林道ツーリングに役立つ実践テクニック

【Vol.12】遅れをとらないためのスタンディング

掲載日:2010年01月19日 オフロードライテク講座林道ツーリング実践テクニック    

軽いトレールバイク(オフ車)でも、凸凹や傾斜のきつい林道では扱いが困難になることも多々ある。ツーリング先で足下をすくわれないために、ユウタロウ流の実践的な障害物越えをイメージトレーニングしておこう。的確な状況判断と操作のキホンが出来ていれば、体格は関係ない。それが身長165cmのユウタロウ流『チビテク』なのだ。

バイクとライダーが一体になって登り切るには ステップ荷重と前傾姿勢のスタンディング

今回のテーマは「急坂の頂上付近でバイクから落ちてしまう」という相談を受けてレクチャーすることとなった。そのライダーの話を聞くと、急坂でリア荷重をするためにシートの後端に跨っていたところ、ライダーは落車してバイクはめくれ上がりそうになって倒れたという。この悩みをユウタロウ師範に相談してみると

「バイクが坂を上っている動きに対して、ライダーが遅れてしまっているのが原因です。こんなシチュエーションではステップにしっかりと足を載せて荷重をかけつつ、前傾姿勢で上半身は前へ。すると体が遅れることなくバイクと一緒に上り切ることが出来ます」

撮影場所は助走区間が短く路面も荒れている。まず、安定した助走をするためのバランス取りから難しいシチュエーションだ。

助走が短いということは車速も十分に出ていないためバランスを崩しやすい。それでいて急な坂を上らなければならないため、ライダーのバランス感覚も問われる。短い助走でスピードを出すためには、アクセルを開ける瞬間にステップ荷重をかけるテクニックも使う。スタンディングをするということは、荷重をコントロールするということでもある。ライダーの動きは派手ではないため見た目にも表れにくいが、ステップに足を載せるだけでも荷重をかけるというテクニックを行っているのだ。

「路面が滑りやすいときは1速ではなく2速を選び、エンジンの回転数を高めにします。するとタイヤが滑りにくくトラクションが得られるんです。バイクが動き出したらすぐにステップに足を乗せて荷重をかけます。するとさらにトラクションしてアプローチは格段に安定します。路面のコンディションによってギアの選択も重要だといえます」

それでは実際の撮影現場でステップ荷重やスタンディングのやり方を紹介していこう。

シッティングで急坂にトライしたときの失敗例。上り斜面にいるライダーは、重力によって下に引き寄せられる=遅れてしまいがち。そのままアクセルを開けるとバイクだけ登って行ってしまう。これを防止するにはスタンディングによる「遅れない」テクが有効だ。

シッティングで急坂にトライしたときの失敗例。上り斜面にいるライダーは、重力によって下に引き寄せられる=遅れてしまいがち。そのままアクセルを開けるとバイクだけ登って行ってしまう。これを防止するにはスタンディングによる「遅れない」テクが有効だ。

足場の悪いシチュエーションでは、急坂にアプローチする際にバランスを崩してしまうこともある。ライダーがバランスを取れなければ、力強い加速はもちろん、スタンディングも出来ない。ライダーのバランス感覚も、立派なテクニックのひとつなのだ。

足場の悪いシチュエーションでは、急坂にアプローチする際にバランスを崩してしまうこともある。ライダーがバランスを取れなければ、力強い加速はもちろん、スタンディングも出来ない。ライダーのバランス感覚も、立派なテクニックのひとつなのだ。

シート後方に座るとトラクションする

①バランスを崩さずアプローチができているため、早くもスタンディングで前傾姿勢を取れている。②ラフなアクセルワークはリアタイヤのスリップにつながる。雨が降っているときや路面が濡れているときは2速もしくは3速と、高めのギア選択がスリップ防止になる。③急坂の中腹にさしかかり、斜度はさらにきつくなった。それに合わせてライダーの上半身もより前へ。ここで遅れをとるとバイクから振り落とされてしまう。④頂上にさしかかるとフロントタイヤが浮いている。しかしここで減速をすると上り切れないかもしれないのでアクセルは緩めない。

