ビューエル Lightning XB12Scg
ビューエル Lightning XB12Scg

ビューエル Lightning XB12Scg – 操る楽しさを突き詰めた最上級ストリートファイター

掲載日:2009年01月08日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

現代ビューエル思想の
ストリート最楽モデル

ハーレーのエンジンを積んだスポーツバイク。ビューエルのイメージがそれだけだとしたら、もう少し深くそのマシンの構造的特徴と魅力を知っておく必要があるだろう。まずは、そのスタイルからも容易に想像できるのが、マスの集中化。マシンの中心にすべてを詰め込もうとするスタイリングこそ、ビューエルというメーカーが生み出すバイクの設計思想を端的に表している。また、ガソリンをフレーム内に、オイルをスイングアーム内にという設計も、マスの集中化と合わせ、低重心化を実現している独自思想のひとつだ。

今回紹介するXB12Scgは現行ラインナップの中でもストリートスポーツ色が濃いモデル。ホイールベースは短く、マシンの重心はより低く抑えられている。ビューエルには位置づけとして、もっとも尖ったモデル“ファイヤーボルト”と、ストリートをターゲットにした“ライトニング”があり、XB12Scgはライトニングシリーズ2台のうちで、よりスポーティなもの、ということになる。つまりストリートでの楽しさを、もっとも強く打ち出している最新ビューエル、と言っていいだろう。

ビューエル Lightning XB12Scg 特徴

操る楽しさを突き詰めた
最上級ストリートファイター

ビューエル Lightning XB12Scg 写真コンパクトさを追求した車体と、Vツインらしさを色濃く残したエンジンの組み合わせはビューエルの真骨頂。そのコンセプトを着実に進化させた最新モデルでは、見た目にも迫力のある高剛性フレームとサンダーストームエンジンを組み合わせている。エンジン懸架方式はユニプランナー方式と呼ばれ、不快な振動だけを取り除きつつ、鼓動感を残す味付けがなされたもの。ちなみにビューエルのエンジンは、ハーレーのスポーツスターのベースにになったものであるが、ビューエル独自の進化と熟成を重ねており、現在では「サンダーストームエンジン」という特別な呼称が与えられるほどに、ビューエルオリジナルの思想の上に設計されている。

全ラインナップの中でもっとも車高が低いモデルとなるのが、今回試乗したXB12Scg。低さが生む安定感とは対照的に、ホイールベースは短く抑えられ、クイック感を演出している。また、車高の低さは、サスペンションストロークのショート化によって実現されている。ピッチングの少ないダイレクトな乗り味が、XB12Scgの特徴と言ってもいい。1200ccのVツインを搭載するミニマムな車体は、数多くの独自構造が組み合わせられることで生まれたものだ。外観イメージとしては、デュアルヘッドライトとトランスルーセント外装が、ビューエル発想のストリートファイターを表現している。メカニズムをカウルの裏に秘め、空力を考慮してパフォーマンスに還元する昨今のスーパースポーツと違い、敢えて見せることで主張してくるメカニズム。ストリートファイターに必要なものが動力性能だけではないことを、ビューエルというメーカーはよく知っているようだ。

ストリートで求められる見た目のパフォーマンスに関しては、ビューエルは迫力あるスタイリングでそれを具現化している。ひと目見ただけでビューエルだとわかるそのスタイルは、すでに多くのライダーの深層心理にイメージとして刻まれているはず。変わらぬ設計思想をそのままに、進化していくことで得られた独自のスタイル。進化を続けても、思想が変わらなければ、スタイルも大きく変化することはないというわけだ。

アイドリングでは胃を刺激するほどの鼓動感。しかし回転を上げると振動は消え、パワーが湧き出る。回して楽しいエンジンでありながら、高いギヤで流しても急かされない低速トルク。味と性能の両立が感じられる希有なエンジン。

テイスト&パフォーマンス
空冷Vツインの究極型

アイドリングでは胃を刺激するほどの鼓動感。しかし回転を上げると振動は消え、パワーが湧き出る。回して楽しいエンジンでありながら、高いギヤで流しても急かされない低速トルク。味と性能の両立が感じられる希有なエンジン。

半透明のライトカウルの中には、アナログのスピードメーターとタコメーターがコンパクトに収まる。フューエルインフレーム構造のビューエルだが、給油キャップは一般的なバイクと同様の位置にある。

スピード&タコの二眼コックピット
給油位置はハンドルの手前に

半透明のライトカウルの中には、アナログのスピードメーターとタコメーターがコンパクトに収まる。フューエルインフレーム構造のビューエルだが、給油キャップは一般的なバイクと同様の位置にある。

シートをはずすと、バッテリーとECU、各種センサーなどの電装品が見える。このほか、リアサスペンションのリザーバータンクもここにあり、細かなサスセッティングはシートをはずして行う必要がある。

シート下にはメカニズムが
コンパクトに収まっている

シートをはずすと、バッテリーとECU、各種センサーなどの電装品が見える。このほか、リアサスペンションのリザーバータンクもここにあり、細かなサスセッティングはシートをはずして行う必要がある。

