掲載日:2016年02月29日 トピックス
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一
取材協力/株式会社ホンダモーターサイクルジャパン
1,000ccクラスのアドベンチャーツアラーとは思えないオフロード性能が与えられた新型アフリカツイン。
2016年前半の最大の目玉とも言えるホンダ期待のニューモデル、新型アフリカツイン『CRF1000L Africa Twin』のプレス向け試乗会が、福島県の『モトスポーツランドしどき』で開催されました。
新型アフリカツインは先代モデルと同様、ツアラーとしての高速巡航性能とオフロードでの卓越した走破性の両方を兼ね備えたアドベンチャースポーツとして登場しました。開発には当時のことを知る熟練メンバーから、新時代のアフリカツインを作りたくて入社した若手も加わり、ホンダが24年ぶりにダカールラリーに復活した2013年よりプロジェクトがスタート。当然、日進月歩の現代のラリーマシンの技術も投入されているとのことです。
さて第一印象ですが、やはり大きいです。車格的には先代とほぼ同じで車重も240kg前後。パワーは92ps(国内仕様)とやや控えめな感じもしますが、それでも先代に比べれば約1.5倍の出力。風格としては堂々たるビッグアドベンチャーそのものです。ただ、走り出して感じたのは扱いやすさ。特にオフロードでのコントロール性は予想を遥かに上回るものでした。最初に乗ったDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様は自動変速してくれるのですが、新型アフリカツイン用にセッティングされた変速タイミングや3段階の「Sモード」、ダート専用にクラッチレスポンスを高めた「Gスイッチ」などが、シチュエーションによって面倒なクラッチ&シフト操作からライダーを解放してくれます。
さらに、3段階のトラクションコントロールやオフロード用ABSなど、必要なときに適度なスライドを許容つつマシンを前へ進め、まるで自分に代わってエキスパートライダーが巧く操ってくれている、と錯覚するほど、モトクロスコースでもスムースで安定した走行が出来てしまいます。ちなみに通常のマニュアル仕様にも試乗しましたが、正直なところ、DCTを体験した後では軽さ以外のメリットは感じられませんでした。それほど進化型DCTとオフロードのマッチングが優れていた、ということでしょう。
一般道ではツアラーとしての資質も確認出来ました。並列2気筒270度クランクならではの小気味良いパルス感に包まれながらのクルーズは心地良く、高速道路ではウインドプロテクション効果の高さを実感。オフロード仕込みのしなやかなサスペンションは、オンロードでは快適な乗り心地にも貢献しています。ハンドガードとグリップヒーターも、走行風が冷たい季節にはありがたい装備です。アウトバーンでも実地テストしたという加速性能も含め、スペック以上の速さを秘めていることも付け加えておきます。
林道では前述の電子デバイスをフルに使って、落ち葉や砂利、ワダチのあるぬかるみも、いとも簡単に走破し、タイトなワインディングではフロント21インチを感じさせない軽快感で走り抜けていきます。
試乗時間は限られていましたが、そこで感じたのは完成度の高さ。そして、従来のアドベンチャーツアラーとはやや異なる方向性の進化のカタチでした。ぜひ皆さんも、現代のアフリカツインを体感してみていただければと思います。
01大陸横断ツアラーとしての高速巡航性能も併せ持っている。特にウインドプロテクション性能が素晴らしい。
02開発コンセプトは「日常のコミューティングから広大な夢の大地を走破できる真の本格アドベンチャー」。カラーは3色で、写真は先代アフリカツインへのオマージュであるトリコロール。
03都会の風景にも自然に溶け込むデジタルシルバーメタリック。オフロード用タイヤを装着した姿もよく似合うのは血統故か。
04パニアケースやトップボックスなどの取り外し可能なラゲッジや、フォグランプ、フロントサイドパイプなど、アフリカツインの世界観を実現する豊富な純正アクセサリーを用意。
05車体サイズや重量は先代アフリカツインとほぼ同等ながら、前後アクスル間隔は短く、スイングアームは長く、最低地上高をより高く設定するなど、全体的にスポーティかつオフロード寄りのディメンションに進化。
06エンジンは新開発の水冷並列2気筒998ccで、次世代の本格アドベンチャーに相応しいスタイリングと徹底した軽量化、マスの集中化、それに低重心化が図られた。270度位相クランクによる不等間隔爆発により、パルス感と優れたトラクションを実現。
07DCT仕様は3段階のSモードを備えた新世代タイプで、新型アフリカツイン用に専用にセッティング。ホンダ・セレクタブルトルクコントロールや切り替え式ABS、登降坂制御、Gスイッチなど最新電子制御を備える。マニュアルミッション仕様もタイプ設定。
08オンロードでの高速性能とオフロードでの安定性を両立すべく、フロント21インチ(バイアス)&リア18インチ(ラジアル)を採用。φ45mm倒立フォークはクラストップレベルの230mmのストロークを誇るフルアジャスタブルタイプ。ブレーキはラジアルキャリパー&ダブルディスクだ。
09フロント同様リア側にも放熱性に優れるウェーブディスクを採用。オフロード走行時など前後ブレーキの使い分けが必要な場合には、ボタンひとつでリアのみABSを解除することが可能。
10燃料タンク容量は18リットルと意外とコンパクトで、実際にはフロントの大部分はエアクリーナーボックスとなっている。シート前部はスリムに絞り込まれ、足着き性やスタンディングポジションでのホールド性の向上に貢献。オフロードでのコントロール性を重視した設計だ。
11リアサスペンションは、220mmのアクスルストロークを備えるフルアジャスタブルタイプを採用。スプリング調整はツーリング時に便利な工具不要のダイヤル式イニシャル調整機構となっている。
12DCT仕様では、右手にキルスイッチを兼ねたセルボタン、Dモード/Sモードの切り替え、AT/MTの切り替え、ハザードなどのスイッチが集中。直観的に操作しやすいレイアウトになっている。グリップヒーターはオプション装備。
13左手にメーターセレクト&セット、ホーン、ウインカー、シフトアップ&ダウン(MTモード時に使用)、ディマー&パッシングなどのスイッチ類を配置。慣れればマニュアルミッション車並みのシフトチェンジも可能だ。
14シート高は先代アフリカツインと同じ870mmに設定されるが、新型ではシート脱着操作で簡単に20mm下げたローポジションに変更可能。さらに、オプション設定のローシートに交換すれば840/820mmまで下げることも出来る。
15メーターはラリーマシンの開発からフィードバックされた、左右への視線移動の少ない縦配列を基調としている。上部にメインとなる速度と回転数、下部にギアポジション、トラクションコントロールレベル、S/Dモード&Gスイッチ表示、外気温、水温、距離などを集中配置。左右にウインカーや各種インジケーターを表示。
16国内プレス試乗会が行われた「モトスポーツランドしどき」は本格的なモトクロスコースも備えたオフロード施設。今回のロケーション選びからも、新型アフリカツインに賭けるホンダの自信が伝わってくる。
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