掲載日:2010年06月21日 特集記事
記事提供/2010年1月24日発行 月刊ロードライダー 3月号
Report/和歌山利宏 Photo/徳永 茂
コンパクト感があって、ほどよい車格を感じさせるグラディウスだが、跨ると国内向け400という先入観から受けるお手軽っぽさはない。輸出用650とシート高も含め、車体は同じだから、当然と言えば当然である。しっかり乗りこなしてやるか。そんな気にさせられる存在感があるのだ。もっとも、Vツインらしく背が高めで、足着き性もとびきり良いというわけではないが、スリムで、扱いやすさに不満はない。
シフトタッチも良くギヤをローに入れ、ゆっくり発進していくと、Vツインらしいビート感が届く。アイドリングではスムーズなため、ややもするとVツインであることを忘れそうになっていたが、改めてそのことを強く印象付けられる。
しかも、400とは思えないぐらいに極低速域からトルクが出ていて、粘りがある。6速で1500rpm以下、30km/hからストレスなく加速していく。スムーズで扱いやすいし、街中では6速のままスロットル操作だけで、交通の流れに乗っていけそうだ。それでいてビート感があるから、排気量はこれで十分でないかとさえ思えてくる。
ただ、5~6000rpmには、少々トルクの中だるみ感もあって、6速だと80~100km/hの速度域できびきび走るには、ギヤダウンしたくなるかもしれない。
が、ひとたび6000rpm辺りを超えると、トルクが力強く立ち上がっていくのを実感できる。しかも、トルクピーク8500rpmにかけてのそのダッシュ感は、マルチにはないツインならではのものだし、これまでの400には期待できない小気味良さである。
ピークを超えてもトルクは頭打ち感がなく、回転は爽快に伸びていく。おそらく、輸出用の650にはない高回転フィーリングなのだろう。もちろん、全域で不快な振動はなく、心地良ささえある。
使い切れて、公道での物足りなさはなく、サーキットでも楽しめるだけのパワーを発揮してくれる。この55psという最高出力は、ベストの性能特性を追求した結果だと実感させられる。もっと高回転フィーリングを強調したほうがエキサイティングかもしれないが、これは誰にでも楽しめる実用性にも留意した優等生的な特性ということだ。
ハンドリングにもVツインならではの良さが感じられる。軽快、と言っても単に軽いのではなく、適度の手応えを保ちながら、リーンや方向転換に際して抵抗感がなく、スッと動いてくれる。扱いやすくても安心感があって、楽しくなってくるフィーリングだ。
車体から伝わってくる剛性感は、やはりトラスフレームのそれである。フレームの各メンバーが突っ張りあいながら、パキパキとしなるような感じがあって、しなやかさを節度良くダイレクトに伝えてくれる。同じ鉄パイプフレームでも一般的なダブルクレードルタイプとは全く違うわけだが、ドゥカティのようにアクが強いわけではない。
高速コーナーでこじるとしなりも生じるが、それはバイクの状態を教えてくれていると言っていいだろう。この車体のしなり感を利用して、スロットルを開けてうまくリヤに荷重を与えるほどに、ニュートラルに旋回性が高まっていくから、マニアックで操る面白さもある。
ただ、コーナー進入で加減速による姿勢変化を生かして、曲げていこうとすると、エンジンがスムーズすぎて、物足りなさを感じるときもある。650だと加減速にメリハリがあるから、そうした不満もないのだろうが……。ともあれ、これも多くのライダーにとって乗りやすいものとした結果なのであろう。
和歌山利宏:グラディウスの試乗会は浜松にあるスズキの竜洋テストコースで行われた。太平洋に面した防砂林をバックに記念撮影。嬉しいですね、バイクに乗れるのは。久々の国内試乗会に、心も弾みました
標準装備のABSも、違和感なく効果を発揮してくれる。突然のスリッピーな路面でキモを冷やすこともないと思われる。
グライディウス400は、誰にでも乗りやすく、それでいてお手軽バイクでもない。ビギナーにも薦められるが、身近なスポーツバイクとしてベテランライダーを裏切ることもない。また、直4バイクに飽きた人には、Vツインの鼓動が新鮮な喜びを経験させてくれるに違いない。やっぱりバイクって面白いな。そう思わせてくれるバイクである。
