掲載日:2012年03月07日 バイク購入ガイド 件のユーザーレビュー
文/田宮 徹
ハスクバーナ社は、スウェーデンで創業され、1903年に二輪事業を始動。86年にはイタリアのカジバ社に二輪の全権を譲渡。そして2007年、ドイツのBMW社に買収された。12年には、ヌーダ900/Rでビッグロードモデル市場への参入を開始したが、それ以前は基本的に、オフロードとスーパーモタードのブランドとして活躍してきた。そのハスクが手がけた、日本では10年夏に新登場した公道用ビッグモタードがSMS630だ。
排気量600ccの水冷単気筒DOHC4バルブエンジンは、76.4mmのストロークに対して100mmのボアが与えられた、高回転型のショートストロークタイプ。燃料供給はツインインジェクター方式のF.I.で、レースで培われたノウハウもふんだんに盛り込まれている。ただし、重視されているのは高回転域での出力ばかりではない。トルクフルかつフレキシブルなエンジン特性による、公道での扱いやすさも追求されている。一方で車体も、シングルクレードル形状のスチール製フレームに、オプションパーツのセンタースタンドを装着できるマウントを備えるなど、公道での利便性を視野に入れた設計。アルミ製リヤフレームの左右には、タンデム時の快適性を高めるグラブバーが装着され、さらにこれと換装できる別売のツーリングキャリア用アタッチメントまで用意されている。フロントフォークはマルゾッキ製で、フルアジャスタブル式のリヤモノショックはザックス製。もちろん前後ホイールは17インチ径で、ブレンボ製のブレーキキャリパーを備える。
これまでの経歴から、とにかくレーシーというイメージが先行しがちなハスクだが、近年はこれまで以上にストリートシーンへと目を向けている。このSMS630も、そんな新世代ハスクの1台。ライダーがその気になれば、これまでのハスクファンを退屈させない強烈なスポーツ性を発揮する一方で、以前のハスクと比べれば公道での快適性や気軽さも与えられている。万人を受け入れるほど優しさにあふれた出で立ちではないが、中上級者が乗ればきっと新たな楽しさが広がるビッグモタードである。