

掲載日:2014年01月23日 試乗インプレ・レビュー
取材・写真・文/田宮 徹
またがった瞬間から感じるのは、車体の軽さだ。シート高はスタイリングから想像していたよりも低めの設定で、さらに角を削ったり前側を絞ったりしていることから、足着き性は悪くない。身長167cm、体重63kgの筆者でも、シートの最前部に座れば、両足の裏がほとんど接地する。さらに、シート後方に座った乗車姿勢からそのままひょいと足を出しても、両足の裏が半分近く地面に着く。車体が軽く、支えていることが苦にならないことも加わって、足着きに関する不安は少ないモデルと言える。
ライディングポジションは、ややスポーティな方向。シートに対してハンドルの位置はそれほど低いわけではないが、やや遠めで幅広なことから、身長167cmの筆者だと若干の前傾姿勢となる。しかし、スパルタンすぎる設定ではなく、市街地での日常ユースでも十分に快適である。
気になる新作エンジンは、やや大きめの音を奏でながら、力強く加速する。と言っても、いかにも公道用シングルらしく、低回転域でボッとトルクを発揮するというよりは、回転の上昇によってパワーが増す、高回転型という印象が強い。3,000回転以下はちょっぴり苦手で、逆にそれ以上の回転域で本領を発揮する。メーターのレッドゾーンは9,500回転だが、エンジン側のレブリミットは約11,000回転に設定。オーバーレブ特性が良いため、ややノイジーであるが、シフトアップを迷うシーンで低いギアを使い続けたスポーツライディングも楽しい。
ちなみに、1速でレブリミットまで回転を上昇させたときの速度が約60km/hで、日本の道路事情にもよく合う設定。またトップギアで100km/h巡航すると、エンジンは6,000回転手前となり、こちらも250ccクラスということやレブリミットのことを考えれば、まずまず妥当と言える。
さて、元気さを演出したエンジンの一方で、車体もスポーティにまとめられている。ハンドリングは非常に軽く、市街地のカーブでは気持ち多めにハンドル舵角を感じるか感じないか程度のニュートラルさで、スムーズに向きを変えることができる。
ただし、より本気でスポーツライディングを楽しむなら、OEMで装着されているMRF社(インド)製タイヤを、信頼性が高いブランドのモノに交換することをお薦めする。ちょっとアグレッシブに郊外のコーナーを攻めた程度のバンク角では、グリップ不足で滑るなどの不具合はなかったが、ハードブレーキング時のグリップ力から考えても、無理は禁物である。このクラスのリプレイスタイヤは、比較的安く入手できる。保険として考えたり、タイヤを換装することでこの機種の新たな魅力を引き出せる可能性があることを思えば、早めのタイヤ交換は決して損ではないだろう。
そんなわけで、制動時もややタイヤのグリップ力が気になったが、とは言え純正の状態でも、前後の新型ブレーキキャリパーがもたらすストッピングパワーは、十分なレベルにある。フロントは、どちらかと言えばレバーを握りこんだ奥で効くタイプ、リアは初期制動力重視というイメージだ。
また、そもそも車体は1,346mmのショートホイールベースとあって、タイヤのグリップ力が気になるほど深くバイクを寝かせなくても、気持ちよく車体は旋回する。この短いホイールベースはUターン時にも効果を発揮するので、市街地をウロウロするのにも向く。ただし、想像以上にハンドル切れ角が少なめなので、その点だけは注意したい。ちなみに、極低速時の車体安定性は高く、Uターン時でもフラフラしづらい。スポーティなパッケージングだが、こういう部分も含めて、シティコミューターとしての能力も高い。
完全新設計でデビューした、韓国ヒョースンの次世代モデルは、粗削りな部分も多少あるが、39万9,000円という価格を考えれば十分に満足できる性能と評価できる。前述のように、タイヤなどにちょっとチューンの手を加えれば、よりスポーティに遊べるはずだし、逆に個性的なシティコミューターとしてガンガン使い倒すというのもありだろう。
いま日本で注目を集める250オンロードクラスに、新たな手強いライバルが加わった。
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