掲載日:2010年07月07日 特集記事 › 小林直樹のテイスティング ~ヤマハXT250X~
2010年3月6日発行 月刊ガルル No.288より記事提供
テストライド/小林直樹 写真/長谷川徹 まとめ/小川浩康
進行方向に顔を向け、体を入れるようにするだけで、スッとマシンが動いてくれる。その動きがクイックすぎないから、乗っていて不安を感じない。それがライダーに負担をかけず、乗りやすさになっている
マシンコントロールのしやすさで、ライダーがXT250Xのポテンシャルを引き出してやる。 | アクセル開度ではなくボディアクションを多くする。高く上げるのではなく、必要な高さを確実に上げれば、丸太を越えていくことも可能だ |
小径ホイールにロードタイヤなので当然のマシン挙動だけど、ダートではフロントが流れるのが気になる。でも、その挙動がぺースを抑えてくれて、マシンの軽さ、足着き性のよさ、ピーキーさのないエンジンがバランスし、林道でも怖さを感じないんだ。だからスピードさえ抑えていれば、林道の本線は通過できる。斜度がきつくなければ、マシンを直立させて足を着いて進んでいくことでマディ路面も通過していける。フラットな林道本線なら、意外に走るというイメージを受けるだろう。
ただ、先の路面状況が分からない枝道に入るのは難しい。サスのストロークが少ないから荷重をかけにくく、タイヤグリップを増やせない。だからタイヤがスリップし、脱出できなくなってしまう。ガレ場もストロークの短さで、苦手なセクションとなってしまう。Uターンもフロントが流れやすいから注意が必要だ。
フラットダートでは、横方向のアクションがやりやすい。エンジンパワーがタイヤグリップより上なので、リヤスライドさせやすいんだ。そのパワーはピーキーすぎず、かと言って足りないわけではないから、すごく扱いやすい。そして、足着き性がよくて軽いから、早めにボディアクションできる余裕が生まれる。だからマシン挙動に備えた姿勢を作っておくことができる。つまり、ハイサイドになりにくいんだ。
その反面、縦方向のアクションはやりにくい。サスを縮めにくいからタイヤグリップが足りなくなる。アクセルを開けてもスリップするだけだから、ボディアクションも思いきりする必要があり、クラッチミートのタイミングもシビアになる。ピンポイントのコントロールが絶対条件になるから、エキスパート向けになってしまうんだ。
カタログスペックではパワーに物足りなさを感じるかもしれない。でも、ちょっと足りないと感じるくらいのほうが、パワーが出すぎてもコントロールできるし、少ないと感じた時はアクセルを開け足していくこともできる。ハイパワーマシンは、マシンを押さえ込むことで体力を消耗してしまうが、XT250Xはマシン挙動を予想しやすいから、体力を温存できる。それが安心感になるから、もう少し頑張ってみようという気持ちにもさせてくれる。余裕を持って扱えるマシンに乗り、いろいろな路面を走ることで、ライダーが突き詰めていきたい遊び方も見えてくる。そうした意味では、オールラウンドなマシンになっているんだ。
IMPRESSIVE POINT セロー、トリッカーと同一のエンジンは、オンロードタイヤと組み合わさっても元気のいい走りを実現してくれた。気温、標高に左右されず、つねに一定のパワーデリバリーを実現しているのでマシン挙動を予想しやすい。だからボディアクション量を調整しやすいんだ。熱ダレもしないし、インジェクションの完成度はかなり高いと言えるね。それから、LEDのテールライトは視認性のよさがいい。ビギナーにやさしいマシン=モッサリしたデザインということがありがちだけど、そうならずに末端までこだわってデザインされている感じがあるのがいい。気になった点は、ステップのラバー。オンロードでは振動を吸収して疲労を軽減してくれるのだけど、ダートではすべってしまう。ただ、ダートメインに使う人は少ないから、強いて言えばという感じだね。 |
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![]() | XT250Xはこう味わえ 車体が軽く、トルクがあり、重心バランスがいい。だから高めのギヤで流しても、頻繁にシフトチェンジしてアグレッシブに走ってもワインディングを楽しめる。マシンを操る楽しさはハイパワーマシン以上だと思う。ハイパワーマシンを全開にできるなんて、高速道路くらいしかないからね。フラットな乗り心地でちょっとしたダートも通過できるし、ツーリングバイクとしても乗りやすい。回り道になるとしても、わざわざワインディングに寄り道していく。そんな使い方をすると、乗りこなす楽しさを存分に味わえる。カタログスペックだけで購入候補から外すのはもったいないね。 |
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