
掲載日:2010年02月16日 オフロードライテク講座 › 林道ツーリング実践テクニック
軽いトレールバイク(オフ車)でも、凸凹や傾斜のきつい林道では扱いが困難になることも多々ある。ツーリング先で足下をすくわれないために、ユウタロウ流の実践的な障害物越えをイメージトレーニングしておこう。的確な状況判断と操作のキホンが出来ていれば、体格は関係ない。それが身長165cmのユウタロウ流『チビテク』なのだ。
今回のレクチャーは、リニューアルオープンしたばかりのクロスパーク勝沼で取材した。ここはエンデューロとモトクロスのエリアが隣接している便利なコース。管理人もエンデューロが好きな方なので、コースのところどころに一筋縄ではいかない難エリアもあっておもしろい。
テーマである下り斜面で最初に気をつけなければならないのはブレーキングだ。下っているときにブレーキをかけていると、フロント荷重になるためバランスを崩してしまうのだ。かと言って、オーバースピードなのにブレーキをかけないわけにもいかないので、まずは斜面の手前でしっかりと車速を落としておく必要がある。それに加えてユウタロウ師範はチビテクの実践談を語ってくれた。
「これぐらいなら、スタンディングでバランスを取っていればなにもしなくても下れます。ライダーが後ろに移動することで前のめりになることを防ぎつつ、バイクを先に下らせるんです。けっして恐怖心から腰が引けているんではありませんよ。シッティングだと、どうしても下っている途中で斜めになったシート上をお尻がズリズリと滑ってタンクの上まで来てしまう。こうなるとライダーの動きが制限されてしまい、バランスも取れません。下っているときはスタンディングで上半身を後ろにキープします。これが下り斜面の基本スタイルです。
スピードがゆっくりなら足を着きたくなるかもしれません。でも、体の小さいライダーが下り斜面で足を出すとバイクが傾いてしまいます。するとバランスを崩す原因になってしまうんです。同様にコワイからといって斜面でブレーキをかけると滑りやすい。これはリアブレーキにも言えます。よく下りきったところで大きくリアタイヤを滑らせてしまっているライダーを見ます。これは下っているときにリアブレーキを引きずっていて、斜面が終わったところでバイクの姿勢が変わっても同じように引きずり続けていると起こります。ブレーキはバランスを崩しやすいので、不安定な下り斜面は使い方が難しいんです」
下り斜面のブレーキングは、バイクがまっすぐになっていれば、意外とフロントブレーキが使えるもの。下りだとフロントタイヤに荷重が集まるため、地面に押しつけられたタイヤがしっかりグリップするのだ。しかし、今回のコースは斜面が急なのに加えて路面も荒れている。また区間も短いために同様のブレーキングテクが使えない。
今回の下りは区間が短く斜度も急だ。そのためフロントタイヤが下りはじめたら、フロントブレーキも使わない。そうしないと前のめりになりやすく、またフロントタイヤが斜面で滑ってしまうことにもなる。
「この下りは斜度が急なので、やはりスタンディングで前のめりになってしまうのを未然に防ぐ必要がありますね。ブレーキングも難度が高いので、あえて使わないほうが無難です」
今回の下り斜面は、チビテクの基本である「スタンディング」+「足を着かない」走り方が効果的と言えるだろう。足を着かない、着けないライダーにとっては、バイクの上でバランスを取ることが安全と速さに直結する。下りのスタンディングはまさにその練習にうってつけだ。
まずは恐怖心を感じない程度の斜面を見つけて「スタンディング」+「ステップから足を離さない」練習をしてみよう。
①下りの斜度に合わせて十分に腰を引いてアプローチ。ここですでにブレーキングを終えているようにする。②バイクがフロントローに傾くので、ウデに適度な力を入れて上半身を支える。と同時にステップ上で足を踏ん張って両足のくるぶしでバイクを挟み、ニーグリップならぬ「くるぶしグリップ」。③ここまで来たらバランスに意識を集中。最もフロントサスが縮み、リアサスが伸びた不安定な状態になる。理想ではこの逆になるよう、ライダーの体重移動でフロント抜重、リア荷重にする。④斜面の終わるあたりでバイクは不安定になるので、ブレーキングをしていたらブレーキレバー、ペダルをリリースする。
恐怖心がともなうシチュエーションだと、どうしてもライダーはタイヤのちょっと先に視線を固定してしまいがち。しかし、より前方も確認しておくことでラインの微調整や体勢を整えることも出来る。なるべく前方と手前を交互に素早く確認し続けることが大切だ。①まず傾斜を確認するために手前を見る。②フロントタイヤが下りはじめたら、今度は路面の荒れていない部分を選ぶために前方へ視線を移す。③頭の位置も斜面に入ったら、改めてタイヤの手前を確認する。
エンデューロではなるべくスピードを落としたくないので、ゆっくり下らず飛び出すようにジャンプしてしまうテクニックもある。しかし、モトクロスコースのように整地されていない場所がほとんどなので、着地点では転倒の可能性が高い。注意しよう。
場所によってはイラストのように、斜面のアプローチが鋭角だったり、下った先に段差があったりする。カメノコを防止するには、エンジンが引っかからないようにブレーキを使わずに勢いよく通過してしまう。段差はフロントサスが縮んで、そのリバウンドでバイクが暴れる。それを見越してライダーは腰を引き、ウデでも反動を吸収する。
1978年12月、静岡県生まれ。7歳のときに父親の影響でバイクに乗りはじめ、15歳でエンデューロレースに初出場。以後、大きなレースに参戦を重ねて、02年には西日本WONETシリーズを制した。また04年には東日本シリーズSERIES初代シリーズチャンピオンに輝く。ISDEチリ大会のトロフィーチーム(日本代表)に選ばれ日本チームは12位。個人ではクラス34位という成績を残した。
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