KTM フリーライド 350
KTM フリーライド 350

KTM フリーライド 350 – 新しいオートバイの世界とは?

掲載日:2012年05月10日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/KTM ジャパン  取材・撮影・文/たけっぱち

KTM フリーライド 350の試乗インプレッション

KTM フリーライド 350の画像

地上すべてが遊びのフィールドになる
あらゆるライダーがフリーライドできる!

実際に間近で観るフリーライド350は、実にスリムでコンパクト、いかにも静的な軽さを演出しているスタイリングだ。100kg を下回る車重は、動的な軽快さも充分期待させるものだ。

895mmのシート高は、同社のモトクロッサー 『SX』 やエンデューロマシン 『EXC』 と比べると、圧倒的に低い。しかし、この数字を見るとどうしても躊躇してしまうライダーも多いと思う。“シートの位置が高く足着きの悪いマシン” と思ってしまうのだが、EXC シリーズ同様、非常によく動く WP サスペンションは跨がった瞬間の1Gでの沈み込みが大きく、国産のフルサイズマシンと大差ない足着き性が得られる。また、車体の細さとコンパクトな設計であることから見た目におとなしく、大柄なバイクにありがちな “変な威圧感” はまったく無い。逆に、ライダーを好意的に受け入れ、誘うような優しいポジションを作り出している。さらに、このシート高でも不安があるライダーのために、KTM がリリースしているパワーパーツシリーズとしてローシートが用意されていることも嬉しい配慮だ(シートの交換で1cm、サスペンションの交換で2cm下がる)。

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ハンドルはエンデューロやモトクロッサーよりも幅広な印象で、両端の絞り込みも少ないレンサル製を採用し、よりトライアル的ポジションとなる。ブレーキ及びクラッチレバーはショートタイプで、本格的トライアルマシンのように、人差し指と中指でレバーを握り、薬指と小指でグリップをしっかり握ることができる。さらに転倒時のレバー破損リスクも軽減している。ハンドル切れ角は倒立フォークを採用しながら、ヘッドパイプ部に繋がるメインチューブを

シート寄り後方に接合せることで、トライアルマシン的なステアリング切れ角を確保。左右とも67度と非常に自由度の高い設定となっているため、狭いセクションや獣道でも十分に小回りの効く取り回しのしやすい車体になっている。

ステップは幅広タイプが採用されている。これはスタンディング時のマシン操作性の良さと長時間ライディングでの疲労軽減に貢献するものだ。標準で装備されているこのステップは、ポジションを8mm程度後退させることができる可変式で、変更すれば後輪により強力なトラクションを掛けることも可能。使うフィールドやシチュエーションに応じて調整することで、より快適なライディングが可能だ。

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モトクロッサー用ユニットとしてデビューし、EXC シリーズにも採用されたエンジンをベースに、フリーライド350専用のセッティングやチューニングが施されたエンジンは、それまでの EXC 用エンジンとは一味も二味も違った仕上がりになっている。発進時から感じる低速からのトルクと粘り具合が絶妙で、クラッチ操作不要でゆっくりとしたトレッキングも難なくこなす。さらにこの状態からスロットルを開けると、フロントタイヤが浮き上がるほどのトルクが湧き出る。ピックアップの良いエンジンでもあるが、唐突に浮き上がるという印象ではなく、トルクでリアタイヤをしっかりグリップさせている印象が強い。

20度程度の登り勾配でも、勢いを付けなくてもエンジンの粘りと前後に標準装着されたダンロップ D803 のおかげで、トラクションのかかり具合を確認しながら登ることができる。トライアルマシン的な走りも可能なのだ。下り斜面もゆっくりした速度で路面を捉えながらコントロールすることができるため、特に下りの急斜面が苦手なライダーには最高の武器となること間違いない。この低速での粘りとトルク感は、2次減速比の設定にも大きく関係している。ミッションは基本的に EXC 用を流用しているが、2次減速比を 11:49 という、非常にローギアード化されているからだ。

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もともとのベースエンジンが EXC 仕様だったということもあり、高回転域でも元気がいい。トルクやパワーがピークに達する回転域でも、ローギアードのためか非常にコントロールしやすく、これが同じエンジンをベースにしているマシンなのかと疑ってしまう。しかし、エンデューロタイヤのように意識的にリアを流して走行することは、最初は難しかった。なぜなら、トラクションの良いサスペンションとグリップの強い D803 の組み合わせにより、適当にスロットルを開けてもすべて路面を掴んで加速力に換えてしまうからだ。このため、意識的にリアを抜重しなければスライドさせることはできなかった。エンジンパワーをすべて路面に伝えるという “トラクションの鬼” のようなマシンだ。それさえ理解できれば、コンパクトで軽量なおかげでマシンコントロールはすぐにできるようになる。

フリーライド350の大きな特徴のひとつがフレームだ。本来、非常にトルクの大きい EV マシン用に設計されたフレームは、レシプロエンジンを搭載した時に、どのようなレスポンスをするのか興味深かった。350のフレームは、クロモリ鋼パイプフレームと鋳造アルミニウム、さらに高剛性のプラスティックが組み合わされたハイブリッドだ。当然、オフロードで純粋に楽しく遊ぶのに充分以上のもので、ライダーの負担を減らす軽さとライダーへの優しさを生み出す、しなやかさと高剛性を併せ持っている。路面グリップの良さを感じることができるのは、このフレーム構成によるところも大きい。足まわりを中心としたそれぞれのパーツが高い性能を持ち、しっかりと仕事をしていることは分かるが、最終的にはフレームからの優しさがトータルでのマシンコントロールのし易さ、すなわち乗り易さに繋がっている。

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それは 350cc という排気量を持つエンジンのおかげでもあることもポイントだ。このあたりの中間排気量マシンでは、どうしても日本では 250cc という排気量を望む声が多く、こちらの方が優位に立ち気味だ。車検の有無や保険料、税金面のコストなどを考えれば確かにそうだ。しかしこのマシンの場合は、そのパワーとトルクが発揮できるエンジンだからからこそ成り立っているパッケージなのだ。250 / 350 / 500 の EXC-F エンジンがある中で、500 でもなく 250 でもない 350cc エンジンが採用されたのは、すべてのコンポーネントが 350cc というエンジンにより最適化され、マシンコンセプトを達成することができたからであろう。日本では、やや煩わしい車検付きの区分にはなるが、最初の登録から3年間の維持費を考えれば、コスト的にほとんど大差ないといっていいだろう。それよりも、このオートバイのバランス、乗り味、楽しさに 350cc というエンジンが必要不可欠であったことが実際に試乗するとわかる。

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今回の試乗会では公道での試乗も許されていたが、実際走ることは無かった。なぜなら設定されているコースやセクションが、このフリーライド350のポテンシャルを引き出して堪能するのに充分以上に楽しめるコースだったからだ。KTM でもアナウンスしているように、公道を走る事ができるマシンだが、そこをメインに走り続けるマシンではない、ということからも、公道試乗は最初から予定していなかったということもあるのだが。

KTM では、昨年から日本全国各地でさまざまな試乗会を行っている。今までなかなか体感できなかった KTM のマシンを試せるチャンスである。もちろん、オフロード系マシンの試乗会も行われるので、KTM の HP を随時チェックして会場に足を運んで欲しい。できれば、このフリーライド350は、我々が体験した楽しさをいろいろなライダーにも体験して頂きたいので、ぜひともこの伊豆モビリティパークでの試乗会を希望したい。

KTM フリーライド 350の詳細写真は次ページにて

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