
掲載日:2010年04月06日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
林道脇のちょっとした斜面を上るクラモチ。斜面に対して真っすぐアプローチし、難なくクリアしていった。
クラモチ「最近はこうした地形で遊ぶのが楽しいんですよ」
三橋「じゃあ、ちょっとアプローチの方向を変えてみようか」
と言った三橋さんは、斜面に対して斜めに進入していき、スルスルと上ってしまった。
三橋「じゃあ、クラモチ君やってみて」
ヒルクライムで気を良くしているクラモチは鼻息も荒くトライしていく。しかし、ヒルクライムでは余裕だったのに、斜面を斜めに上るキャンバー上りになった途端、何度トライしても上りきれなくなってしまった。
クラモチ「アプローチの方向が変わるだけで、こんなに上れなくなるとは思いませんでした。斜面に真っすぐアプローチする大切を再確認しましたけど、キャンバー上りも教えてください…」
と、青息吐息のクラモチ。
三橋「キャンバー上りがヒルクライムよりも難しいのは、まさに斜面を斜めに上っていくからなんだ。逆バンクを上っていくと言うとイメージし易いかな。タイヤの接地面が斜めになるから、グリップ力を十分に発揮させづらくなる。つねに不安定な状態だからトラクションもかけにくい。そんなときにアクセルを開けたらどうなると思う?」
クラモチ「なにもしなくても滑り易いのだから、アクセルをちょっと開けただけでもリアタイヤがスライドすると思います。あっ、そうか。斜面の途中でアクセルを開け足していたから、リアが流れてしまったのか。でも、アクセルを開けないと失速して上れない気がするんですよね」
三橋「だから、斜面に入る前の助走区間で、斜面を上りきれる分の勢いを作っておくんだよ。そして斜面ではアクセルを開け足さずにジッとガマンする。リアタイヤをトラクションさせるのは、ヒルクライムよりもシビアになるんだ。斜面に入ってから駆動力(トラクション)を得ようとすると、リアタイヤはすぐに滑る。アクセルを開け足すのは厳禁なんだ。斜面に突入したら、アクセルを少しずつ戻していくか、パーシャル(加速せず減速もしない状態)で進入スピードをキープしていく。このときに、外側(谷側)の足でステップを踏み込み、マシンが水平な地面と垂直になるようにしてやろう。外足荷重でマシンを直立させてやるわけだ。でも、この状態になったからといって、アクセルを開け足すとすぐにリアタイヤは滑るから注意。
斜面を上る基本は、斜面に対して真っすぐにアプローチすることだ。これをヒルクライムと呼び、G RIDEでもその方法を伝授してきた。しかし、クロスカントリー・ライディングではアプローチ区間がウッズやギャップといったシチュエーションになることもあり、斜面に対して真っすぐ進入出来ない場合もある。そんなときは斜面に対して斜めにアプローチすることになる。それが「キャンバー上り」だ。ちなみに、斜面と平行に走ることをキャンバー走行と言う。身につけておくと走れる場所が広がるテクニックなので、キャンバー走行は機会を改めて紹介しよう。
それから、もし上れるかどうか不安に感じたら、アクセルを開け足してバランスを崩す前に谷側へ下って体勢を整えてから再トライしよう。いつもよりかなり不安定な状態なので、早めに状況判断することが転倒を避けることになるんだ」
リアタイヤにしっかりとトラクションをかけながら上るヒルクライムとは違って、キャンバー上りはリアタイヤが滑らないように惰性(アプローチで作った勢い)を使うことがポイントとなる。それを知ったクラモチは、斜面の手前でしっかりと加速してアプローチしていく。そして何度かのトライを続け、ついにキャンバー上りもマスター出来た。アプローチではリアタイヤにしっかりとGをかけ、短い助走区間でも十分加速出来るようになったのも成功の要因だ。今までに習得したテクニックに加えて、路面に応じた走り方を身につけていこう!
三橋センセイのお手本
キャンバー上りの最大のポイントがここ。斜面の手前で、斜面を上り切る勢いを得るためにしっかりと加速しておく。
後ろから見ると…
アプローチではマシンを直立させ、リアタイヤにGをかけてしっかりと加速する。2速発進を覚えておくと、その後が楽になってくる。
ハンドルは真っすぐにしたまま、マシンも直立させた状態でアプローチする。リアタイヤが斜面にかかるまで、しっかりと加速。
リアタイヤが斜面にかかるまではしっかりと加速しておく。ハンドルは真っすぐ、体も左右対称にして、マシンを直立させてやろう。
リアタイヤが斜面にかかったら、アクセルはすぐに全閉かパーシャルにする。ここから先でアクセルを開け足すのは厳禁だ。
リアタイヤが斜面にかかると、マシンは山側に傾こうとする動きを見せる。そこで外足(谷側)のステップを踏み込み、倒れ込むのを防ぐ。
アプローチで作った勢いを使って、斜面をナナメに上っていく。何かしたくなるのをグッとこらえて、惰性で上っていくようにする。
アプローチの勢いを使って斜面を上っていく。マシンが山側に倒れ込もうとしたら、内足(山側)で斜面を蹴ってバランスをとるのもひとつの方法。
フロントタイヤが斜面を上り切ったらアクセルを徐々に戻していき、マシンの挙動が乱れないようにする。あと少しジッとガマン。
アクセルを戻してギクシャクしないためには2速で走っておくといい。ここで焦ってアクセルを開け足すと、そこまでの苦労が台無しになる。
最後は止まるようなゆっくりとしたスピードで斜面をクリア。アクセルを開け足さず、何もしなかったことが成功の秘訣となる。
止まるようなスピードになりつつもキャンバー上り成功。アプローチで作る勢いは、たくさんの斜面を上り、経験によって身につけるしかない。
バイクを直立させて斜面にアプローチしていく。クラモチはトルクを使って走りたいので1速をチョイスしている。
アプローチスピードが足りず、アクセルを開け足した。ハンドルも切れていて、不安定な匂いが漂いはじめている。
アクセルを開け足したことでリアタイヤがスリップ。ハンドルも切れ込み、バイクが倒れかけてもはや修正不能に…。
そしてアッという間に転倒。リアタイヤがむなしく空転している。クラモチよ、物事を斜めから見ることも必要だ!?
フロントタイヤが斜面を上り切る前に上り切れるかどうか不安になったら、すぐに上り切るのを諦めよう。ここでアクセルを開けても転倒するだけなので、マシンを谷側に向けて、そのまま斜面を下ってしまおう。そして体勢を整えて、再びアプローチからやり直す。しっかり加速して勢いを作ってやろう。
フロントタイヤは上り切ったものの、リアタイヤは上れそうにない場合は、内足を着いてアクセルを開けてしまおう。アクセルターンのようにリアタイヤをスライドさせて、斜面の上まで運んでしまうというわけだ。フロントタイヤが上り切っていることが前提条件。やると決めたら躊躇しないことが大切だ。
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
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