ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッション
ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッション

ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッション – 人気モデルにオートマチック仕様が登場

掲載日:2012年07月05日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  撮影/MOTOCOM  衣装協力/HYOD(ヒョウドウプロダクツ)

ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッションの試乗インプレッション

ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッションの画像

DCT のマジックで
楽に快適にスポーツできる

通常のミッションタイプの NC700X については最近レポートしたばかりなので、今回は DCT のインプレッションに注力したい。

まず、跨ってライディングポジションを確認した瞬間から、ちょっと戸惑う自分がいる。あるべき場所にあるものが無いのだ。そう、クラッチレバーやチェンジペダルが付いていない。これは DCT 仕様なのだから、と思っていても、指先やつま先がレバーやペダルを探して空を切ってしまうのには思わず失笑。気を取り直して、手元の操作から慎重にやり直してみる。

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イグニッションをオンにしたら、まず右手のスイッチを「N」にしてエンジン始動。続いてモードスイッチで「AT(オートマチック)」か「MT(マニュアル)」を選択する。そして、AT でのんびり走りたいときは「D(ドライブ)」を、ちょっとキビキビ走りたいときは「S(スポーツ)」モードを選んで発進すれば、あとはマシンが勝手に判断してシフトチェンジをしてくれる。MT ならそのままスタートして、左手にあるシフトスイッチを押せば任意でギアを選べる仕組み。この DCT 独特の操作に慣れるまでに、小1時間ほどがかかるかもしれないが、慣れてしまえば実に簡単でラクだ。

以前、VFR1200F の DCT 仕様にも乗ったことがあるが、今回採用されているのは第2世代の改良型ということもあり、シフトショックがより少なくなっている感じがする。有段式自動変速機という機構上、通常のバイクと同じように加速とともにギアチェンジしていくのだが、よく注意していないとそれが分からないほどスムーズなのだ。まるで電動モーターのように、スルスルと加速していく感覚が気持ちいい。

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まず「AT」の場合。「D」モードで走っていると、とても平和な時間が流れていく。スロットルを空けた分だけ穏やかに加速して、その速度に見合ったギアがあてがわれるだけ。速度を落とせば、同じようにギアも下がっていく。非常にラクなのだが、その一方でシフトチェンジのタイミングが遅く感じることもあって、燃費走行にはいいがちょっと眠い感じもある。これが「S」モードだとだいぶメリハリが効いていて、スロットルを急開するだけでキックダウンして、より強く加速できる。このあたりの感覚は、スポーツカーを含めていまやほとんどがオートマになった4輪に似ている。普通にワインディングを流す程度なら、「S」モードで十分だろう。ただ、それでも、やはりマニュアルミッションで育ったライダーにとっては物足りない感じは残る。特に高回転まで引っ張ってパワーバンドあたりでシフトアップするような走りや、ブレーキングしながら積極的にシフトダウンしてエンブレを効かせたい場合などには、「MT」を選択すべきだ。左手の親指でシフトアップ、人指し指でシフトダウン、とボタンを押すだけ。当然、電子制御だから、スロッルは開けたままでシフトアップできるし、試しに意地悪して立て続けにシフトダウンしても、きれいにエンブレも逃がしてくれる。まるで、レースなどで使われる、高精度なオートシフターとバックトルクリミッターが最初から組み込まれているような感覚だ。

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また「MT」は、低速になると自動的にシフトダウンしてくれる。信号待ちなどで、ついシフトダウンするのを忘れてしまっても、勝手にローギアでスタンバイしてくれるので、スタートで失敗してエンスト、などという失敗をしないで済む。特に素晴らしいのはUターンだ。多くのライダーにとって永遠の苦手種目とも言うべきUターンが、実に簡単にできるのだ。何故って、絶対にエンストしないから。よく考えると当たり前なのだが、デリケートに半クラを使ったり、スロットルを煽ったりする必要もない。ただし、前後連動のコンバインド ABS なので、リアブレーキを強くかけ過ぎるとフロントまで効いてしまうため、失速ゴケには注意したい。

ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッションの画像

さらに特筆すべきは「自動復帰機能」だ。「AT」モード中でもシフトボタンを作すれば、シフトアップ&ダウンが可能で、そのまま放っておいても数秒後には自動的に「AT」に戻っている。たとえばこんなときに便利だ。ワインディングを「S」モードで気持ち良く走っているときに、目の前にタイトコーナーが出現。減速しながら素早くコーナーにギアを合わせたいので、ここだけは手動で “カチカチ” とシフトダウンして、立ち上がりのシフトアップはマシンまかせでオーケー。従来タイプの DCT では、いちいち「AT」と「MT」の切り換えが必要だったが、新型ではこんな芸当もできてしまう。つまり、エキスパートライダー並みのシフトワークがビギナーでも可能になってしまうのだ。DCT にかかれば、スロットルを煽って回転数を下のギアにシンクロさせてシフトダウンしていく高度なテクニック、いわゆるブリッピングダウンなども必要ない。これは凄いことだ。自分でマシンを操ることこそライディングの醍醐味、という向きには価値観が合わないかもしれないし、操作フィールの好みもあるだろう。ただ、ユーザーの選択肢を広げ、スポーツライディングの敷居を下げることには少なからぬ貢献をしてくれるはず。そして何よりも、モーターサイクルの可能性を広げる1台だと思う。

ホンダ NC700X デュアル・クラッチ・トランスミッションの詳細写真は次ページにて

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