レッドブル・エックスファイターズ 2013 第4戦 大阪 Part2

掲載日:2013年06月13日 フォトTOPICS    

文・写真/ダートライド編集部  取材協力/レッドブル・ジャパン

日本が世界に誇る史跡、大阪城をバックに、いよいよアジア発開催となったレッドブルエックスファイターズが開幕する。

時折降る雨をモノともしない日本人ファン
決勝は大きな番狂わせもあり見応えるものに

アジア初開催となったレッドブル・エックスファイターズ 2013 第4戦 大阪大会(2013年6月1日/土)。前回はその予選の様子をお届けしましたが、今回は待望の本戦の様子です。まず注目されたのがラウンド1(敗者復活戦)。前日の予選でトップ7に入れなかったライダーが、決勝に残された1枠を争う事となり、そこには日本人予選を勝ち抜いた鈴木 大助選手も含まれています。ランは60秒となり、回転系(バックフリップなど)が禁止となる、選手によっては厳しいレギュレーションとなりました。ここで勝ち抜いたライダーは予選1位のライダーと戦う事となり、貴重な1枠を獲得したのはデビッド・リナルド選手。クォーターファイナルの4戦目で、トーマス・パジェス選手とぶつかります。

そしていよいよヘッド トゥ ヘッド(1対1)の争いに移ります。ここでは、バリエーション、完成度、スタイル、コースの使い方、エナジーの5項目が採点の基準となり、この中で特にエナジーは、いかにオーディエンスから高い歓声を得られるか、がポイントで必然的に日本人ライダーが今回のラウンドは有利になりやすいです。この5項目のうち、先に3項目を獲得したライダーがその闘いの勝者となります。スタートしたクォーターファイナルのはじめの組みは、アダム・ジョーンズとダニー・トーレス選手。予選ジャッジは、ダニー・トーレス85.70ポイント、アダム・ジョーンズ84.70と、その差は僅差。どちらかが勝ってもおかしくないですが、結果はアダム・ジョーンズがエナジー、完成度、スタイル、バリエーションの4項目を獲得し、セミファイナルにコマを進めました。続くヒート2はロブ・アデルバーグとリーバイ・シャーウッド選手。ここでも大波乱。リーバイ・シャーウッドがバリエーションとエナジーの2つしか獲得できず、はやくも姿を消してしまいました。この時点で、2011年と12年のシリーズチャンピオンが敗退です。

ヒート3はハビエル・ビレガスと東野 貴行選手。ここで東野選手が魅せます。ビレガス選手に対し、5項目すべてを獲得するという、ストレート勝ちをキメたのです。これには観衆も狂喜です。優勝までは、あと3ヒートです。そしてクォーターファイナルのラスト、ヒート4はデビッド・リナルドとトーマス・パジェス選手。こちらはいい闘いになり、パジェス選手がエナジーとコース、バリエーションの3つを獲得し、次のラウンドにコマを進めました。

残るはセミファイナルとファイナルのみ。セミファイナルの一方、ヒート5はロブ・アデルバーグと東野 貴行選手。ジャッジは、エナジーとコースを東野選手が取りましたが、完成度とスタイルはアデルバーグ選手が取り、残りのバリエーションを取ったものが勝ちです。結果は、バリエーションを東野選手が取り、見事ファイナル進出です。ヒート6は、アダム・ジョーンズとトーマス・パジェス選手。ここではパジェス選手が勝ち、なんとファイナルは、大阪が地元の東野 貴行選手、故佐藤英吾選手を兄のように慕っていたトーマス・パジェス選手の一騎打ち。何かが引き合わさせた、とさえ思えるラストランとなりました。ここまでで互いに手の内はもはや見せているので、闘いはさらに困難なものになります。それぞれが与えられた75秒のランを終え、採点を待つ2人の間に緊張が。最初のバリエーションは東野選手が取ります。続いての完成度も東野選手が。あと1つで優勝決定ですが、ここで次の2つ、コース、エナジーをパジェス選手が取ります。東野選手選手以上に、日本人を奮い立たせられたという事です。そして、最後のスタイルの採点に、会場は固唾を飲む静けさです。このスタイルは、なんと東野選手が獲りました。大阪ラウンドでの優勝決定です。

こうして、観戦するだけだと2時間の饗宴ですがここまでの道のりを考えるととても長かった、アジア初開催のレッドブルエックスファイターズは大成功の内に全プログラムを終えました。編集部ではこの後も、時間を見て舞台裏の様子などもお届けしたいと思います。

