掲載日:2021年03月19日 レトロバイク・グラフティ
イラスト・文/藤原かんいち
GPレースなどで活躍するモデルのテクノロジーを注いだレーサーレプリカが全盛の1988年に、これまでとはひと違うレプリカバイクが登場した。
エジプトで開催されたデザートレース「ファラオラリー」に、オフロード車ベースのボディにパワフルな2ストエンジンを積んだモデルTDR(Twin Dirt Racer)が出場した。オフでもオンでも道を選ばず、抜群のスピードで走り抜けて行くTDRは、高い走破性を発揮、クラス別優勝を果たした。このコンセプトを元に、市販化されたラリーレプリカモデルがTDR250で、その原付版がTDR50(80)だった。
RZ50系の水冷2スト、ピストンリードバルブの元気なエンジンを搭載。12インチキャストホイール、チューブレスタイヤ、前後ディスクブレーキ、アルミ大径アウターチューブのフロントフォーク、ド・カルボン式のリアサスペンション、前140ミリ/後130ミリのホイールトラベル量などなど、テクノロジーを詰め込んだ原付バイクだった。
サーキットも林道・ダートトラックもOKという、これまでにないジャンルのバイク。ヤマハはかなり力を入れていたが、当時としては独創的なルックスに世間がついていけなかったのか、あまり売れなかった。
元々バイクラリー文化のない日本、TDRで楽しめる場所も、その魅力がわかる人も少なかったのだろう。改めて見ると、その後ブームが来る「スーパーバイカーズ」や「スーパーモタード」、いまの「アドベンチャーモデル」に通じる部分もある。もしも違う時代に生まれていたら、もっと違う運命だったはず……そんなことを考えた。
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