

掲載日:2014年12月24日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/株式会社スズキ二輪 取材・撮影・文/淺倉 恵介
自分はGSR250が好きだ。以前、当サイトでインプレッションを担当し、その時にハンドリングの良さに惚れ込んでしまったのだ。今回、そのGSR250のバリエーションモデルの、ハーフカウルを持つGSR250Sを試乗する機会を得た。今回の試乗は、GSR250の存在を踏まえてのものなので、GSR250のインプレッション を、是非とも併せて読んでもらいたい。
GSR250Sの特徴は、なんと言ってもハーフカウルの装着にあるだろう。まずは見た目。スクリーンが立てられたハーフカウルは、ロードスポーツというよりアルプスローダーやクロスオーバーといった雰囲気を醸し出している。ネイキッドとしてデザインが完成している車体に後からカウルを装着すると、如何にも「後から付けました」というバランスの悪さが出てしまう場合があるが、メーカーが新たにデザインを起こしただけあり、チグハグ感はない。
GSR250は大きく張り出したラジエターのシュラウド(フロントウインカーが取付けられた樹脂製パーツ)が、デザイン上大きなアクセントとなっているのだが、このGSR250Sでもそのボリューム感は維持されている。フルカウルを持つGSR250Fについても同様だ。ちなみに、GSR250Sのフロントウインカーはアッパーカウル上に位置し、GSR250Fではカウルのサイドパネルに設置されている。3車それぞれにウインカー位置が違うのだが、イメージが共通しているのは偶然ではないだろう。スズキのデザイナー陣による、丁寧な仕事の証がここに表れている。
跨がってみると、ライダーとカウルの間にそれなりの距離を感じる。スクリーンはかなり高めで、そんなところもアルプスローダー的だ。これでは走行時に風を巻き込んでしまわないか? との印象を受けたのだが、そんな心配は杞憂に過ぎなかった。ハーフカウルの効果は絶大だ。80km/hも出ていれば、その恩恵を十分に受けることができる。上半身に当たる風を見事にブロックしてくれるので、逆に下半身への風当たりが気になってしまったほどだ。風洞実験を繰り返して決定された形状というだけのことはある。
また、走行中このカウルの効果を証明する、別の要素にも気付いた。高速道路を100km/hほどで走っていた時のことだが、妙にエンジン音が大きく感じられたのだ。排気音ではなく、エンジンノイズである。GSR250では感じなかったことなので、何かエンジンの仕様変更があったのかとも思ったのだが、そうではない。カウルの存在が風切り音を減らしたため、相対的にエンジンノイズが目立ってしまったようなのだ。このハーフカウルは、防風性だけでなく静粛性もかなりのものという訳だ。さすが、風洞実験を繰り返して、形状が決定されたというカウルだけのことはある。
ライディングポジションの変更も、GSR250Sのキャラクターを表す大きなポイントだ。GSR250のセパレートハンドルから、アップタイプのバーハンドルに変更。ハンドル位置は大きく上方かつ手前に移動させられている。その結果、ライダーの上体はほぼ直立することになった。ステップ位置に変更はないのだが、もともと後退した位置設定ではないので、ポジションに違和感はない。机に向かった状態で椅子に座っているような、実にリラックスした姿勢がとれる。気になる部分を上げるとするならば、ここまで上体が立っているとライダーの体重のほとんどがシートにかかることだ。GSR250シリーズのシートは、固めでそれほど厚みもない。長時間の走行では、尻が痛くなるのが早いだろう。また、上体が起きたことで、フロントタイヤへの荷重が抜けやすくなる。個人的には、もう少し低めのハンドル位置が好みだ。
だからといって、ハンドリングが悪化したということもない、むしろ軽快感は増している。カウル装着によってヘッドライトやメーターといった重量物がフレームマウントとなり、ステアリング周りのモーメントが軽減されたためだ。カウルの分だけ車重が増し、その増えた重量の全てがフロント周りに集中しているのだが、そのネガは感じられない。また、ハンドル位置が高くなっただけでなく、幅もわずかに広げられているので、押し歩きなど取り回し性も向上している。GSR250シリーズは、250ccクラスとしては車重が重めなので、体力に自信がない人には朗報だろう。
フラットで扱いやすいエンジン特性は誰にでも薦められるし、落ち着きのあるサスペンションも好感触。その上で、ネイキッドでは不可能なウインドプロテクション性能を得たGSR250S。ライディングポジションとハンドリングの変化は、ライダーの好みの範疇だろう。
GSR250Sはツーリングを意識したモデルということだが、むしろシティコミューターとしての可能性を強く感じる。移動時に高速道路を使うのならカウルの恩恵を受けられるし、リラックスしたポジションとステアリングを切りやすいハンドルは、街乗りで大きなアドバンテージとなる。自分は、素晴らしいハンドリングを持つGSR250を、ビギナーの初めての愛車として最適な1台だと考えている。GSR250Sも同じように薦められるのだが、更にベテランのセカンドバイクとしても推奨したい。この利便性の高さと取り回しの良さは、通勤や通学で街乗りするのにピッタリだ。日常のアシとして、これほど優秀なマシンは珍しい。ハーフカウルを得たGSR250Sは、更に高いレベルの万能性を手に入れたのだ。
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