フォトTOPICS(写真点数/47枚)

01スタンド席の脇には何やら戦国時代の武具をまとった漢たちが集結。

02対面するかたちで赤軍の武将や兵士たちも集まりだした。レッドブルエックスファイターズはお国柄を大切にする大会だけに、何かやるようだ。

03スタンド席から見上げる位置に陣取る、ジャッジたち。厳しい話しだが、彼らの裁量で勝負の行方が決まる。

042013年6月1日(土)は、生憎開催時刻の19時が近付くにつれ、雨が降り始め時折強まる空模様に。

05開会式は、まず国歌斉唱の後、本大会のために限りない尽力を果たし、しかし大会を前に無念にも亡くなった佐藤英吾選手への黙祷が行われた。

06ステージはいよいよエキシビションへ。この大会の様子は世界中に配信され、日本の伝統芸能を強くアピールする良い場所ともなった。

07先ほどの青軍と赤軍に加え、黒軍が出走ライダーの名前が入ったのぼりを高く掲げる。テーブルトップ上に鎮座するのは、佐藤英吾選手が駆ったFMXバイク。

08のぼりを持った黒軍の下に、各ライダーが集結。誰もがこの日の勝利を渇望する。

09最後に入場した鈴木 大助選手は、自身のバイクをメカニックに預けると、テーブルトップ上の英吾選手のバイクに跨り、キック一発でエンジンに火を入れた。英吾選手の御霊がFMXバイクに宿った瞬間だ。

10小雨降る中、いよいよ1枠をかけたラウンド1(敗者復活戦)が開始された。ここでは回転系が禁じられ、60秒のラン時間が与えられる。

11トッド・ポッター選手がランを終え、観客にアピール。降りが強まった雨とあわせ、まるで雨乞いをしているようにも見える。

12鈴木 大助選手もなんとか最後の1枠をかけ、精一杯のランで挑む。最近では、FMXは雨より風の影響を受けやすくなり、土砂降りにでもならなければ中止になる事は少なくなった。

13テーブルトップ上で豪快なアクセルドリフトをキメ、この日集まった1万1千人の観衆を楽しませる鈴木選手。

145人ともランを終え、テーブルトップ上に集結。採点結果は、残念ながら鈴木 大助選手、進出ならず。デビッド・リナルド選手がクォーターファイナルへコマを進めた。

15雨の中、事前予報で用意した雨合羽などを着てのスタンド席。傘は禁止で、またスタンディングも禁止されたがとても盛り上がった。

16クォーターファイナルがスタート。アダム・ジョーンズ選手がバックフリップ・クリフハンガーをメイク。

17ダニー・トーレス選手も、バックフリップ中にワンハンドグラブのようなトリックをメイク。今やFMXでバックフリップは完全にベーシックな技になった。

18クォーターファイナル最初の採点結果を見守る2人のライダー。ここで、まさかのダニー・トーレス選手が敗退という、番狂わせ。

19前戦、グレンヘレンで勝利したロブ・アデルバーグ選手がランをスタート。時間は75秒間になる。

20リーバイ・シャーウッド選手も負けてはいない。彼のトリックは本当に複雑怪奇で、名称が正直わからないものばかり。

21ここでの勝負はロブ・アデルバーグ選手に軍配。お互い実力者とはいえ、リーバイ・シャーウッド選手も、早くもここで敗れ去るという事態に。

22次のランが驚きだった。ハビエル・ビレガス選手 対 東野 貴行選手のカードは、なんと東野選手が圧勝。世界の“TAKA”には驚かされる事ばかりだ。

23立見席も観客でびっしり。最前列はすぐ前を選手が走り抜ける時もあり、2時間は苦にならなかっただろう。

24スタンドも、東野選手のパフォーマンスをはじめ次から次へと繰り出されるトリックに騒然。スタンディングしたい人は多かっただろう。

25クォーターファイナル最後の走者、トーマス・パジェス選手がスタート。彼はレッドブル・アスリートでもあり、ペイントされたヘルメットがその証。

26トーマス・パジェス選手がラン後に再び魅せてくれた。これが、故佐藤英吾選手が得意としていた相撲パフォーマンス。パジェス選手は英吾選手の事を本当に誰よりも想ってくれていた。

27いよいよセミファイナル。2組みが争い、残るのは2人のみ。ヒート5となったロブ・アデルバーグと東野 貴行選手のバトルは、見事、東野選手が勝利。ファイナルで優勝を争うところまで持ってきた。

