

掲載日:2008年07月09日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
パワーユニットはブレヴァV1100から受け継いだエボルツィオーネエンジンだが、さっとスパイス加えたようなパンチがある1200スポルトに対して、ノルジェ1200GTのそれはロングツーリングを意識した味付けとなっている。低速域では右手の些細な動きにいちいち反応することがなく、エンジンの粘りも想像したほどではない。もちろんこれは、ライダーの疲労を抑えるべくツアラーとして必然のチューニングが施された結果だ。むしろ、こうした特性であるからこそ、ロングツーリングを快適にこなせると言えよう。
ところが、乗り手の意識が自然と変化する速度域に達すると、ノルジェ1200GTはその本領を発揮するようになる。つまり、エンジンの回転がタウンスピード以上となると、それに呼応するように車体も高い運動性を発揮し始めるのである。右手の動きに対してエンジンがスポーティなレスポンスを見せるようになり、コーナーで車体を安定させるトラクションも遅れることなく呼び出すことができるようになる。車体もそうした走りに対応しているようで、前後のピッチングもいい塩梅で押さえ込まれている。
こうしたセッティングに気づけば、ノルジェ1200GTをワインディングで生き生きと走らせることができ、その実力を垣間見ることができる。特に、コーナーでの倒しこみが実にスムーズなのが印象的だ。これは縦置きクランクと程よく高い位置にある重心が関係しているのだろう。シリンダーヘッド周りの重さを活かしてパタンとマシンを寝かせ、ちょうど良いアングルまで倒れたらエンジンのトラクションで車体を安定させる。あとはグリグリとしたトルクを楽しみながらコーナー出口を目指せばよい。こうした走りが決まればノルジェ1200GTが並みのツアラーではないことが実感できる。前後の足回りもこのような走りに合わせてセッティングされているようで、フロントフォークの動きやリアサスペンションの反応も実に適切。高めの位置にセットされたハンドルバーとあいまって、ワインディングで自由自在にこの巨体を振り回すことが可能だ。このあたりの全体的なチューニングに関しては、縦置きVツインエンジンがもたらす運動性を知り尽くしたモトグッツィの非凡なセンスが感じられる部分だ。
やはり、ノルジェ1200GTは豪華で安楽なだけのツアラーではなく、優秀なスポーツツアラーだと考えるべきだろう。そして、その性能を理解するには乗ってみることが一番だ。モトグッツィ未経験の方は、エンジンの存在感が大きいゆえに、絶対的な安定感を期待するかもしれないが、実は縦置きVツインエンジンのモトグッツィはそれほど重心が低いわけではない。車体上部に装備品が多いノルジェ1200GTはなおさらだ。しかし、これをネガティブな要素とするのではなく、それを活かす走りが決まった時、他のバイクでは絶対に味わえない奥深いスポーツ性と充実感がある。これこそがノルジェ1200GT最大の魅力ではないだろうか。
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