①バランスを崩さずアプローチができているため、早くもスタンディングで前傾姿勢を取れている。②ラフなアクセルワークはリアタイヤのスリップにつながる。雨が降っているときや路面が濡れているときは2速もしくは3速と、高めのギア選択がスリップ防止になる。③急坂の中腹にさしかかり、斜度はさらにきつくなった。それに合わせてライダーの上半身もより前へ。ここで遅れをとるとバイクから振り落とされてしまう。④頂上にさしかかるとフロントタイヤが浮いている。しかしここで減速をすると上り切れないかもしれないのでアクセルは緩めない。

頂上でアクセルを緩めずに跳び出すとカッコイイ。ただ、上った先の路面や周囲の状況がわからないと危険なのは言うまでもない。逆に頂上付近でアクセルを戻しすぎると失速して上り切れないので、最初は少しだけ勢い余るぐらいから微調整にトライしてみよう。

余裕があれば
フロントアップでクリアだ!

頂上でアクセルを緩めずに跳び出すとカッコイイ。ただ、上った先の路面や周囲の状況がわからないと危険なのは言うまでもない。逆に頂上付近でアクセルを戻しすぎると失速して上り切れないので、最初は少しだけ勢い余るぐらいから微調整にトライしてみよう。

シッティングの悪い例

①リアタイヤの荷重を得るためにシートの後端に座ってスタート。グイグイと上ってはいるがライダーはバランスを崩しつつある。②坂を上り出しても足を地面に着いていると荷重がかかりきらない。③頂上付近までバイクは上れている。しかしライダーが遅れていて必要以上にフロントタイヤが浮いてしまった。明らかにフロント荷重が足りていない。④バイクが立ち上がってライダーは落車寸前。これではバイクの下敷きになってケガをする危険も十分にある。

①リアタイヤの荷重を得るためにシートの後端に座ってスタート。グイグイと上ってはいるがライダーはバランスを崩しつつある。②坂を上り出しても足を地面に着いていると荷重がかかりきらない。③頂上付近までバイクは上れている。しかしライダーが遅れていて必要以上にフロントタイヤが浮いてしまった。明らかにフロント荷重が足りていない。④バイクが立ち上がってライダーは落車寸前。これではバイクの下敷きになってケガをする危険も十分にある。

安全に上れないと感じたら、いち早くバイクから離れよう。あと少しだから上れるかもしれない、と思うぐらいなら仕切り直してよりスマートに上れるように練習した方が安全だ。転倒によってバイクが壊れても、ライダーの安全確保のほうが重要。練習でケガをしたら元も子もないのだから。

失敗したら早めに
バイクから離れる!

安全に上れないと感じたら、いち早くバイクから離れよう。あと少しだから上れるかもしれない、と思うぐらいなら仕切り直してよりスマートに上れるように練習した方が安全だ。転倒によってバイクが壊れても、ライダーの安全確保のほうが重要。練習でケガをしたら元も子もないのだから。

両足をステップに載せた瞬間ヒザを沈め リアタイヤに荷重をかける

短い助走区間から急坂にアプローチしなければならないときは、発進するときからスタンディングしていると有利。両足で跨った瞬間に体全体を沈み込ませてバイクに荷重をかける。そうすることで滑りやすい路面でもタイヤがグリップしてアクセルをより開けられる。体が小さくて足を着きにくいときは、まず片足をステップに載せられる場所を探してから反対側の足を載せると荷重をかけやすい。

短い助走区間から急坂にアプローチしなければならないときは、発進するときからスタンディングしていると有利。両足で跨った瞬間に体全体を沈み込ませてバイクに荷重をかける。そうすることで滑りやすい路面でもタイヤがグリップしてアクセルをより開けられる。体が小さくて足を着きにくいときは、まず片足をステップに載せられる場所を探してから反対側の足を載せると荷重をかけやすい。

インストラクター

1978年12月、静岡県生まれ。7歳のときに父親の影響でバイクに乗りはじめ、15歳でエンデューロレースに初出場。以後、大きなレースに参戦を重ねて、02年には西日本WONETシリーズを制した。また04年には東日本シリーズSERIES初代シリーズチャンピオンに輝く。ISDEチリ大会のトロフィーチーム(日本代表)に選ばれ日本チームは12位。個人ではクラス34位という成績を残した。

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