

掲載日:2015年11月12日 試乗インプレ・レビュー
レポート/中村 友彦 写真/徳永 茂 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです
国によって事情は異なる気がするけれど、ヤマハが2014年、2015年から販売を開始したYZF-R25/R3で、どちらがメインかと言ったら、それはやっぱりR25だろう。もちろん、僕がそう感じる背景には、251cc以上は車検が必要な日本に暮らしているという事情があるが(R3の排気量は320cc)、R3はあくまでもR25の排気量拡大版で、R25の存在を抜きにしてR3は語れない。そんな印象を僕は抱いているのだ。
ところが、R25/R3のネイキッド仕様であるMT-25/MT-03では、その位置関係が逆転しているように僕には感じられた。何と言ったらいいのか、MTシリーズならではの日常域の楽しさ、兄貴分の07や09に通じる魅力が味わいやすいのは、03のほうではないか、と。もっとも、別に僕がここで甲乙を付ける必要はないのだけれど、ネイキッド化で各車の個性が顕著になったのだろうか、MT-25/MT-03の乗り味はR25/R3以上に別物感が強くなっている。この2台のいずれかの購入を検討している人は、事前に自分の好みや技量をじっくり考えたほうがいいと思う。
さて、初っ端から2台の違いを強調する展開になってしまったが、開発ベースのR25/R3を基準に考えるなら、フルカウルが撤去されて乗車姿勢がアップライトになったMT-25/MT-03には、軽快で親しみやすいという共通の美点が備わっていて、いずれのモデルも市街地走行やツーリングを快適にこなせそうである。とはいえ、僕自身の日常的なバイクライフを考えた場合、スポーツライディングの楽しさを気軽に味わわせてくれるのは、前述したようにMT-03だ。MT-25より約70cc排気量が大きいエンジンを搭載するMT-03は、回転数や速度をほとんど問わずに、スロットルワークで車体姿勢を自在にコントロールすることができ、それがそのまま操る楽しさにつながっている。
兄弟車として開発されたものの、MT-25とMT-03の乗り味は別物。日常域の楽しさなら低中速トルクが充実しているMT-03に軍配が上がるだろう
対するMT-25で同様の感触を得ようとすると、最低でも7,000rpm、できることなら10,000rpm以上は回す必要があって(レッドゾーンは14,000rpmからだ)、逆に言えばそれ以下の回転数では、エンジンの反応が少々もっさりしているし、スロットルワークに対する前後サスペンションの応答もあまり機敏ではないのだが、この特性をどう考えるかは人それぞれだろう。RZ系を筆頭とする往年の250ccスポーツを知る人なら、回してナンボ的なキャラクターを好意的に捉えるかもしれないし、低回転・低速域のちょっとしたもっさり感は、エントリーユーザーには安心材料になるのかもしれない。
ただし僕としては、MTシリーズを名乗るのであれば、MT-25はもう少し低中速域での充実感がほしいと思った。それを本気で実現するためには、前後ショックや吸排気系の見直しなどが必要になりそうな気もするけれど、現状で14/43(この数値はR25に加えて、R3やMT-03とも共通)に設定されている二次減速比を、ちょっとローギヤードな方向に振るだけでも、その乗り味は変わるのではないだろうか。もっともそのあたりは、メーカーの技術者なら百も承知だろうから、現状の二次減速比は単なるコストダウンではなく、キャラクターの差別化を前提に、あえて選択したのかもしれない。
そんなわけで似て非なる乗り味を備えるMT-25/MT-03だが、この2台は現在のアンダー400ネイキッド市場において、かなりの注目を集めるモデルになると思う。僕自身は乗り味が少々腑に落ちなかったものの、MT-25が公表するクラストップの最高出力(R25と同じ36ps)は、速さを追求するライダーにとっては魅力的な要素になるだろうし、スロットルワークで車体姿勢をコントロールする喜びが味わえるMT-03は、兄貴分の07や09にも引けを取らないライディングプレジャーを備えているのだから。僕としては、このままヤマハにはどんどん調子に乗ってもらって、MT-25/MT-03のアドベンチャー仕様やネオクラシック仕様なども作ってほしいところである。
MT-25/MT-03の開発コンセプトは“大都会のチーター”という。機能パーツの大半はYZF-R25/R3からの流用だが、外装部品は専用設計で、MT-25とMT-03の両方に3色のボディカラー(シルバー、ブラック、レッド)がラインナップされている。残念ながら現状では、共にABS仕様の設定はナシ
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