

掲載日:2013年09月13日 試乗インプレ・レビュー
インプレッション/辻 健二郎 まとめ/ダートライド編集部 写真/佐藤 春道
マイナーチェンジに留まったCRF450Rの試乗は、埼玉県にあるオフロードヴィレッジで実施された。この日は前日に集中して降った雨により一部ドロの深い部分があるものの、朝から強烈に照りつける夏の陽射しによりほぼセミドライとなり、走りにくいポイント(鋭角なレール、乾いた中に突然あるマディポイント)がところどころに残るコンディション。
一般走行枠だったのでホビーライダーもいる中で、30分×1セッションの枠でインプレッションを行った。ここからは国際A級ライダーの辻 健二郎選手にバトンタッチして、その実力に迫ってみたい。
「まず、マシンに跨り操作系(クラッチ、シフト、アクセル)の軽快感が印象良く、上がる気分でトラックへと出ました。走り始めてすぐに、アクセルの開け始め付近でのエンジンの反応が早い、という印象を強く受けました。この反応の良さはペースを選ばずに、初心者を想定したスピードでのコーナー&加速でのアクセルワーク、中級・上級それぞれを想定したスピードでも同様の、アクセルワークのレスポンスの良さを強く感じました。バッテリーレスPGM-FIは2014年モデルから『1サイクル2度噴射方式』が採用され、より理想的なドライバビリティーを追求するために、必要領域で燃料の噴射するタイミングを2回分割として吸気ポートへ供給されます。この新機構とシリンダーヘッドのポート形状の変更もあり、反応の良さの効能を得られているのでしょう。
ただ、この付きの良さが自分のライディングには若干ですが反応が早過ぎて、コーナー中のアクセルワークで車体の曲がって行こうとする慣性を崩してしまう程、反応してしまいます。どういう事かというと、コーナーリング中にアクセルを開け始めると反応が強く早いので、路面に吸い付いてるフロントタイヤを急激に引っ張りあげられるような姿勢変化を起こしてしまい、その動きとジャイロ効果がプラスして、傾いているマシンが起き上がってしまい、曲がろうとするモーションを阻害するのです。これは、コーナリングスピードに関係なく感じました。
車体(シャシー)のフィーリングは、リアショックの動きはじめが、硬さを感じる程ではありませんが少し突っ張った感じがあり、これがシートの高さを感じます。逆にフロントフォークが、動きはじめの部分が速く入り込んでいる様に感じ、車体バランスが前に下がり気味な印象を受けました。このような車体の姿勢は、コーナー進入ではマシンを積極的に傾けなくても曲がりやすい傾向にはたらくかもしれませんが、実際はパワーユニットとのマッチングでその特性が相殺されている印象を受けました。
ただこれは、似たような印象を持ったCRF250Rも同じですが、ホンダのCRFシリーズは燃料噴射量と点火時期を別売のPGM-FIセッティングツールでライダーの好みに合うよう変更が出来ます。この日は、ホンダスタッフの手により変更出来たので、少し走行し慣れた頃に、HRC推奨のセッティングデータ(HRCサイト でダウンロードできるもの)に書き換えてもらいました。開け口付近を抑えてもらい、本来パワーのあるであろう回転域を多用出来るようにして、そのパワーカーブが高回転にもつながり、伸びも使えるよう要望しました。書き換えてからは、サスの沈みこみ方とエンジンパワーの出方がマッチしてきて、マシンとの意思疎通が格段に向上しました。コーナーリングでアクセルを開けられる時間が延び、トラクションを随分稼げたように感じます。スピードを落として、それぞれのペースを想定して走った時でも、こちらのセッティングが走りやすく感じました。
この日、エンジンと車体のマッチした状態は確認出来ましたので、ここでわかったのは、セッティング次第で個人の乗りやすさを追求する事は充分可能だという点です。ただこれは、マシンを自分仕様に完璧に仕上げないと乗りにくく感じる人は、PGM-FIやサスペンションのセッティングを追い込んでいく必要があるという事です。それと、これとは別にパワーユニットが比較的高回転系で、セッティングに関係なく中速域でのトルク不足は終始感じたので、この点は開け口から開け切ったところまで、スムーズにパワーが付いてくるとなおよいと感じます。エンジンの力強いゾーンと車体が力強く踏ん張るゾーンがマッチングした、次のステップのモデルに期待したいと思います。」
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