではの楽しさを感じさせてくれる。
飽きることなく長く乗れるバイクが欲しい。そう思っているライダーにとって、要チェックの1台である。
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