ホンダ VFR800F
ホンダ VFR800F

ホンダ VFR800F – 独創のメカトロニクスを搭載した世界戦略車

掲載日:2014年08月07日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/本田技研工業株式会社  取材・文/友野 龍二  写真/MotoRIDE編集部

ホンダ VFR800Fの試乗インプレッション

ホンダ VFR800Fの画像

あえて主張はせずいつも傍らにいる
そんな心地よい関係から絆が芽生える

VFR800Fの前に立ち、車体を眺めながら受けた印象は、『CBR』のような躍動感でもなく、『CB』のような落ち着きでもない。そう、スタイリングコンセプトに掲げられた“大人を魅了するエレガントな佇まい”をまさに具現化しているのだ。フルカウル車の場合、グラフィックを用いてデザインの補填がなされる車種が多い中、単色でこれほどの気品を演出するとはデザイナー陣の気合いは相当なものであったに違いない。そんな想像をしながらイグニッションをオンにし、スターターボタンを押すと間髪入れずにエンジンは目を覚ます。文章では表現し難いV型4気筒が奏でる独特のサウンドは、弾けるでもなく籠もるでもなく、ジェントルでクリアなもの。暖機を行いながら車体を観察してみると、日本人の体形にピタリとマッチする車格であることと、両サイドから前面部へと移設されたラジエーターによって、驚くほどスリムであることに気付かされた。今回の試乗コースは市街地~高速~峠と、スポーツツアラーを試すには絶好のルート。さぁ、では走り出してみよう!

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強い握力を必要としないクラッチレバーを握り、ギアを1速に入れ、アクセルを僅かに開けながらクラッチレバーを離すとスルスルと加速してゆく。アイドリング回転のまま走り出せるような強大なトルクではないが、ストールを恐れるような弱々しいものではない。むしろ市街地走行ではアクセル開度が常に変化するため、交通の流れに乗って走る場面では過敏すぎない反応である方が好ましい。サスペンションは初期の動きが実にしなやかで、路面の段差や継ぎ目などで発生する不快な突き上げは皆無である。ブレーキはTOKICO製モノブロック対向ピストン4ポットラジアルマウントキャリパーと310mm径のダブルディスクが奢られており、絶対的な制動力に関しては何ら心配はない。逆に市街地での効きすぎを危惧したが、初期の制動が穏やかに立ち上がるため、指1本で車速を自在にコントロールできる。乗車姿勢はやや前傾が強く感じられるが、手首に負担が掛かったり、視野が狭くなる程ではなく、むしろライダーの体重をシート、ステップ、ハンドルの3ヶ所に分散させるため、長時間のライディングでも疲労が和らぐ角度と言えるだろう。

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高速道路へステージを移すと、快適性はさらに増す。シート直下からの2本出しマフラーを排気管長の短い右1本出しとすることで5kg、アルミダイキャスト製のシートレールを採用することで2kgもの軽量化を達成し、かつ低重心化が図られた車体は、まるで路面に吸い付くように走る。また、スリムなカウリングと小ぶりなスクリーンながらも、ウィンドプロテクション性は高く、走行風が直接当たるのは肩口とヘルメット上部のみ。その風も整流されているため、ヘルメットを不規則に揺さぶることもない。そしてクライマックスは峠道だ。スポーツ性を磨き上げたと言われるだけあって速い! その速さはスポーツマシンのカミソリのような切れ味ではないが、アベレージ速度が抜群に高いのだ! ブレーキングに関しては上で触れたとおり、強力無比なブレーキシステムにABSが組み合わされているため確実な制動を可能とする。ABSが作動した場合、フロントは一瞬のスキール音の後に小刻みなキックバックがレバーへと伝わり、リアはやや長い間隔でのキックバックがペダルへと伝わる。いずれも作動中であることをライダーに伝えてくれるのはありがたい。

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動力性能に関しても過不足なく、VFR800Fを構成する車体とキャラクターに実に良くマッチしている。低中回転域の出力向上を図るため、吸排気系とバルブタイミングが見直され、V4エンジン独特の鼓動感を伴いながらスムーズに上昇してゆく。そして何と言っても特徴的なのが、HYPER VTECだ。エンジン回転数に応じてバルブ数を切り替えるこのシステムは、低中回転域では2バルブとすることでトルクとレスポンスを向上させ、高速巡航時には低燃費を実現させる。高回転域では4バルブとすることで、V4ならではの力強いフィーリングと加速性能をもたらす。7,000rpm手前で2バルブから4バルブへ切り替わると、排気音は一段と甲高くなる。この音域の変化に魅了されるライダーも多いだろう。バルブ数の切り替え時に発生するトルク変動はごく僅かで、旋回中であっても車体に挙動を与えるほどのものではない。直線でフル加速を試みても、加速Gによってフロントフォークは伸びてもフロントタイヤが路面から離れることのない絶妙な力加減なのだ。万一の際はトラクションコントロール(TCS)が機能するため、安心してアクセルを開けられる。

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コーナリング特性はニュートラルで癖がない。あえてハンドリングのクイックさを抑えているようであり、しなやかながらも高い荷重が掛かった際に、奥で“ググッ”と踏ん張るサスペンションとの相性がすこぶる良い。安全装置の充実に加え、装備面ではグリップヒーターやETCまでも標準装備され、走行面では常に路面とコンタクトが取れる安心感と扱いやすい出力特性の“使い切れる感”が、スポーツツアラーVFR800Fの大きな魅力となっている。その昔、4輪のCMでキャッチコピーとして使われていた“This is 最高にちょうどいいHONDA”というフレーズがピタリと当てはまるほどバランスの良いマシンである。

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ホンダ VFR800Fの詳細写真は次ページにて

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