

掲載日:2007年09月12日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
跨ってみると足つきは悪くはない。こういったスポーツバイクの場合、車高が高いため跨ったままの取り回しは少し重く感じるはずなのだが、XB12Rは非常に軽い。もう1つ印象的だったのはポジションのコンパクトさ。ステップ位置がかなり高い位置にあり、ハンドルもポジションが低いクリップオンハンドルなのだが、握った位置は体に近いところにある。イメージとしてはバイクの上で小学校のときによくやった“体操座り”をしている感じだ。乗り手にもマスの集中化を求めているようなポジションなのか。かなりコンパクトなポジションのため、走ると辛そうに思えたのだが、下半身でタンクをしっかりホールドすれば思ったほどは辛くない。ビューエルの他のモデルにはハンドルポジションがもっと高いモデルや、ステップ位置が低いモデルもあり、楽なポジションで乗れるラインナップもある。XB12Rはビューエルの中でも“ピュアスポーツ”モデルなので、乗り手がバイクに合わせるポジションでもいいのだろう。乗り手におもねってこない、このポジションがアメリカ人が作ったバイクらしくて好感が持てた。
エンジンをかけるとVツインエンジンが唸り始める。ハーレーと同じ45度Vツインのアイドリングが大人しいわけがない。大きく震えるエンジンからの鼓動はハンドル、シートから存分に伝わってくる。ひょっとしたらこの鼓動はハーレーよりもスゴイかもしれない。ハンドルを握ったままアイドリングをしばらく楽しんでみたが、エンジンに合わせ視界が上下する。エンジンの鼓動は頭の先にも伝わってくるのだ。これは面白いエンジンだ。初めて乗る人は「エンジンが壊れているの?」と思うかもしれないが、これが多くの人を魅了するVツインエンジンのバイブレーション。体だけではなく、心を揺さぶってくれるバイブレーションを感じさせてくれる。走りはじめると、エンジンのバイブレーションはスッと収まり、心地いい鼓動だけがシート下に残る。しかし、スロットルを捻った際のトルク感は凄まじい。軽い車体をハーレー譲りの図太いトルクが押し出すのだから当然なのだが…。スタート時の加速は水冷4発のマシンに劣っているとは思えないほどだ。体感的にはむしろ速く感じられるはず。
スムーズな加速が当然のスポーツバイクの世界で、ビューエルの"たが"が外れたようなこの加速は異質なものかもしれない。ただ、このエンジンフィーリングが多くの人を魅了する“味”なのだ。走りながらふと感じたのは「ドカティ乗りは気に入るだろうな」だった。私が初めてドカティに乗る前に持っていたドカティのイメージ“荒削りなスポーツバイク”にピッタリだ。「ツインエンジンをスポーツバイクに搭載したらどうなるか?」普通はそこから「もうちょっと乗りやすく」など牙をそぎ落とすものなのだが、ビューエルは牙はそのまま“味”として残しているのが面白い。他のスポーツバイクの100kmとビューエルの100kmでは圧倒的にビューエルの方が速く感じるのはそんな荒削りさにあるのだろう。荒削りと言っても「疲れる」という意味ではない。フロントの倒立フォークやリアサスの動きはしなやかで、シングルディスクながら制動力は抜群のブレーキに不安は感じない。エンジン以外の車体はピュアスポーツな構成ながら、エンジンの個性で荒っぽさを楽しませてくれるのがビューエルなのだ。
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