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クラス唯一のVツインスポーツとして国内デビューするグラディウスは、エレガント&スポーティをキーワードにスタイリングされ、スリムさと軽快なハンドリングを実現するトラスフレームが採用された。ABSを標準装備とし、オールマイティに楽しめるものとしている
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①③エンジンはSV400のDOHC4バルブ水冷90度Vツインをベースにキャブレターから燃料噴射化。φ39mm径のスロットルボディ(③)はデュアルバルブ式で、内蔵ISCでサブバルブを駆動する方式を採用。バルブリフトを拡大、バルブスプリングをGSX-R750のダブル品とし、リテーナーをアルミ製とする。また点火プラグにはイリジウム仕様を採用する
②トラスフレームはピボットレスタイプではないが、後部はエンジンを剛性部材として利用し、絶妙の剛性バランスを得ている。フレームの後部には樹脂製カバーが被せられる。また、国内の騒音規制に合致させるため、エンジン左側に樹脂製カバーが取り付けられる
④⑤マフラーはエンジン下にチャンバーを設ける2-1方式の右下出しで、エキパイは不等長。エキパイ部に酸素センサーを設けている
⑥フロントフォークはφ41mmの正立型で、プリロード調整機構を備える。キャリパーは片押し2ピストン式で、ディスク径はφ290mm。左側にABS用のプレート式ホイールスピードセンサーを設ける
⑦ECUと油圧制御部が一体化されたABSユニットは、コンパクトで 従来型よりも200g軽量である。リヤサスの後方に設置される
⑧リヤサスはボトムリンク式で、7段階プリロード調整式である。スイングアームはスチール製だ。リヤホイールサイズは5.00×17
⑨ヘッドライトは昨今流行の異形形状を持つマルチリフレクター
⑩メーターは、ギヤポジション表示を備え、12500rpmからレッドゾーンの回転計を中央に、多機能表示の液晶版を右側に備える
SPECIFICATION SUZUKI GLADIUS400 ABS | |
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●寸法・重量 | |
全長/全幅/全高 | 2,130mm / 760mm / 1,090mm |
ホイールベース | 1,455mm |
最低地上高 | 135mm |
シート高 | 785mm |
車両重量 | 206kg |
キャスター | 25° |
トレール | 106mm |
●エンジン性能 | |
種類 | 水・4スト90度V型2気筒 |
弁方式 | DOHC4バルブ |
内径×行程 | 72.0mm×49.0mm |
総排気量 | 399cm3 |
圧縮比 | 11.8:1 |
最高出力 | 41kW〔55PS〕/ 11,000rpm |
最大トルク | 41N・m〔4.1kg・m〕/ 8,500rpm |
燃料供給装置 | フューエルインジェクションシステム |
始動方式/点火方式 | セルフ式 / フルトランジスタ式 |
燃料タンク容量 | 14L |
●トランスミッション形式6速リターン | |
変速比1 速 | 2.461 |
2速 | 1.777 |
3速 | 1.380 |
4速 | 1.125 |
5速 | 0.961 |
6速 | 0.851 |
減速比(1次/2次) | 2.620/2.933 |
●サスペンション(前/後) | テレスコピック / スイングアーム |
●ブレーキ形式(前/後) | 油圧式ダブルディスク / 油圧式ディスク[ABS付] |
●タイヤサイズ(前/後) | 120/70ZR17M/C(58W) / 160/60ZR17M/C(69W) |
●メーカー希望小売価格¥798,000(消費税抜き¥760,000) |
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