 

メンテナンス性に優れるのが、ベルトドライブシステムの利点。ブレーキペダル下にはローラー型のテンショナーが装備されている。ロングライフ&メンテフリーだが、ファイナルの変更はむつかしい構造だ。

メンテナンス性に優れる
ベルトドライブシステム

メンテナンス性に優れるのが、ベルトドライブシステムの利点。ブレーキペダル下にはローラー型のテンショナーが装備されている。ロングライフ&メンテフリーだが、ファイナルの変更はむつかしい構造だ。

 

ビューエル Lightning XB12Scg 試乗インプレッション

すべての操作が楽しくなる
ダイレクトなだけでないフィーリング

ビューエル Lightning XB12Scg 写真重心の低さと、大きくえぐられたシート形状のおかげで足着き性は申し分ないレベル。アップハンドルに両手を添え、ステップに足を乗せてみると、外観から受けるスパルタンなイメージとは裏腹に、ポジションは非常にやさしい。しかし、ふと我に返って、このバイクが1200ccであることを思い出すと、このポジションは驚異的にコンパクトだ。リッタークラスの他メーカーのマシンは比較対象にならない、といっても過言ではない。

エンジンをかけた瞬間に、そのコンパクトな車体は大きく震え出す。やはりコンパクトなポジションに裏切られ、このマシンがリッタークラスであることを思い出させてくれる鼓動感だ。走り出すと、その鼓動感だけは残したまま振動が消えていく。ラフにアクセルを開けたときの暴力的加速感は楽しいのひとこと。高度に制御されたインジェクションによる加速は、スムーズでありながら“暴力的”と表現したくなる荒々しさを残しているのだ。

ビューエル Lightning XB12Scg 写真そして、その加速感よりももっと楽しいのがコーナーリング。今回の試乗では、混雑した都心から少し郊外までしか出られなかったのだが、それでもコーナーリングの楽しさがいちばん印象に残った。キャスターの立った設計のビューエルが、コーナーリングの楽しさを追求したマシンであることは疑いなく、その狙い通り、ハンドリングの軽さがリッターマシンらしからぬ軽快感を生んでいる。

しかしそれよりも驚いたことがある。それは、混雑した都心の交差点や、歩行者の多い市街地での極低速走行で、想像以上の安定感があったこと。試乗前の勝手な想像では、立ちすぎたキャスター角が極低速で不安定感につながるのではないかと思っていた。イメージとして、荷重移動ではなくハンドルを切って曲がるような極低速のシチュエーションで感じた安定感の中に、ストリートをターゲットにしたビューエルの、繊細な思想も見えてきた。

ビューエル Lightning XB12Scg こんな方にオススメ

趣味は「バイク」ではなく
「ライディング」と口にできる人

そのコンパクトな車格は、あらゆるライダーを受け入れてくれる。バイクの選択に際して「シート高」に目がいく小柄なライダーも、XB12Scgなら安心して選択肢に入れていい。エンジンに関しても、インジェクションにより調教された荒々しさは、実は懐が深い。ビューエルというメーカーに対して、ライダーを選ぶ荒削りなイメージがあるのなら、それは少々度が過ぎているかもしれない。コンパクト&センターマスというわかりやすい理念のもと、ガンコなまでに作り込まれたマシンは、アクが強い。スタイリングについても同様だ。わかりやすい理念を貫いて作られたマシンは、やはりライダーにとってもわかりやすいマシンなのだ。

ビューエル Lightning XB12Scg 総合評価

もはやカテゴリーで
くくることができない乗り味

スポーツやネイキッド、クルーザーなどという、バイクのカテゴリー分けには、実は大した意味がない。個人的にはそう思っている。バイクはライダーが跨って初めて動き出すわけで、そのライダーにどのような意志があるかによって、カテゴリーは決まるのではないかだろうか。スーパースポーツをツアラーのように乗り倒すライダーもいれば、ハーレーでサーキットを攻めるライダーもいる。「どういう風に楽しむか」「どういう感じで乗るか」ということは、ライダーにしか決められないのだから。

ビューエルの「どう乗っても楽しい」フィーリングは、その考えをさらに深めてくれた。確かにその主眼が「スポーツ」にあることは間違いないが、それだけではない。攻める気になったときに楽しいだけではなく、ゆったり走りたいときでも、ただゆったりと走れるだけでなく、やはり「楽しい」のだ。カタログスペックに示される数字、アクセルを開けたときの加速感、バイクを倒し込んでいくときの感じ…、そしてそれらを超えた、バイク自体が持っている楽しさ。それらを感じたとき、もはやバイクのカテゴリー分けというものは、どうでもよくなってしまった。ビューエルXB12Scgというバイクは、それだけのパワーを持っている。

SPECIFICATIONS - BUELL Lightning XB12Scg

ビューエル Lightning XB12Scg 写真

価格(消費税込み) = 123万2,500円

重心を低く、ホイールベースを短く。ビューエルの独自思想を突き詰めたストリートスポーツファイター。

■エンジン = 空冷4ストローク 45度サンダーストームVツイン 1,202cc

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