28セミファイナルのもう1組み、ヒート6はアダム・ジョーンズとトーマス・パジェス選手。こちらはパジェス選手が勝ち、日本人/東野 貴行 対 日本好き/トーマス・パジェス選手という、運命的な決勝となった。

29この展開に観客は大喜びで拍手喝采。スタンド席も、おもわず立ち上がってしまうのは無理もない。そして、多くの人が英吾選手の力を感じ、空から見ている彼に感謝していた。

30東野 貴行選手が渾身のラストラン。得意のロックソリッド・フリップなど、バリエーションに飛んだトリックをメイク。パンツのバックプリントには、“EIGO SATO”の文字。

31トーマス・パジェス選手はラン終了後、前日のように再び日章旗を掲げファンに感謝と英吾選手の偉業をアピール。これで観客が盛り上がっても採点時間外なのだが、彼の純粋な想いが行動を起こさせている。

32観客の幾人かは今回の大会をきっかけに佐藤英吾選手を知ったのかもしれないが、想像以上に「誰それ?」という人はおらず、彼の大きさをよく知っている人が多かった。

33東野 貴行選手も加わり、2人でファンとレッドブル・ジャパンと、ここまで持ってきた英吾選手に感謝の気持ちを表した。今回の大会が日本のFMXシーンに与えた影響は計り知れない。

34そしてファイナル勝者は、なんと東野 貴行選手。これには、アメリカで(確か)好敵手としているアダム・ジョーンズ選手も祝福。ライバルだが最高のフレンドでもあるのだ。

35母国開催、母国ライダー優勝という最高の構図に誰もが惜しみない拍手。歓喜の渦は止む事がなかった。

36優勝とは別に、その大会で最も印象的なトリックを出したライダーに送られるベストムーブは、トーマス・パジェス選手が獲得。日本での受賞は嬉しいだろう。

37勝者トップ3にはカブトスタイルのトロフィーが送られた。レッドブルがお国柄を大事にしている、最高な一面だ。東野選手は、豊臣秀吉仕様だという。

38おまちかねのシャンパンファイト。3人とも本当に嬉しそうで、相当に盛り上がった。

39浴衣の女性たちに囲まれながら、あらためて喜びを噛み締める3人。アダム・ジョーンズ選手はシャンパンファイトで暴れすぎて、カブトの飾りが取れるハプニングも。

40トーマス・パジェス選手は嬉しさのあまり、英吾リミテッドジャージをなんと観客席にプレゼント。心の底から今大会を楽しめたようだ。

41すると、東野 貴行選手までグローブを投げ入れる。自分が知っている限り、彼はプロとしての領分を強く自覚していて、このようなパフォーマンスは正直意外だった。それほど、自国開催&優勝が嬉しかったのだろう。

42表彰式後にメディアセンターで行われた記者会見。まずテス・セウェル氏は、「かなり前から話し合っていた事がようやく実現出来た。これで英吾の夢が叶ったし、大阪自治体にも感謝したい」と、開催出来た喜びを素直に話してくれた。

433位のアダム・ジョーンズ選手へは、「表彰台は久しぶりだけどどうだい?」と振ると、「とても気分がいいよ。ここ最近、キャリアが長くなってもっと楽しもう、とメンタル面が変わったんだ」と語ってくれた。

44トーマス・パジェス選手は、セウェル「大阪来てどう思う?」パジェス「日本は初めてなんだ。キャリアの中で一番良かったよ。レッドブル・ジャパンにありがとうと言いたい。セレモニーは正直辛かった。英吾、本当にありがとう」と胸の内を明かしてくれた。

45東野選手は、セウェル「地元開催でどう?」東野「勝てる気はなかったけど、ラストトリックに挑戦出来たのが良かった」、セウェル「大阪城でやれたのはどう意義がある?」東野「みんながコツコツやって来た事が結び付いた。来年もあるといいし、英吾さんに感謝します」という言葉だった。

46ここにも持ってきた日章旗と記念撮影。セウェル氏は、東野選手の答えに「わたしも同じ気持ちだ。レッドブル・ジャパンありがとう。来年もやりたいよ」とまとめてくれた。佐藤英吾というひとりの男の気持ちが、この大会をかたちにしたのだ。

47ラストに、ワイルドカード的に本戦出場を果たした鈴木 大助選手が登場。「英吾選手に一番報告したいですね。全力で恩返ししたい、と走りましたから」、とやはり彼への想いを感じながらの今大会のランであった事を語ってくれた。

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